「人間は自分が信じたいことを喜んで信じるものだ。」
とは、ガイウス・ユリウス・カエサル(『ガリア戦記』第3巻18)の言葉だそうです。
今回の震災に関わる情報伝達を見ていると、こうした人間の心理を実感します。
例えば、原発。これを「破局的な事態」だと思う人は、そうした情報をネットなどから掘り起こしていきますし、逆に、「そう大きな問題ではない」と思う人は、同じように、自分の考えに合う情報を掘り起こしていきます。
また、原発の場合、原発がどうこうという事よりも、政府に対する意識が先にあるのだと思います。
政府を信用できないという人は、政府情報を否定するのに資する情報を求め、自身の考えを強化していきます。これは、政府を信用している人も同様でしょう。
もともと情報は、人によってベクトルがかかった状態で創造されます。つまり、その情報自体が、発信者の信じたいこと(価値観)によって形成されたものだということです。さらに、現在はネットによって、誰でもが情報発信出来るようになりますから、それぞれの立場で、それぞれの情報が増殖し、それが各者の意識を更に強化することになります。
真実が何かということではなく、「信じたい」という思いが先にある訳です。
その「信じたい」という思いに沿った情報でなければ、いくら情報が流通していても、その人の所には届きにくい。
こうした心理は、今回のような震災時の観光行動における情報にも影響してきます。
現状では、多くの人達の意識が凍り付いた状態にありますので、観光地側が、「旅行に問題ありません、安全です」といった情報を発信しても、それは、なかなか人々には伝わらないでしょう。
ただ、そうした中でも、いろいろな理由で、「旅行に出来れば行ってみたい」と考える人は居るはずです。
例えば、被災地より距離があり(計画停電にもさらされていない)西日本の人々や、震災報道などでストレスを抱えた子供を持つ家族、計画停電や不安定な物資供給に嫌気を持つリタイア層など。
現時点では、こうした意識を持った人に特化することが有効だと思います。言い方を変えれば、そうした需要を持った人達を見つけ出す事が必要です。
ただ、現状、調査をして検証してターゲッティングしてなどという手順は踏んでいられません。
ファンクラブのような組織、顧客名簿を持っているところは、まずは、そこから
私も有効な手法はわかりませんが、手っ取り早いやり方としては、いくつかの仮設を立てて、複数のターゲットを想定した特設Webサイトを作ってみることが挙げられます。
それらのWebサイトへのアクセス状況、検索キーワードなどを見ていく事で、走りながら対応していくというイメージです。
皆で、この困難に立ち向かっていければと思います。

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