□熱海原調写真集(1999年09月06~07日)

□熱海湾の埋め立て地からの眺望
埋め立て地の公園は、どこにでもある類の公園。ただ、その背後の後楽園ホテルがひときわ目だつ。
湾から市街地を望むと、非常に狭いエリアに建物が集中しており、また、その背後の傾斜地に建物がせり上がっている様子がよく解る。
背後の山地の緑と建物群のコンクリート色が非常にアンバランスであり、建物群が浮いてしまっている。


□サンビーチ脇のデッキからの眺望
サンビーチの脇には今風の親水デッキが設けられている。万人が見て「美しい」と感じるデザインではあるが、少々くどいような気もする。また、クルーズが停泊するマリーナは借景として非常に貴重な物ではあるが、例えばベイサイドマリーナのように空間が一体化されておらず、なにかちぐはぐしたものを感じる。
その物足りなさを考えてみると歩行者空間としては優秀かもしれないが、孤立化しているのは問題なのではないか。
人間歩けば疲れるし、のども渇く。自動販売機では景観を崩してしまうのであるから、このデッキに隣接してカフェなりレストランなどは必須であろう。これはサンビーチにも言えることであるが....。


□サンビーチを望む
湾にせり出したデッキからサンビーチを望んだ物。
正直、港湾のデッキの中でも規模といいデザインといい、かなり良い線にあると思う。
ただ、前述のようにただ歩行者空間があるだけなので、潤いというか空間に暖かみを感じない。埋め立て地の公園に共通した欠点とも言えるが...。
夏場でサンビーチに多くの人がいるときには、また、違った印象なのかもしれない。


普通の地方都市として熱海を見ると、人の流れも多く、多くの商店が営業し、車が走り、非常に活気のある町と見ることが出来よう。
減ったとはいえ、絶対量においていまだ多くの観光客を受け入れている証とも考えられる。
大体、どこの町でも個人商店は「苦しい苦しい」とは言いながら、意外に経済変動に強く、致命的な影響は受けていない事が多い。親族経営であるからキャッシュフローが少々滞っても何とかなることが一因であろう。
一方で、キャッシュフローが息詰まったら即営業が止まってしまうのが、法人化した企業である。黒字であってもキャッシュフローがうまくいかなければ倒産するのが、企業経営であり、現金収入が遅れてくる事が多い宿泊業ではその影響は大きい。その辺が、宿泊施設の状況と商店との対比を作り上げているのかもしれない。

それはともかく、熱海の町を歩いて感じるのは「紛れもなく都市だ」ということである。すでに多くの投資がなされ、都市インフラを始めとして都市としての必要条件は全て兼ね備えている。逆に言えば、良きにせよ悪きにせよ多大なストックができあがっているこの都市では、リニューアルは容易な事ではない。

サンビーチにしても、デッキにしても、商店街のモールにしても、ディスプレイされた源泉にしても、一つ一つを取り上げれば、それだけで有効な観光資源となりえる素質を持っている。にも関わらず、熱海という町のなかでは、それらの魅力が吸い込まれてしまい、輝きを放てなくなっている。そんな感じである。

■動画集

■その他撮影画像リスト UP
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熱海駅
99/09/06 10:38:00
204KB
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熱海駅前商店街
99/09/06 10:38:12
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休業中のホテル?
99/09/06 10:42:30
136KB
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休業中のホテル?
99/09/06 10:42:36
186KB
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モールを抜けたところ
99/09/06 10:42:58
163KB
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湯井
99/09/06 10:46:32
266KB
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ディスプレイされた源泉
99/09/06 10:57:50
44KB
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スタンプ台
99/09/06 10:58:12
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歴史を感じさせる店舗
99/09/06 11:00:20
226KB
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99/09/06 11:04:18
220KB
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裏通り/廃業した旅館
99/09/06 11:31:40
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商店街
99/09/06 11:37:26
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百万石からの眺望
99/09/06 12:34:28
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百万石レストラン
99/09/06 12:34:42
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99/09/06 15:09:52
125KB
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99/09/06 15:10:04
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初島へのクルーズ船
99/09/06 16:11:26
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廃業した旅館1
99/09/06 16:12:06
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廃業した旅館2
99/09/06 16:12:50
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テトラポットの護岸
99/09/06 16:17:08
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一通の規制が激しい道路
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親水デッキ
99/09/06 16:35:40
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サンビーチ
99/09/06 16:38:52
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サンビーチ
99/09/06 16:50:10
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サンビーチ脇の駐車場
99/09/06 16:56:36
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サンビーチ脇の駐車場
99/09/06 16:58:06
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茜崎附近
99/09/07 11:50:02
230KB
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茜崎附近
99/09/07 11:50:46
248KB
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スカイラインより沼津を
99/09/07 12:34:48
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十国峠ケーブルカー
99/09/07 13:20:32
419KB
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十国峠ケーブルカー
99/09/07 13:20:58
190KB
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十国峠より湯河原
99/09/07 13:32:56
279KB
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十国峠山頂駅
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廃業ホテル
99/09/07 15:20:28
279KB
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99/09/07 15:20:52
512KB
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伊豆山神社
99/09/07 15:22:42
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伊豆山神社の階段
99/09/07 15:23:16
281KB
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リゾートマンション
99/09/07 15:44:26

では、どうするのか。

まず、ここまで都市であるなら、都市観光の概念から捉え直すべきであろう。言い換えれば「都市としての魅力を作る」という事である。温泉というキーワードから導き出される「温泉情緒」といったものを熱海で具現化することは無理である。同時に「歩きやすい町」とか「バリアフリーな町」といったキーワードもあまり意味が無いのではないか。
いわゆる都市において、歩きやすかったりバリアフリーであることが、根本的な魅力にはなり得ないであろうと思うからである。言い換えれば、それらの要素はフリンジニーズには成り得てもコアニーズには成り得ないと考える。

以前、熱海を訪れる人々にとってのコアニーズは、温泉がおまけについた団体宴会旅行であったのあろう。熱海という地で酒を飲み、唄い、温泉に入り、ハメを外す。来訪者にとってそれが刺激的な非日常であり、熱海に対するコアニーズであったのだろう。しかし、多くの人が指摘するように、これは既にコアニーズでは無くなってしまっている。

では、現在のそして今後のコアニーズをどこに求めていくのか。

正直、それがなんなのか解らないが、漠然とした考えで言えば「活力あるエンターテイメント性」なのではないか。

熱海が都市であると考えるなら、保養性や癒し、人に対する優しさといったニーズより、むしろ、町としての楽しさ、刺激、活力、娯楽といったものがコアニーズに成り得るのではないか。つまりは、エンターテイメント性を中心とした「アーバンリゾート」としての魅力を備えることが重要なのではないか。

一口にエンターテイメントといっても漠然としているが、既存事例から考えれば、ベイサイドマリーナのような「ショッピング」の楽しさであったり、パレットタウンのような「大観覧車」であったり、渋谷のような「情報発信力」であったり、谷中のような「界隈性」であったり、新宿南口のような「近代性」といったものが挙げられるのでは無いか。

こうしたエンターテイメント性の多くは、ハードウェアを作り上げれば具現化できる。しかし、考慮しなければならないのは、エンターテイメントの魅力は絶対的な物ではなく、すぐに薄れていってしまうことである。ハードウェアの寿命に比べ、それは悲劇的なほどに短い。大切なことは、エンターテイメントの魅力を薄れさせないように、ソフトウェアの更新によって魅力を保つことが可能な仕組みづくりであろう。そのためには、借り物のエンターテイメントを作り上げるのではなく、自らがエンターテイメントを作り上げていけるクリエーターとなる人材や、企画を具現化させるための組織力を保有することである。当初は外部資本やハードウェアに依存するにしても、いずれは内製化できるようにしていくことが重要であろう。

話しを熱海に戻して、もう少し具体的に考えると、まず、海岸周辺を中心とした休廃業旅館の跡地については、事業用定期借地権を活用した10年ないし15年の活用策を提案する。権利者からいえば、売却して現金化してしまいたいところであろうが、売却すればそれだけ税金も発生するし、そもそも買い手などまともにはつかない状況である。であるなら、定期借地の仕組みをPRし、その活用事例(ベイサイドマリーナやパレットタウン)を示すことで、売却ではない第3の活用策を権利者に提示する。
この定期借地権の活用については、事業コンペを行うことで外部資本の呼び込みに繋げることが出来る。また、事業コンペによって、外部から見た客観的な事業性に対する価値判断も得ることが可能である。
出来れば、暫定利用する事業者に、現地法人を作らせ、権利者や地元青年会などにも出資をさせ、現地スタッフとして管理部門に雇用してもらう。そこで得られる運用ノウハウは、今後の熱海の各種事業展開に重要となろう。

(続)