現在、国内の宿泊観光旅行は減少傾向にある。こうした背景に、国民の嗜好が「多様化」したことがあると言われることが多い。
ただ、ここで言われる「多様化」とは何か?
「化」という位だから、以前の状況から、新しい状況に「変化している途上」ということだが…。
多様化には3つがある。
1つは、旅行参加者が「多様化」したということ。60年代は団体&男性主体であったのが、現在では、老若男女だれでもが旅行に行けるようなっている。ただ、この変化は、すでに終息し、これ以上、多様化は進展しない。
2つめは、活動内容が「多様化」したということ。従来のいわゆる物見遊山型からスキーやゴルフと行ったスポーツ、レジャー、近年のニューツーリズムというように、観光旅行の中身は多様化を進んでいる。この多様化は、現在も進行中。
3つめは、対象となる観光地が多様化したこと。従来は、風光明媚な地域や温泉地だけが観光地であったが、現在では、ほぼ全ての地域が「観光地」になり得る状態となっている。この多様化も、現在進行中であるが、概ね先が見える状態となっている。
以上のように考えると、実のところ、多様「化」といっても、現在進行中であるのは、活動内容の多様化のみといえる。この多様化が、1人が複数の活動を実施することでの多様化なら、市場規模は拡大するのであるが、実際に生じているのは、多様化=細分化という減少である。
財団法人日本交通公社の黒須主任研究員のコラム「http://www.jtb.or.jp/investigation /index.php?content_id=165」でも触れられているが、様々な活動においてその総量、参加人口は減少傾向にある一方で、各活動を実施している「現役層」の活動量は増加する傾向にあるのである。
このことは、いろいろな示唆を与えている。例えば、既存市場(現役層)の死守、セグメントマーケティングの限界など。

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