まず、墨田区役所 で、工房ショップ事業、及びミニ博物館(モデルショップを含む)についてのヒアリング。
以下、結果を抜粋。
事業導入の背景 ~直販体制を作りたい
区内には中小の製造業者が多い。その中でカバンや洋服などは最終製品を作っている業者が多いが、流通の過程の中でマージンがとられてしまうし、自社のブランドを出すことも出来ない。工房(工場)に販売機能を持たせることで、直販体制を作り、下請けからの脱却と知名度アップを図りたい。
また、物づくりの現場を見せることで、より生産者と身近になってもらえるのではないだろうか?。
反応 ~概ね良好
新聞発表以来、概ね好反応。
区外からの問い合わせ(転入の打診)や、対象地区外からの問い合わせも。
問題点
まだ、始まったばかりの事業なので、特にこれといった問題点は無い。
が、想定されるものとしては、
- 補助額が高額ではないので、工房側の負担は相応のものとなること。
- 工房ショップといっても、ガイドラインがあるわけではなく、事業者自らが考えるため、効果的なものが出来るのか。
- 製造業一筋の人ばかりなので、営業的な対応が出来るのか。
工房ショップ事業とミニ博物館(モデルショップ事業)との相違は
モデルショップ事業は、マイスター制と組み合わせたものであったため、ハードルが高く、あまり普及できなかった。また、対象地域が区全域としているため、集積のメリットが出てきていない。
一方、工房ショップ事業では、マイスターのような特別な技術分野だけでなく、一般的な製造業にまで枠を広げる一方で、地域を3地区に限定し、集積による相乗効果を図りたい。
今後は
まだ、始まったばかりなのでこれを普及させていくことが第1。
また、曳船駅前で進んでいる公団の再開発ビルの1フロアを、工房ショップフロアとすることも検討中。(自分のところを改修するのは大変なので、そうした場を提供してもらえないかという問い合わせがあるそう)
総括
ミニ博物館やマイスター、モデルショップという「すみだ3M」活動をしてきたが、いまいち(後述)で、地域を絞って、再出発しようということらしい。
対象地区として3地区を挙げているが、本命は、アパレル系メーカーの集積が見られ、かつ、路面整備などが行われている馬車通りらしい。
□馬車通り風景 歩道及び車道の路面が整備されており、各種、ランドスケープ整備も行われている。 |
□馬車どおりのアパレルメーカー1 路上に服が出ていたが、売っているわけではなかった。 これからダンボール箱に詰めて、出荷するらしい。 |
□馬車通りのアパレルメーカー2 こちらは、更に大量のダンボールが積まれていた。 バーゲン時期には、これらの店でも直販しているそうだ。 |
開店休業状態のショップ
多くの博物館及びショップは、開店休業状態であった。また、既に廃業してしまっているショップも、3ヶ所(現在開業中21ヶ所)にのぼっている。
□屏風博物館 非常にわかりにくい場所(地図も間違っていた)にあり、店舗も閉鎖的で入りにくい。内部も無人であった。 |
□ニットギャラリーカワシマ 本来空けられているはずのブラインドがしまっており、入り口のサインもなかった。 |
活用されていない原因については、つっこんだ話は聞けなかったが、
- 各施設が点在してしまっている一つ一つは本当に「ミニ」なので、単体での魅力では力不足。相互が連携しようにも、点在しているため連携のしようが無い。
- 情報が現実的でない地図が解りにくく、しかも、間違っていたりする上に、街中にはまったくサインが無く、それぞれの施設を見つけることが困難。
- まち歩きにむいていない点在していることもそうだが、区内に水戸街道や京葉道路など、大きな道路が走っており非常に歩きづらい。
の3点が主原因であろう。
がんばっているショップ
□タキナミガラスファクトリー 非常に凝ったつくりの建物と、ガラスショップ、ガラスづくり体験工房、ガラス博物館、工場見学ブースなど質の高い発信を行っているショップ。 墨田区のミニ博物館・モデルショップ指定を受けてはいるが、規模にしてもお金のかけ方にしても、異質。 企業のショールームと捉えたほうがよかろう。駐車場も唯一、この施設だけが備えている。 このショップには、他にも客が来ていた。 しかし、ガラス屋っていうのは儲かるのだろうか。 |
□桐の田中 大掛かりな、ショップ兼博物館を公開している。また、階上には製作工房があり、桐細工の製作現場を見ることが出来る。(今日は見れなった) 馬車どおりに近く、工房ショップにとっても見本となりそうなつくり。 が、ここも客はおらず、店の人もいなかった。(私が入っていったら、奥から、ノソノソと出てきた) |
ミニ博物館についての感想
正直なところ、企画の空回りという感じが否めない。
特に、車での回遊が難しいにもかかわらず、施設が散在してしまっているのは致命的。資料ではバスなどの紹介もしているが、それぞれは小さな施設なので、わざわざバス代を払ってまで回遊するとは思えない。
新フラノプリンスホテル隣接のニングルテラスは、一つ一つの店はたいしたこと無いが、「倉本聡」監修というブランドと、各店舗が集住していることが大きな魅力となっている。リゾート地の店舗と同列に扱うものではないが、やはり、歩ける範囲に集まることは重要な要素であろう。製作過程を見せること自体は、そう目新しいことではない。実際、街歩きの中でも、手打ち蕎麦屋をみかけた。(写真)
この蕎麦屋を含め、街中には、まち歩きをして楽しめそうな空間は散在しており、それらと組み合わせることが出来れば、もう少し、魅力が増しそうなので残念。
この手の企画を事業化するにあたっては、
などを考慮すべきだろう。
- まち歩きの動線を考え、歩きやすい空間を連続してつくる。
- パンフレットなど無くても、興味が持てるようなサイン計画を行う。
- 工業にとらわれず、飲食なども含めたディスプレイを考える。
- 施設内に入らなくても外部から楽しめるようなデザイン(ショーケースなど)を考える。
- スタンプラリーのような周遊を促す仕組みを考える。
■撮影アルバム(江戸東京博物館を含む撮影した全写真を参照できます)