Discussion of Destination Branding.

オーランド55日目 〜WDWの交通システム

山手線の内側の1.5倍という大きさを有するWDWは、4つのテーマパーク、2つのウォーターパークの他、多数のホテル、物販飲食施設が立地している。
これだけの敷地面積と、分散配置された施設の立地を考えると、まず、疑問となるのは、施設間の移動手段ではないだろうか。
実際、日本の情報誌をみても、移動については「バスやモノレールなど多様なものがあります」とは紹介されていても、例えば、ホテルとマジックキングダムの間の交通はどうなっているのか、帰りにダウンタウンディズニーに寄れるのかなどについては、紹介がほとんどされていない。
また、全体マップと称する地図はあるものの、非常にデフォルメされていて、地図としては全く役に立たない。現在では、グーグルマップなどを使えば、現地の地図は参照できるが、前述のように、山手線の内側1.5倍の敷地面積では、あまりにひろすぎて地図で把握することは困難だし、そもそも、敷地内の交通がどうなっているのかは、これでは解らない。
私の推測だが、おそらく、ディズニーは意図的に相互の位置関係が解るような地図類を発行していない。そして、敷地内の交通情報も外部公開していない。
その理由は、「知らせる必要がない」ということだろう。
私は敷地内のホテルに泊まったことは無いが、こちらで発刊されている非公式ガイドに寄れば、ホテルゲストは無料で敷地内を縦横無尽に走っているバスに乗ることが出来る。また、(事故を起こした)モノレール、船など、その他の交通機関が網の目のようにホテル、パーク、その他施設を網羅しており、ホテルゲストは、行き先が表示されている乗り物に乗れば、それが、どちらの方向にあるかといった地理的な情報を知る必要も無く、移動が可能なようだ。
バス乗り場などは、自家用車の駐車場などよりも便利な場所に設けられており、ドアツードア感覚となっている。
実際、非公式ガイド(米国人向け)では、「飛行機で来るなら、レンタカーは無用の長物」と断言している。
一見、現地の詳細な交通情報を公開した方が親切なような気がするが、こうした情報を、逆に、表に出したら、おそらくは、かなり分厚い時刻表が必要となり、むしろ、「わかりにくさ」が増大してしまうだろう。
ホテルを出たら、行きたい行き先のバスに乗れば良いだけであれば、そうした混乱をあえて招く必要は無い。
情報で解決するのではなく、オペレーションで解決するというのは一つの手段といえよう。
また、敢えて情報を隠すことによって、夢が広がるという利点もある。ディズニーはパークの造作にパース技法を使うなどして、空間の認識にダイナミックさを持たせていることが広く知られている。ここにあるのは、錯覚をうまく利用し、夢を広げるという取り組みである。域内交通にしても、敢えて全体象を見せない方が、WDWの空間をより大きなモノと「錯覚」させることになるのではないだろうか。
実際、私は、外部から車でアクセスするが、だんだん、道が解るようになってくるにつれて、WDWが小さく感じられるようになってきている。見えすぎる、解りすぎるというのも、痛し痒しの部分があるのだ。
同様の事例で、石垣島のクラブメッドでは、送迎バスは、入り口からホテルへの最短ルートを通らず、あえて遠回りをする。そして、わざわざ、ホテルと海が同時に俯瞰できるポイントまで行って、一気に、眺望を開かせるということをしている。(それまでは、敷地内から海などは見えないコースになっている) これも、演出の一つと言えるだろう。
情報とオペレーション、そして、演出、いろいろ考えられるポイントはありそうだ。
もう一つ。宿泊とアトラクションと、それをつなぐ移動手段をパッケージにすることの優位性も指摘できる。
オーランドには無数のホテルが存在しているが、この交通システムの一点だけでも、直営ホテルは他のホテルと明確な差別化がなされている。直営外のホテルは、バスを出していても有料であったり、複数のホテルを経由するなどするために時間がかかったりするからだ。自家用車やレンタカーの場合、駐車料金をしっかり取られるのも痛い。(年間パスを持っていると免除されるが)
確かに、こうしたパッケージングは、広大な敷地に、客を抱え込んでいるからこそ出来ることでもあろう。
ただ、やりようによっては、都市部のホテル、または、温泉街の旅館などでも、同様の事は、可能なのではないだろうか?
例えば、2泊以上する人には、地域の交通をフリーで使えるチケットを出すなどである。4人いれば、タクシーにも(一定距離)乗れるとすれば、利便性はより高まるだろう。
もちろん、こうした取り組みを行う場合には、交通機関と宿泊施設、そして飲食施設やアトラクションと密接なコミュニケーションが重要である。例えば、良くあることだが、タクシーの運転手は「なんで、こんなところに来たの?」などと、来訪客の楽しみを打ち砕くようなマイナス要素となりうるからだ。ちなみに、TDLでは、オリエンタルランドが出資し、新しくタクシー会社まで設立している。
移動までも含めた「滞在」を一つにパッケージングし、どんな「経験」をしてもらうのか。そんなことを考えても良いではないだろうか。
多様な資本が集まっているから、そんなことは出来ない。と考えがちだが、ハワイのワイキキでは、BIDという制度を使って、地区全体の付加価値を上げるべく取り組みが行われている。
http://www.waikikibid.org/
こうした制度も参考としつつ、多様な主体、資本を連携させることで、相乗的な効果を生み出すことが出来るのか。この辺が、地域の観光推進組織の手腕にかかっているような気がする。

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