今週で、大学の秋学期は終了。学内は、ドタバタとしている印象があります。
今日、ローゼンカレッジ内のブックストアに買い物にいったら、「教科書の買い取り」をしていました。私の前にも、教科書を売りに来ている女子学生さんが数人。たぶん、今日、テストの人たちだとおもいますが。即日でうっぱらっちゃうんですねぇ。ちょっとびっくり。
でも、効率が良いと言えば、効率良い。
さて、私も大学のアパートに居られるのは、今週いっぱい。最後の一週間は、ホテル暮らしとなるので、今週中に、簡単なまとめをしておきたいと思います。
まず、今日は、米国のホスピタリティ産業について。こちらでは、観光産業と言うよりは、ホスピタリティ産業というとらえ方が一般的です。両者は同じものではなく、区分はされていますが、ホスピタリティ産業という概念自体が動いているため、明確な境界線はありません。
ただ、ホスピタリティ産業と言う場合、その顧客が「旅行してくるかどうか」に関わらず、余暇時間や自由時間活動に対してなんらかのサービスを提供し、対価を得るものと考えることが出来ます。一方の観光産業という場合は、「旅行」に伴うものであるかどうかということがキーポイントになります。
ここで留意したいのは、業種ではなく、顧客の活動がキーであるということです。
例えば、WDW内には、複数のガソリンスタンドがあります。通常、ガソリンスタンドは、ホスピタリティ産業でも観光産業でもありませんが、WDW内のガソリンスタンドの場合、その顧客のほとんどはWDWのゲストになりますから、観光産業として考えることが出来ます。
また、連絡船のような船は、立地場所(例えば、安芸の宮島へのシャトル)によっては、観光産業ではあるかもしれませんが、ホスピタリティ産業ではありません。しかし、フロリダのカリブ海クルーズのようなものになれば、ホスピタリティ産業となります。
米国において、観光産業よりも、ホスピタリティ産業が一般的な呼称であることは、運輸業や旅行業への意識の低さにも影響しているのかもしれません。日本では、この2業種は「観光産業」のシンボル的な存在ですが、こちらでは、あまり話に出てきません。これは、陸続きの国であり、道路網が高度に発達しているところなので、自動車利用が多い事。空港も同様に整備が進んでおりバスのような感覚で利用できること。そもそも、発地側の旅行会社という概念が希薄なことなどが理由かもしれません。
ただ、「移動」ではなく「施設が提供する価値」がより重要な意味を持っているという部分については、間違いがないところでしょう。
ホテルなり、テーマパークが集客出来るのは、その立地条件や交通条件のためではなく、あくまでもそれぞれの施設がどれだけの価値を提供できているのか否かにあるという意識が強いと言うことです。
もちろん、気候や景観など、地域固有の特性は存在します。ただ、好条件の所は、多くのライバルが参入しますから、そのライバルの中で勝ち抜けるだけの経営力が必要ですし、逆に悪条件の所では、その悪条件を克服できるだけの取り組みが必要となります。つまりは、最終的にはそれぞれの施設がどれだけの価値を顧客に提供できているのかにかかってくるわけです。
地域としての浮沈と、自身の業績とは必ずしも連動しません。
例えば、不況の影響で、オーランドの集客も低下していますが、その低下の影響をもろに受けているのは、ユニバーサルスタジオやシーワールドなどの2位、3位グループです。WDWとて、無傷では無いですが強い。これは、回数や消費額を減らす場合、消費者は、核となるとなる部分に自身のリソースを投入するためです。
ホテルも同様です。オーランドには、非常に沢山のホテルがありますが、それらが一様に減少しているわけではありません。平均値以上に減少するところもあれば、あまり変化のないところもある。
こうしたことは、実のところ、日本でも同様なわけですが、大きな違いは、米国の場合、「それが当たり前」という意識が幅広く共有されているということでしょう。実際、業績がふるわなければ、シーワードのように売却がごく普通に行われることになります。
もともと、観光、ホスピタリティ産業が対象とする需要は、変化しやすい要素を持っています。今年の新型インフルはその好例ですが、その他、戦争や、天災なども大きな影響を及ぼします。ここオーランドもハリケーンのリスクを抱えています。
さらに、社会経済環境の変化によって、顧客が求めるものも、連続的に変化していきます。ここ米国であってさえ「環境」というのが、一つのキーワードになりつつあることが好例でしょう。
しかしながら、そうした特性を持っていることは、あらかじめ「解っている」ことです。
そして、そういう特性は、大なり小なり、どの産業も抱えているわけです。つまり、観光産業、ホスピタリティ産業に特有のことではありません。
米国のホスピタリティ産業は、そうした「心構え」の上に、自身の事業を組み立てているように感じます。
このように、企業の強さが第一であることを示すと、「大きいところが勝つ」という印象を受けがちですが、そんなことはありません。米国には、実に、多様な規模の企業体が1つのディスティネーションに混在しています。例えば、オーランドで行っても、マリオットやディズニー、マクドナルドといった国際的な企業体から、シーワールド、チリズのような米国全土を網羅するような企業体。そして、ローゼンホテルズのように、ここオーランド・ローカルに、強力に根ざした展開を行う企業体などが混在します。さらに、チョイスホテルズなど表面的にはワールド・ブランドを掲げていても、実際の運営はローカル資本が行っている例も少なくありません。(実際、ローゼンホテルズの数件はそのパターン)
つまり、産業が産業として競争を行ったからと言って、ローカルが排除される訳ではありませんし、大きなところが占有してしまうわけでもない。そこにあるのは、良い意味での新陳代謝であり、独立独歩の気風であるように感じます。
さらに、こうした気風は、新しい価値をどんどんと創造していきます。
カリブ海クルーズは、ホテルと船旅とエンターテイメントが高度に融合したサービスですし、テーマパークがつくり出す各種のアトラクション、エンターテイメントは、人のオペレーションに様々な機器を組み合わせることで、ゲストの五感を未知の領域に引っ張っていきます。今や、古典的とも言えるローラーコースターですら、毎年のように新型が登場してきますし、ウォーターパークも信じられないアトラクションを用意する。また、近年のタイムシェアは、不動産所有・理由のメリットに、ホテルオペレーションを組み合わせることで新しい価値を創造しています。
指摘を始めれば、きりがないくらい、新しい体験をどんどんと生み出していくことが出来るのが、ここ米国のホスピタリティ産業です。
こうした取り組みに、日本で真っ向勝負が出来るのは、飲食店ぐらいではないでしょうか。(それだけ、日本の飲食店、特に都市部の飲食店のレベルは高いと思っています)
さらに、「強い」企業に注目すると、個々の要素を、さらに高次の水準で統合し、全体としての他者が追随できない相乗効果を上げている事にも気づきます。私は、これをゲシュタルト効果と呼んでいますが、WDWは別格としても、ローゼンホテルズや、スワン&ドルフィンなどのホテルであっても、建物の造りから、サービス構成、従業員の動き方に至るまで、違和感のないシームレスな一枚岩のような魅力を創造しています。
余談ですが。こちらで呼んだ論文に性別での評価傾向の違いがありました。男性は「良かったところ」に評価が引っ張られがちなのに対し、女性は「悪かったところ」に引っ張られる傾向にあるというものです。その結果を適用すれば、様々な要素を組み合わせることで特徴的な魅力を高めるだけでは、男性にしか評価されないのです。その上で、ネガティブ評価されるようなところをつぶさないと女性の評価は得られません。
「強い」企業は、そうした事が出来ているということを実感します。
ただ、その中でも、WDWは、もう想像を超える水準に行ってしまっている印象がありますが。
以上を考えれば、結局の所、諸条件の中で、「自分たちの頭と資本と責任」で、「経営」をで行っていくことの出来る能力。
という「当たり前」のことが、重要なのだなぁ。ということを改めて実感した日々でした。

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