総選挙が終わった。
今回の総選挙の是非はともかく,今回ほど,マーケティング理論(の一部)が実証された選挙は無かったのではないか。
まず,自民党は,「郵政民営化」に絞った取り組みをした。これについては賛否両論があるが,総花的に話題を提供するよりも,一本に絞ったことが「わかりやすさ」と「強力なメッセージ性」を生んだことは間違いない。すなわち,フォーカス&ディープが出来ていたということだ。
では,フォーカス&ディープの対象はどこか。それは,都市部を中心とした無党派層に他ならない。(組織的な支持基盤はほっておいてもついてくるのだから)
つまり,自民党と民主党は同じ「ターゲット」を狙ったのである。そして,民主党は敗退した。なぜか。それは,ポジショニング意識であろう。
多くの国民にとって,民主党は,もともと旧態依然として改革に消極的な自民党に対するアンチテーゼ的な位置づけにあったはずだ。それが,都市部を中心とした無党派層を獲得していた理由であったと考えてよいだろう。
その意味で,改革のイメージを下げてしまうことは,戦略的に絶対に避けるべきであった。にも関わらず,郵政民営化法案に野党として一方的な反対をした。背景にはいろいろ理由はあったであろうが,結果,ターゲットにおいて「改革推進」というポジショニングから外され,(例え,それが詭弁であったとしても)郵政民営化を唱えた自民党にリプレースされてしまった。自らがターゲットから,どう見られているのかを明確に意識していれば,もっと違う選択があったろう。

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