■大規模旅館セミナー(加賀山代温泉 ホテル百万石 UP
1999年5月24日、25日で、JTBFの大規模旅館セミナーで、石川県加賀山代温泉「ホテル百万石」に行って来た。
このホテル百万石はともかく、でかい。入り口からは想像できないくらい、奥へ、左右へと様々な施設、空間が連なっている。
純和風から南欧風客室まで揃う多彩な客室。非常に広い大浴場。3層ぶち抜きのアトリウム空間。お祭り広場。コンセプトダイニング「大観」。SPA百万石。パブリックフロアには水が流れ、鯉が泳ぐ。
どれもこれも、通常の温泉旅館の比ではない。
これだけの施設が集積していると、アイデンティティの形成が難しい。巨大複合施設であること。それが、このホテル百万石のアイデンティティなのか。
ホテル百万石のエントランスロビー。
ダウンライトと赤地の絨毯が印象的。
ロビー脇には日本旅館らしく鯉の泳ぐ池が設けられている。が、目には付きにくく、あまり目立たない。
横幅はあるのだが、天井が低く感じられ、圧迫感を感じる。これは、ダウンライトと赤地の絨毯という暗めの色彩が原因だろう。
ただ、この先に広大な吹き抜け空間が広がるため、ここは重厚感を増すためにもこれはこれで良いのかもしれない。
別館、梅鉢亭の廊下。
全室、高級和式客席というこの別館らしく、通路幅は広く、池や採光用の窓がふんだんに用意され、屋内でありながら日本庭園内の渡り廊下を歩いているような印象を受ける。
色調も、明るく気持ちがよい。
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フランス料理レストラン「ことじ」前の庭園。
百万石の中でも特に緑濃い日本庭園であった。
中庭(?)から客室側を望んだもの。
庭園の造形に比べ、本館、南館の外観は老朽化が目立つ。
庭園中央には、大きなプールがあり日本庭園とは異なる空間を作り上げており、樹々の樹高も高い。心地はよいが、いわゆるホテル系の景観であり温泉旅館としてのアイデンティティとのギャップを感じる。
見る庭園よりも使う庭園の方が有意義だとは思うが、場当たり的な気もする。
プールは下記の数ヶ月しか営業できないのであるから、たとえば、東京ベイシェラトンのようにオフシーズンには単なる池になるような造作にして、景観の統一を図ることが重要ではないか。
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別館、梅鉢亭の日本庭園 コンセプトダイニング「大観」前の廊下。
突然、ヨーロッパ調のデザインとなっており、良くも悪くも印象的な空間である。右の写真前方には「お祭り広場」があり、ギャップも大きい。
ただ、ここまで個性的なら道には迷わないか?
フロントロビー先に広がる3層ぶち抜きの吹き抜け空間。
3階がフロントで、1階が庭園(プール)というGLを2つもつ施設であるため、その両者をつなぐ空間として位置づけられる。
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同じく、吹き抜け空間。
アトリウムとなっているため、日当たりがよく、非常に明るい。
ただ、3階にも1階にも同様のラウンジが存在するが、チェックインアウトに関係する3階に対し、1階ラウンジの存在意義はよくわからない。夏場にはプール客の利用者がいるのかもしれないが、それだけなら空間として非常にもったいない。
受付準備風景
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百万石正面玄関。
屋根が張り出し、かつ、フロント部が暗いため、なんとなく閉鎖的な印象がある。
3階売店前の噴水(?)及び池。
和の印象の強い落ち着いた空間。屋外のような楽しさがある。
吹き抜け空間の天井部
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新設したヨーロピアンルーム。
イタリアのプチホテルをイメージしたというこれらのヨーロピアンルームは、もともと、裏部屋だった客室をリニューアルしたもの(らしい)。内装はまったくその通りで、色彩、照明、タイルなど非常に個性的で、質も高い。ただ、洗面所はともかくジャグジーは大きさもデザインも、眺望もイマイチ。いっそのこと、シャワールームだけにして、お風呂は大浴場を使わせるのを前提としてしまった方が良かったのでは無いか。
和式客室と全く異なるセグメントであるこれらの部屋は、遊び心という点で高く評価できる。が、室外は通常の和式旅館のままで、中途半端な印象は拭えない。この部屋で、「心は南欧」となっても、室外に出たとたんに夢も希望も飛んでいってしまうのでは無いか。せめて、ワンフロアーを南欧フロアーとして、「エレベーターを降りたら別世界」という演出は出来ないものか。(エレベーターというは、閉鎖空間で移動するため、場面展開の手段として利用価値が高い)
また、ワンフロアーが難しければ、そのブロックだけでも自動ドアを設置してちょっと隔離するとかの工夫が欲しい。(SPA百万石へのアプローチのように)
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20億円以上をかけて造った「SPA百万石」
全体的に上質なイメージが貫かれており、一般的な温浴SPA施設とは違いを感じる。
セミナー2日目に、私は、90分ほど実際に利用してみたが、貸し切り状態であった。
だが、残念なのは、メインプールがアトリウム空間で非常に明るく広々としているのに対し、打たせ湯やバブルバスなどの施設が小分けされた空間に配置されてしまっており、開放感が著しく低い。都市部のビル内ならともかく、地方観光地のSPA施設としては問題だろう。
また、施設がホテル百万石の客室棟の一番奥に立地しており、延々と廊下を歩かねばならないこと。
中庭に面していながら、(有料施設だからやむを得ない面もあるが)ほとんど、融合が図られていないこと。特に屋外プール利用者とは客層がだぶるはずなので、残念。
宿泊者以外の利用者も想定しているようだが、都市部でもスポーツセンターの運営は苦しく、絶対的な人口数の限られる現地では、さらに難しいだろう。
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コンセプトダイニング「大観」
まず、命名がうまい。ブランドになりうるネーミングである。
大観の位置付け自体、温泉旅館としては画期的なものであると思うし、様々なチャレンジ、工夫が随所に凝らされている。館内の立地場所も核にあたる部分に相当し、非常に意欲的な空間である。
しかし、オープンキッチン自体は、もう一工夫欲しい気がする。実際に、オープンキッチンを展望できる席はわずかであるし、スクリーンも高すぎて見難い。
たとえば、キッチン部分を一段下げて(もしくはあげて)広く見晴らせるようにするとか、キッチン上部にスクリーンを設けて、実物とスクリーンの視線方向を一致させるとかは出来ないか。
お祭り広場
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お祭り広場 帰りの飛行機からの眺望
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