Discussion of Destination Branding.

ハワイ を考える

なぜ、ハワイは人気なのか
ハワイに来て3週間が立った。
周囲はまだまだよくわからないが、ワイキキ市街については、空間的にかなり把握できるようになった。
また、先週くらいから日本人を中心に、ビジターが増加しているのを感じる。昨晩などは、夜10時頃であったのにかかわらず、ものすごい人手であった。
さて、ここで、大きな疑問がある。
なぜ、ハワイ(ワイキキ)は人気の観光地、リゾート地なのか。
EDITの講習が終わったことを機会に、私なりの考えをまとめておこう。
ワイキキエリアは、ホテルや商業施設の高度集積地であり、美しい砂浜と海、空を持っている。これは確かに希有な存在であるが、ショッピングが目的なら、世界中、国内でも多くの集積地があるし、海も「綺麗」であるが、他地域と比べて圧倒的かと言われれば、さほどではない。更に、非常に混雑し、かつ、サーファー向きであり、一般的な海水浴需要に適しているとは言い難い。
また、(ワイキキエリアでは)物価も高く、ちょっとした食事でも東京の倍以上は覚悟する必要がある。
なにが言いたいかというと、各々の魅力を要素に分解していくと、トップクラスリゾートというハワイの現在の位置づけに見合うだけでの相対優位性は無いという事である。
が、現実問題として、ワイキキは世界的なリゾートである。日本人にとってはNo1リゾートと言っても良い。
この秘密は何か。
いくつか感じたことを挙げてみよう。
1.恵まれた気候条件を持つ
南の島で、避けたい気候は「曇天・雨」「湿気」である。台風は最悪の事象と言えよう。
ハワイは、非常に「ドライ」であり、雨はほとんど降らない。(資料を見ると日本の冬季にあたる期間は雨が降りやすいようだが)
天候の悪さ、居心地の悪さは、ビジターの満足度に大きなマイナス効果を与える。マイナス効果の気象がほとんど無いということは、大きなプラス要因だろう。
2.各魅力要素が閾値を超えている
前述したように、ワイキキが持つ魅力要素は、競合先も多く、最高レベルとは言えない。
ただし、それは相対的な比較によって感じるものである。
絶対的な水準としては、とても高次であることは間違いない。
多くの人々が満足するレベルになっている。
3.ユニークなコンビネーションをしている
美しいビーチ(海)、レベルの高いホテル、レストラン、ショップ。
これらがユニークなコンビネーションになっているのは、ワイキキならではの特徴といえる。
いわば、都市観光的な要素と、ビーチリゾート的な要素の双方を持っていることになる。
4.多層構造を持つ
ワイキキは全般的に物価が高いが、安いホテル、安いレストランなども存在する。お金を出したい人には、それにいくらでも応えていけるだけのハイエンドな環境がある一方で、こういう安く済ますことの出来る環境も同居している。実際、ヨーロピアンの家族などが安いコンドミニアム(アパート)に滞在しているのをよく見かける。これが、前述の「ユニークなコンビネーション」にさらなる深みを与えている。
5.清潔感
ワイキキビーチを歩いて気づくのは、ゴミが極端に少ない(基本的に無い)ことである。日本のビーチでは例え離島であっても、様々なゴミがあるのとは対照的である。
清潔に保つために、要所にゴミ箱を用意するとともに、労働力を投入している。ハナウマ湾では火曜日1日をクローズして清掃にあたるという念の入れようである。
6.治安
ワイキキに限って言えば、日本とさほど差の無いレベルにあると思う。もちろん、裏路地や人通りの少ないブロックは危険と言われるが、これは、現在の日本の都市部でもさほど違いは無い。`程度や地域の問題はあっても、夜の10時過ぎまで外にがやがやと居れるというのは、問題ないレベルと言えよう。
7.交通インフラ
公共交通機関のTheBUS、観光客向けのトロリー、各種ツアーバス、タクシー、レンタカーなど、交通インフラは多層的になっており、用途や予算、考え方にあわせていくらでもチョイスが可能となっている。
8.外国であること
日本のような島国、単一(に近い)の社会環境に居住する人々にとって、海外、外国はそれだけで大きな環境変化となる。旅行の目的の一つには「非日常」を経験することがあるが、この目的において「外国」であることは大きな要素となる。
9.日本語サポートが充実していること
前項との対比になるが、海外旅行がポピュラーな存在になれば顕在化することが、「言葉」の問題である。
外国語でのコミュニケーションを楽しむことも、「非日常」の一つではあるが、一方で障壁ともなる。
外国であり、「非日常」を味わうことが出来ながら、(場所を選べば)日本語で対応できる。ということは、裾野を広げる(市場を広げる)ことに貢献する。
10.日々、進化していること
ハワイは、ずっと前から注目されるディスティネーションであった。そして、現在でも注目されるディスティネーションである。
この背景には、ハワイの魅力が日々、拡大したり、深化したりしていることがある。ハワイのイメージは当初、ビーチが中心であったが、現在ではショッピングの比重が高まり、さらに山岳や農場などにまでアクティビティの対象地が拡大している。
以上、思いつつままに10ポイントほど挙げてみた。
これらのポイントは、来訪者の多くが「満足」して帰るということにつながっている。`満足度の構造には二つの考え方がある。
1つは、個別の満足度を積み上げて全体の満足度になるという考え方。つまりは加点法である。もう1つは、総合の満足度から個別のマイナス項目がひかれるという考え方。つまりは減点法である。これは「大変満足」をスタートに、各要素のマイナス部分で減点されていく。
実際の満足度では両者が密接に関係してくるが、単純化すると、あまり旅行経験のない人や初めてその地を訪れた人は前者(加点法)、旅行経験の多い人やリピーターは後者(減点法)となるのではないかと考えている。
わかりやすいように、ワイキキビーチだけを取り上げよう。今まで南の島に行ったことが無い人にとって、ワイキキビーチは最高級に美しく、これだけで大きな満足感を得るだろう。景観だけで80点を取ってしまい、他要素で少々、悪いところがあっても気にしない。一方、経験の多い人は、その美しさは評価しつつ、他の要素にも目が行ってしまう。ゴミが落ちていた(実際のワイキキビーチは綺麗)とか、混んでいるとか、セキュリティに不安があるとかという感じで、減点していってしまう。
地域にとっては、両者には大きな違いがある。前者の場合、強みとなる部分を十分に強化すれば高い満足度を得てもらえるが、後者の場合、強みを一定水準に持つことは最低条件で、それに加えて弱み、特に来訪者に対して嫌悪感を与えるような要素についての対応が必要となる。
ハワイ(ワイキキ)の事例に戻ってみよう。
まず、加点式で見れば、恵まれた気候条件にあり、それぞれの魅力が閾値を超えており、さらにそれがユニークなコンビネーションをしている時点で、合格点であろう。
次に、減点式で見ると、多層構造、清潔感、治安、交通インフラなど滞在する中でマイナスポイントとなりがちな要素についても抑えられている事がわかる。
さらに、海外でありながら日本語対応が充実していることは、対象者を広げるし、新規投資が進んでいることは、リピーターの意識を高揚させる。
これが、ハワイ(ワイキキ)の強さ。では無いか。
次に、これを地域側から見て見よう。
なぜ、このように強固なリゾートを作り上げることが出来たのか。講義で聞きかじったことや、感じたことなどからまとめると以下の5つが挙げられる。
1.地域ポテンシャルの高い地域の選択`第一に、ポテンシャルの高い地域が選択されたという事である。
気候もよく、島は大きすぎず小さすぎず。さらに、離島を持つことでバリエーションも有する。また、米国本土およびアジア、オセアニア地域からのアクセスにも優れている。(だからこそ重要な軍事拠点でもある)
こうした基本的な素性は、先天的なものであり、後の努力で克服できるものでは無く、非常に重要である。
2.地域開発における高い戦略性
次に、地域開発において戦略的な取り組みがなされていたことが挙げられる。現在のワイキキエリアは、一部(例えば現ヒルトンは王族系のお屋敷跡)をのぞけば、適地とは言い難い状態であり、湿地帯であったと聞く。また、ビーチももともとは小さいビーチが点在していた(だから名称が分かれている)に過ぎない。
これを現在のような形に作り替えることが出来たのは、高い戦略性があったからと言える。
また、元々の居住区であるダウンタウン、軍事拠点であるパールシティ、そしてワイキキと各地区の用途純化が行われながら、つかず離れずの距離内にあって、互いに関係を持っている。この点についても、都市の外延化が無秩序に進んでしまう日本とは大きな違いである。
3.高い革新性
このようにできあがった地区であるが、活力が落ちてきたとなれば、再開発にも積極的に取り組んでいる。
具体的には、90年代半ばに息切れ感のでたワイキキではまず、行政が歩道やビーチ周辺などの公共施設をリニューアルすると同時に新たな景観ビジョンを打ち出した。これにあわせ、民間企業に対し免税措置をあたえ、整備を促した結果、多くの民間企業が「これを機会に」と再開発やリニューアルに乗り出しつつある。これは新たな投資がワイキキに発生することを示しており、新しい活力が得られるものと思われる。`既存の開発地でありながら、柔軟にリニューアルが進んでいる点は注目されよう。
4.産学官の連携、役割分担の実現
前項でも述べたが、ワイキキでは民間と行政との連携が非常に巧妙である。行政が「民間が投資しやすい状況」をつくることで、民間が新たな動きをしやすいようにしている。その一方で、民間が暴走しないように各種の規制を行っているようだ。事業のパーミット制や、タイムシェアコンドミニアムに関する法規制などの話が良く出る。
更に、ハワイ大学の存在も小さくないだろう。大学は、知識の提供はもちろんのこと、若く優秀な労働力の提供元ともなる。
戦略的な取り組みの背景には大学による頭脳と労働力の提供も関係しているものと思われる。
5.マクロ的な視点から地味でも必要なことは実施
5点目として、地味なことでもマクロ的な視点から見て必要なことは厳守しているという事を挙げておく。具体的には、清潔感と治安の確保である。双方とも、確保しておくことが求められるものだが、その取り組み自体が富を生むわけではない。マクロ的、間接的な中で効いてみるものである。そのため、「やるべきだと言うことはわかっているけど」というようになりがちである。実際、国内の観光地で「地域を清潔に保つ」ために予算を組んでいるところがあるだろうか。
例えば、ワイキキビーチには交番がある。さらに、ちょっと「やばそうな」雰囲気のあるところにはパトカーが留まっているのを何度も見ている。(こういう展開が出来るのも、地域が外延化せず集約されているからでもある)
ビーチでは、定期的に金属感知器を持って係員が巡回に回り、ゴミ箱が要所に用意されゴミの散在などは無い。(一方で、ビーチでの飲酒を禁止するなど、利用者に対する制限もかけている。)
以上、ハワイ(ワイキキ)の魅力について考察を行ってみた。
この整理は、オアフ島の一部だけをみての感想であり、事実上、ワイキキに限定したものである。
日曜日から離島にも赴くので、機会があれば、それらをふまえた整理を改めて行ってみたい。

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