このところ、就職氷河期についての話が、再度、よく取り上げられるようなった。
失業率も5%とかなり高い水準にあり、景気についても展望が見えない状況では、それも、当たり前。という印象はある。
そうした中で、日本企業が行っている「新卒一括採用」を問題視する論調も出てきている。
私も業務で、大学での人材育成プログラムの検討、立ち上げに携わり、また、自身も大学で非常勤を長くやっているが、企業に全ての原因をもっていくことに、なんとなく、違和感も感じていた。
んで、少し、調べてみた。
新卒者の就職については、文部科学省が「学校基本調査」にて、調査しているとのこと。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
Wikipediaによれば、就職氷河期は、90年代のバブル崩壊後に生じ、その後、2005年頃に一時、集結したもののその後、再び、氷河期となったとされている。
そこで、昔のデータをたどってみると、平成10年(98年)が347,549人で、翌年、平成11年(99年)には320,072人、平成12年(2000年)には300,887人と、2万人程度の減少となっている。その後、平成15年(2003年)くらいまで、概ね30万人で推移していく。
一方、就職「率」でみると、統計上、最低だったのは、平成15年(2003年)の55.1%。平成12年(2000年)から17年(2005年)まで、50%代後半で推移している。
ただし、その後のデータを見てみると、就職者数は一転して、増大傾向に転じる。
平成16年(2004年)が306,338人であり、その後、毎年、2万人程度「増加」し、平成20年(2008年)、21年(2009年)には38万人台となっている。
就職率も毎年4%程度向上し、平成21年(2009年)は68.4%にまで回復する。
こうしてみてみると、就職者数と就職率は大きな関係を持っていることは明らかだろう。平成16年(2004年)の306,338人が、平成20年(2008年)には388,417人と、4年で、実に27%、8万人も就職者数が増大していることを考えると、卒業年次が就職に大きな影響を及ぼすことは間違いない。
ただ、一方で、大学進学者数が増大しているという事実もある。
平成2年(1989年)の卒業者数は400,103人。これが、わずか5年後の平成7年(1995年)には、493,277人と、10万人規模で増大している。
その後もじわじわと卒業者数は増大し、平成11年には532,436人、平成21年には559,539人となっている。
少子化によって、18歳人口は平成4年(1992年)に、204.9万人とピークとなり、その後、「順調」に減少を続け、平成19年(2007年)には、129.9万人と4割近く減少しているにも関わらず。である。
その間のGDPは、基本的に横ばい。つまり、日本は経済成長をしていないわけで、産業側の受け入れ規模は、全体として大きく変化しようがない。
つまり、短期的には、産業側の好不況、景況感による変動があるが、そもそも、大学卒業者数と産業規模との需給バランスが取れていないと見るべきだろう。バブル期の卒業者数、40万人に対して、55万人と、4割近く増大しているということが、その好例である。
全体の経済規模の拡大が見えない以上、就職率を高めるには大学の卒業者数を、40万人規模にまで、減少させていくことが必要だろう。
40万人のうち、1割程度が進学とすれば、就職希望者は36万人。就職者数が最低水準であった30万人でも、就職率は80%を超える。これは、多量の新卒者が雇用されたと言われるバブル期の数値と変わらない。
結局の所、産業の受け入れ規模に、大学の定員数が連動していないことが、根本的な問題だと言えよう。
大学定員をしぼり込む事は、受験戦争という問題を生じさせることにもなるのだが、最終的なゴールを就職とするなら、そこで頭を押されられる事になり、単なる問題の先送りに過ぎない。むしろ、大卒という学歴ではなく、手に職を付けるなり、起業家を育てるといった複層的なルートを早いうちから作っておいた方が良いのでは無いか。
いずれにしても、少子化によって18歳人口は、今後も減っていくことになるが、「全入時代」と呼ばれるように大学生の「数」の確保が進められる方向にある。その流れを断ち切り、劇的な定員数の削減に取り組みがなされなければ、就職「率」の大幅は改善は見込めず、就職浪人などが多く出てくる事とは、構造的に間違いないだろう。
そうした中で、大学が取るべき手段は、「就職に強い」学生を育てることにあるのだと思うが。さて、どうなのだろうか。

Share