今日は、「観光マーケティングではなく、観光地マーケティングを導入し、顧客とのコミュニケーションを確立すること」について、整理をしてみましょう。
マーケティングとはなんぞや。という話は、それだけでも、一つの大きなテーマになってしまいますし、その筋の文献も多々出ていますので、ここでは割愛します。
ここでは、「観光マーケティング」と「観光地マーケティング」の違いを取り上げます。
両者は、一字違いですが、私は大きな違いがあると思っています。
端的に言えば、前者は、旅行会社のマーケティングであり、後者は、観光地の観光協会(CVB、DMO)のマーケティングという違いになります。
例えば、私が所属している組織では、年に一回、全国の人たちを対象に旅行に関する幅広い意識調査を行い、その結果を、書籍としてとりまとめて発表しています。
http://www.jtb.or.jp/publishing/index.php?content_id=7
これは、観光系の調査としては、その規模も大きく、かつ、毎年実施してますので、経年変化などもたどりやすいものです。実際、私も、調査研究活動において、このデータは良く活用しています。
ただ、これのみを使って、各観光地が観光計画、マーケティングを検討できるか?と言われれば、Noと言わざるを得ません。
なぜかといえば、この調査は、日本人が、どういった旅行をしているのか、嗜好しているのかといった事はわかりますが、それは発地を対象としたものであり、着地から見たものとはなっていないからです。
バブル期までの、市場拡大期には、発地の情報をウォッチし、その最新動向にあわせて対応していく事が、集客を増やしていくのに好適でした。例えば、「女性が旅行し始めている」と聞けば、女性向けのプランを作れば、かなりの確率で集客することが出来ました。この時代までは、観光マーケティングで、観光地マーケティングを代用できたと言えます。
しかしながら、現在のように、市場が横ばい、縮小になってしまうと、発地において「はやっている」「新しい動き」というのが、必ずしも、着地には反映されません。なぜなら、そうした動きは、全体の市場規模からみれば非常に小さいものであるからです。例えば、現在、各所で注目されている「食」について見てみると、グルメ旅行は、概ね4%代にとどまっています。実際には、この4%は、観光地によって大きな違いが出てきます(パレート法則)から、食の魅力を高めても、それが具体的に目に見える、インパクトのあるレベルにまで集客に繋がる例は非常に少ないと考えて良いでしょう。
もう一つは、希望と実態に大きな乖離があるためです。「食」で言えば、「やってみたい旅行」では、40%代と、実態のほぼ10倍の比率を持っています。また、同調査では、例年、「温泉」が「やってみたい旅行」のトップとなりますが、その人気があるはずの「温泉旅館」「温泉地」が疲弊している実態があります。
このように、発地での市場全体を俯瞰した「希望率」の高さや、一部の地域での成功事例によって「○○は有望だ」に見えたとしても、そのことと、自分の施設(地域)において「○○が重要」とは限らないのです。
自分の地域と、その成功事例とでは、持っている資源(立地を含む)が違うのですから。
現在のような、「全体の伸び率」に依存した集客が出来ない状態においては、相対的な競合相手との関係の中で、自らの魅力で、自らの顧客を独自に引き寄せていくことが必要です。つまりは、「自分の地域」と「顧客」と「競合相手」の3つの要素を、総合的に把握、検討して、なすべきマーケティングを検討していくことが必要です。すなわち、
自分の地域の事を知り(リソーシング)
自分にあった顧客のことを知り(ターゲッティング)
競合相手のことを知る(ポジショニング)
の3つの取り組みが、基本として重要だと言うことです。
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