昨日のブログでは、限られたリソースの中では、相互に比較できる指標をつくって、それで相対比較をしないと議論が進まないという事を指摘しました。そして、その指標には、なんだかんだ言っても、経済価値が好適なのだろうという指摘もしました。
これは、結局の所、「経済価値」が伸びなければ、どんどん、苦しい社会となっていってしまうためです。
現在の日本は、もう、どこにも、パトロンがいない。どこにも余剰はないのですから、それは、とてもギスギスした社会となります。
逆に、経済価値が伸びているときには、各所に余裕が生じるので、なぁなぁでもやっていけるわけです。
以前、読んだコラムで、興味を引いたものがありました。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20091001/206099/?P=1
農耕ではなく、狩猟型が、人類にとっての「理想」の生活スタイルであったというのは、「アリとキリギリス」の寓話を引き合いに出すまでもなく、まぁ、確かにそのとおりでしょうね。
ある一定規模に、人口が増加してしまったために、農耕型に転向せざる得なかった。
農耕は、個人では出来ず、団体で行う必要があるし、一つの土地に縛られるから、窮屈な社会が創造されたということですね。
ただ、このコラムでは触れていませんが、農耕型への転向によって、より多くの人、いわゆる弱者でも生存が可能になったという点はあるでしょう。狩猟型では、例えば、けがをして力作業が出来なくなれば、生活していくこと自体が困難になりますが、農耕型であれば、例えば、農機具の整備をするとか、料理とか清掃活動を担うとかで、集団の中で、食い扶持を確保していくことが出来るわけですから。つまり、生存の軸が多軸になるということですね。(それが、また、人口増大を生むわけですが)
私は以前、「農耕型に転換する観光振興」という研究コラムを投稿しています。
http://www.jtb.or.jp/investigation/index.php?content_id=122
理想の生活というか、楽なのは、狩猟型なのです。ただ、人口が増える(観光の場合は、観光に乗り出す地域が「国際的に」増える)一方で、食料(観光の場合は観光需要)が伸びなければ、好むと好まざるとに寄らず、農耕型に転向せざる得なくなるわけです。
もう一つ。紹介したコラムにおいて「マルサスの罠 」という言葉が気になりました。ぐぐってみると、以下のサイトにたどりつきました。
http://www.econ.mita.keio.ac.jp/staff/tets/kougi/poverty/chap2.htm
これも、なかなかに示唆に富んでいますね。長文なので、読んでいるうちに疲れてきますが、「人口が増えるほど、食料は増えないのだから、閉鎖系の社会では、結局、皆が貧乏になる」というのは、とてもわかりやすい。
日本では、今、格差議論が盛んで、資本家が搾取するから、労働者が困窮する。とか、企業がひっぱらなければ、日本自体がもたない。とか言われています。さらに、少子高齢化とか人口減少がそれに拍車をかけているとされています。しかし、実のところ、「食料」、この場合は「経済価値が増えない」ことが最大の要因でしょう。
というのは、GDPの推移をみれば、歴然です。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091027/191511/01.gif
例えば、少子高齢化や人口減少は、確かに、大きな社会問題ですが、GDPは、そうした社会問題が顕在化する以前から「横ばい」になってしまっているわけです。つまり、原因というよりは、結果の一つと考える方が適切でしょう。
GDPの伸びが止まったことで、日本は、構造的に、「皆が貧乏になる」という状況に陥っているわけです。人口減少は、ある意味、その構造的な問題を解決するための、本能的な動きなのかもしれません。まさしく、「マルサスの罠」に陥っているわけです。
前述の記事では、「難民」についても、触れていますが、人口の流動性が高い社会であれば、本来、こうした状況になると、移民が出てくるわけです。国内でも、70年代くらいまでは「出稼ぎ」がかなり一般的でしたよね。剰余の食料(資金)があるところに、人が移動するわけです。現在の日本では、海外がその対象地になりそうですが、それも起きていない。これは、いくら貧乏になったとはいえ、海外よりはまだ、高い水準にあると考えているからかもしれませんし、海外に出る障壁が高いからかもしれません。
話が大きくなりました。観光に話を戻すと、観光需要の総量が増えない中で、皆が観光振興に乗り出せば、皆が貧乏になるというのが、おそらく成立するのでしょう。もちろん、その中で、格差はあって、一部の地域が高いシェアを持つようになり、さらに、多くの地域の貧乏度が際立つということにもなります。インバウンドなどは、まさに、パレート法則が成立していることを確認しています。
これを根本的に打破するには、観光需要を増やすしかありません。国内は展望が見えませんから、やはり、インバウンドしかないでしょう。つまり、難民化するのではない形で、閉鎖系の社会を開放系に切り替えるわけです。
うまく、開放系に切り替えられると、その地域は、当分のあいだ、また、狩猟型でいけるかもしれません。ただ、国際的な競争もありますから、早晩、農耕型に切り替えていくことが求められるとは思いますが、一息はつけます。
農耕型に移行すること
閉鎖系社会から開放系社会へと転換すること
この2つは、観光においても重要なのではないでしょうかね。