なぜか、昨日より、再び、宿舎でネットが使えなくなったために、ブログのアップが遅くなりました。
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日本では、近年、観光学部の開設が相次いでいる。
ここアメリカでは、大学のミッションは3つあるとされている。

  1. 研究を行い新しい知見を創造し、蓄積していくこと
  2. 高度教育機関として、人材育成を行う事
  3. 高度な知見を有した人材を擁した組織として地域に貢献すること

他の大学の事はよく解らないが、少なくても、UCFでは、ファカルティは、こうした3つの分野に対応していく事が求められている。ただし、その比率はファカルティによって異なっており、個々の契約によって決定される。例えば、テニュアトラックのファカルティは、研究の比率が高くなるし、逆にテニュアトラックではないアシスタント・ファカルティは人材育成・教育の比率が高くなるといった感じである。
大学としては、ファカルティを組み合わせ、集団とすることで、社会から求められる大学の3つのミッションに対応しているのである。
ただ、ここで留意が必要なのは、ファカルティ個人としての評価は、1の「研究」のみで評価されるということである。どんなに、授業の進め方がうまかろうと、地域への貢献度が高かろうと、研究が出来なければ、ファカルティとして上位(アソシエイトやフル・プロフェッサー)に上がることはない。
さらに、大学の評価も、基本的には、その大学、学部が、年間、何本の論文を出しているのかによって決まってくる。そもそも、アメリカの大学は、日本のように文部科学省など国が設置を認可するものではなく、基本的には「勝手に」作り上げる物であるため、共通的な設置基準というのは存在しない。そのため、大学の格付け、評価組織というのが複数存在しており、それらが評価している大学であれば、学歴(学位)として評価されるし、そうでない大学での学歴(学位)は意味を持たないという構造がある。(こうした事が、いわゆるディプロマ詐欺にも繋がる) こうした評価組織が中心的な評価軸においているのが、論文数なのである。
一方で、大学が持続的に運用されていくためには、学生が集い授業料が集まることが重要であるし、UCFの場合、州立であるから、補助金を得るためには行政、すなわち納税者からの評価、理解もとても重要である。これには、「社会に役に立つ人材を輩出する」ということが、最もわかりやすい評価軸となる。さらに、地域や社会から評価されることは、行政(納税者)からの理解を促進させるだけでなく、例えば、企業からの寄付金であったり、学生の就職先確保に繋がることになる。
すなわち、大学にとっては「研究」が最も重要な役割であるが、研究だけでは資金は獲得できない(=ファカルティを雇うことも出来ない)ために、教育や貢献といった活動も併せて行うという組織としてのビジネスモデルを構築しているのである。
さて、こうした整理を踏まえて、日本の大学を考えてみるとどうだろう。
研究、教育、そして貢献。そして、それらを統合したビジネスモデルは、アメリカと大きく異なっているのではないだろうか。
現在、観光庁や経済産業省などで、観光系(ホスピタリティマネジメントを含む)の人材育成について取り組みが進められているが、どうも、根本的なモデルの考え方が違うために、話がすり合わない気がしている。

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