本日、二度目の投稿となります。
読み進めてきました「HANDBOOK OF CUSTOMER SATISFACTION AND LOYALTY MEASUREMENT」を読了しました。いやぁ、土地勘のある分野とは言え、280ページの英書を読むのはきつかったです。
さて、最後の3チャプターをまとめておきます。

Chapter.14 MEASURING LOYALTY

ロイヤリティを測るには、さまざまな視点がありますが、ここでは以下のようなものがあげられています。

Customer retention

顧客がどの程度、離反せずに、顧客のままでいてくれているかですね。

  • 1つは、実際に顧客がどの程度戻ってきてくれているのかを把握する。->これは、顧客を1人1人、識別する必要があるので、観光分野では難しいですね。
  • もうひとつは再来訪意向を聞いておく。->これは、我々も行っている手法。

Share of wallet

次にあげられているのが、財布のシェア。つまり、どの程度、消費を自分たちに対してしてくれているか。という視点からみるもの。
ここも同様に2つのやり方があげられています。

  • 顧客1人あたりの平均消費額の推移を見て、それがあがっていれば、シェアがあがっていると考える。->旅行の場合には、回数があがるにつれ消費額が下がることもあるので、少々、悩ましい。
  • 顧客にシェアを聴く。でも、顧客もそんなシェアは意識していないので解らないだろうから、うちに来るとき、どの程度の頻度で他の店を比較しているのかを聞くなどする。(クレジットカードの利用率を聞く事例が載っていたが、理解できなかった)->実際にはちょっと厳しいですねぇ。観光の場合には、回数も限られていますから、平均的な旅行回数を聞いておいて、当地に来訪する頻度を尋ねたほうがよいかも知れない。

Recommendation

紹介意向もロイヤリティを測る視点であると指摘されている。
確かに。今まで、紹介意向は、総合満足度と同じような意味合いで捉えていたが、先ほどの再来訪意向とあわせ、顧客がその地域に対してどの程度、コミットメントを持っているのかを測る指標になりますね。

Accessibility of alternatives

他の事業者などに切り替えてしまう可能性、意識の高さ/低さを尋ね、ロイヤリティのひとつの尺度とするもの。
Taking all factors into consideration, how easy would it be for you to use an alternative…?
などと質問することが事例としてあがっている。
この考えは面白いのだが、観光の場合、特に宿泊旅行であれば、顧客側はかなり高い選択権をもっているため、このままでは使えない。

Attraction of alternative

前項に近いが、比較対照やIFをいれて、より具体的、かつ、わかりやすく反応を見ようというもの。
例えば、以下のような質問をしてみる。
When buying service, which other suppliers would you consider?
これによって、比較対象があったのか、あった場合には、どこなのかを取得する。さらに、それらの比較先の中で、「Compared with other supp;iers that you use, how would you rate…?」といった質問を行い、相対的な強さ、弱さを取得し、ロイヤリティの尺度とする。
また、IFについては、例えば、以下のような質問。
If you could turn the clock back to the time when you first bought service, would you choose XXXX again?
前者の比較対象は、観光でも大いに使えるだろう。後者については、趣旨はわかるが、観光では少々使いにくいように思う。

Loyalty profit & Loyalty segmentation

以上のような、視点、切り口を下に、顧客のロイヤリティを数量化し、それでもって、区分を行う。
数量化については、具体的には、前述したような視点、切り口から適切なものを複数選び、満足度の点数化のようなやり方で数量化することが指摘されている。
例えば、我々の場合、再来訪意向と紹介意向はすでに取得済みであるから、それらを足し合わせることで、顧客のロイヤリティの高さをクラス分けすることが可能となる。
昨日のCIもそうだが、こういう指標を作るのはうまいですね。
また、いわゆる発地調査で、「観光地への来訪経験」「その観光地への再来訪意向」「その観光地の他者への紹介意向」を取得し、同様の指標化を行えば、「どういった観光地がよりコミットメントの高い顧客を有しているのか」「コミットメントの高い顧客と観光地のタイプなどの関係はあるのか」といったことも整理できますね。
前者の情報は、いわゆるベストプラクティスにつなげていけますし、後者は、観光地におけるロイヤリティの作られ方、特性といったものを整理できるようになります。機会があれば、チャレンジしたいですね。

Chapter15.MODELLING AND FORECASTING

本章は、ロイヤリティとか満足度をどのようにモデリングするのか、今後の推移を予測するのか。という話題を扱っています。
まず、forecastingには、2つの手法しかないと述べ、一つは、Trend Extraploation(過去の推移からの予測)、もうひとつはScenario Modellingだと。
個人的には、Scenario Modellingについても話を聞きたかったのですが、残念ながら、本書では、前者しか詳細は述べられていません。
前者については、その後、掘り下げられていきますが、最終的には、我々が現在やっているのと同じ、「関連しそうなデータを集めてきて」「重回帰分析にかける」という例が挙げられています。
本書は、教科書ということもあり、モデル化については、基本レベルまでが限界ということでしょうか。
ただ、満足度とロイヤリティの関係が直線ではなく、二次曲線で例示されていたのは、納得です。

Chapter16.MAXIMAIZING THE BENEFITS

本章の題名は、直訳では利益の最大化ですが、最終章でもあるので、内容は、ここまでやってきた成果を、どのように持続的に実践していくのか、また、さらに分析分野を広げるとすればどういった手法があるのか。といったことが整理されています。

How often to survey? & Using more than type of survey

実践面については、「self-completion(自身で回答するアンケート)」の問題点が3つ挙げられています。

  1. 調査票が小さく多くのことは聞けないこと
  2. その場での状況に左右される回答のため、総合的な評価とはなりにくいこと
  3. サンプリングが偏ること

いやぁ。耳の痛い話です。
ただ、本書でも実際問題として、調査を持続していくためには、この手のself-completionを使っていくことは有効であるという認識を示していて、その信頼性を高めるために、補完的にちゃんとした調査(ホテルであればフォーカスグループ)を実施し、調査項目の見直しや、結果の捉え方を補正することを提案しています。
この辺については、まさしく、そのとおりだと思いますね。

Other cutomer satisfaction indicators

最後に、ここまでやってきたようなインタビューやアンケートを主体としたものではない、調査手法が例示されています。

  • INTERNAL BENCHMARKING 自分たちのサービス(商品仕様)などの事実としての情報を他者と比較する。例えば、受付の待ち時間とか。
  • MYSTERY SHOPPING 小売店ではもっとも使われている。とされています。覆面調査員が実際に客としてその店を訪れチェックするもの
  • COMPLAINTS 会社に寄せられる不平、不満を整理するもの
  • CUTOMER RETENTION INDICATORS 顧客がどれだけ維持されているかを数量化して評価するもの

ただし、これらはCSに代替するものではなく、併用することは考えるべきだけど、CSを捨ててはいけないよ。という言葉で占められています。

全体を通じた感想

HANDBOOK、教科書ということもあり、概念的な話や原理的な話が少なくありませんが、経営の立場から、CSとは、ロイヤリティとはどういったものであり、経営につなげていくためには、どういった取り組みが必要なのかといったことを、全体としてきっちりと纏め上げているところは、さすがという印象です。
つまり、調査のための調査となってしまったり、技術論にはしったり、特徴的な部分だけを断片的に描いたりということになっておらず、はじめに目的が明示され、その目的達成の手段が落とし込まれているという印象です。
この辺は、国内で出ているCS系の本と違う印象ですね。
また、読み手によって、製造業でもサービス業でも使えるように意識しているのではないかとも感じました。事例の出し方、論点の進め方など、私はサービス業の視点で読み進めましたが、内容的には、製造業の視点でも読み進められるものでした。
この辺の作り方も、興味深いですね。
さて、これで一冊終わりましたが。まだ、2冊残ってます。うち、1冊は1/4ほど読んではいますが。
あまり基礎勉強に時間をかけるのも何なので、ちょっとペースをあげていきたいと思います。

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