オーランドの情報が入って、忘れてしまう前に、ラスベガスの総括的な事を書いておこうと思います。
まず。UNLV。
ラスベガスの特性を活かした大学でした。
ホテル経営とツーリズム。そしてF&B。
今回の主な対象となる「ツーリズム」は、LVCVAと同様に、コンベンションやスポーツといった関係をどのように呼び込み、運営していくのかということが主体。つまりは、MICEですね。話をしていて感じた、というか納得したのは、米国でのツーリズムには、文化とか歴史といったものの要素は乏しいこと。(当然といえば当然)
主たる学問領域は「マーケティング」
ただ、ここでもファンディングをふくめた展開。また、ブランディングという点もかなり意識がされていた。つまりは、地域が持っている資源(コンベンション施設やホテル、飲食施設など)をふまえ、顧客に対して地域のイメージづくりを行いながら、MICEの導入を図っていく。それに関連する各種の知識や経験(インターンシップなど)を積みながら、総合的に組み立てる(スタティクス)能力を養っていく。というのが基本となろう。
学部であることもあり、その範囲は幅広い。なお、内容については産業側との交流会などを通じて、こまかく調整を図っているとのこと。
また、マスター以上は実践的と言うよりは、アカデミック、理論が主になるように感じた。
この辺が、フロリダ州立とどう違うのか。また、同じなのかが興味深い。
次にホテル。バリーズとMGMグランドに話を聞いた。
バリーズでは、転職したばかりというインターナショナルセールスマネージャー。彼女からは、ともかく米国的な「個人で経験とスキルを積んで、仕事を選んで、バリバリやっていく」という気概を感じた。その彼女の言葉からは「能力育成」は、自身が経験の中で培っていくものであるという意識が読み取れた。同様の発言は、LVCVAでも出ており、いわゆる「教育機関」への意識はさほど高くない。
ただ、これは、マネージャーといえども、個人的な競争社会において、自身のアイデンティティが「経験」と「実績」によってつくられており、他者の「育成」「教育」ということに意識が低い(避けたい)ことが背景にあるのかもしれない。
いずれにしても、MBAのような制度が、米国であっても、既存の現場レベルにおいて(大学側が考えているほど)高い認識とはなっていないことがうかがえる。
これに対し、MGMグランドは「MGMグランドユニバーシティ」という社員向けの教育機関に対するヒアリングであったため、少々、趣が異なっていた。
MGMは、急拡大を図っており、かつ、日本と同様にベビーブーマーが退職期にかかっているため、組織として人材の育成は重要な要素となっている。このユニバーシティは、まさにそうした人材育成を目的とした組織であり、多様な展開を行っている。
その中で、興味深かったのは、スーパーバイザー、マネージャー、エグゼクティブを育てていくプログラムである。
米国の場合、年功序列的な部分が弱いため、いわゆるフロントラインで働いて勤続年数を積んでも、管理者(スーパーバイザーとかマネージャーとか)になるわけでなく、管理者は管理者として違う入り口になっている。(公務員のキャリア制度みたいな感じ)
これに対し、MGMでは、このユニバーシティにて、フロントラインの従業員の中から、意欲と能力をある者を選抜し、管理系(スーパーバイザー、マネージャー)へと育成するプログラム(REACH)を開発した。6ヶ月にわたる(内容は個人によって異なるため標準形は無いとのこと)研修を受け、優秀者を管理系へと抜擢する。つまり、階層を突き抜けさせることになる。
もう一つは、大卒者をいきなりマネージャーに抜擢するプログラム(MAP)。これは、大卒者から優秀者を選抜し、6ヶ月の研修の後、いきなりマネージャーとしてしまうプログラム。
最後に、マネージャーをディレクターやエグゼクティブに抜擢するためのプログラム(Leadership Institute)。これは、会長自らビジョンを語るなどして、グローバルな視点を養い、ディレクターやエグゼクティブへと育てていくもの。これも期間は6ヶ月。
これら3つのプログラムの存在は、人材をヘッドハンティングなどに頼るのではなく、自らで、効率的&効果的に育てていかないと事業の維持・成長が難しくなっていると企業側が考えていることが伺える。
個人個人で内容が異なる。ということで、具体的な内容は示してもらえなかったが、基本的には多様な部署を巡り、その場、その場でメンタープログラムにて実践的な経験を積み、得意分野をのばし、不得意分野を補填し。ということを行っていくようだ。つまり、主体は効果的なOJTではあるが、各分野別に座学も用意されており、その中で基礎知識、理論などを習得していくことになる。
以上を通じて感じたのは、
・人材育成のニーズはある。特に組織レベルにおいては。
・ただ、現状では「経験」が最大の価値となっている。
・優秀な人材に対し、いかに効率的・効果的な「経験」をつませて促成栽培するかがポイント
といったところである。
いずれにしても、日本と同様に「経験」が大きなウェイトを占めている現状において、「高度な経営人材育成をおこなう教育機関」というのは、あまり意味は無い。
日本での適用でも同様のことは指摘できよう。
専門職大学院。という意識を持っていたが、例え、効果的な人材育成が出来たとしても現場ではなかなか受け入れてもらえない(能力を理解してもらえない)だろう。
このことをふまえれば、スタッフレベルではなく、まずは、現場のマネージャー以上の人たちに対し、特定能力分野に対するピンポイントでの育成プログラムを提供し、彼らに「効果的な人材育成」の重要性、効果を実感してもらうことが第一歩となるのではないか。そうやって人材育成に対する意識(つまりは、経験を補える、凌駕できる「理論」があること)を、経営者(管理者)自身が変えていって、その上で、スタッフレベル(スタッフ→マネージャ、MGMのMAPに相当)へと対象を広げていく。というステップが良いのかもしれない。

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「ラスベガス ヒアリングの感想メモ」に1件のコメントがあります

  1. >優秀な人材に対し、いかに効率的・効果的な「経験」をつませて促成栽培するかがポイント
    このMGMのプログラム理念に納得。
    今後日本で「高度な経営人材を育成する教育機関」をつくるとすれば、そこは、「高度な経営人材を育成する場所」ではなく、「現場で効率的・効果的に経験を積ませる(or積む)方法を教えてくれる」場所、をめざしてもらいたい。
    やはり最重要な教育の場は、現場、だと思う。

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