2021年4月5日、大阪府にまん延防止等重点措置(以下、マンボウ)が適用。つられて、東京都も4月12日よりマンボウ適用となった。

大阪府では3月1日に解除されていた2回目の緊急事態宣言から、一ヶ月あまりでの事実上の再発出となる。

この背景には、3月中旬からの感染拡大がある。そして、この感染拡大はイギリス株と呼ばれる変異株が原因というのが、もっぱらの理由とされる。

ただ、変異株が主因だとすれば、大阪府だけ異常に感染拡大しているのはおかしい。そもそも、海外で発生した変異株が海を超えて日本に入ってきたのに、大阪府内だけに変異株がとどまっていると考えるのは、非合理的だからだ。

そこで、東京都と大阪府の感染状況の推移を比較してみると、両者は、ほとんどシンクロしていることがわかる。

東京都と大阪府では、気象条件に大きく違いはないから、平均水蒸気圧と感染拡大傾向の関係で考えれば、当然といえば、当然の推移だろう。

ただ、両地域で大きく異った傾向となっているところが3つある。1つは10月下旬から11月上旬、もう1つは12月の下旬、そして、3月中旬以降である。

感染拡大傾向は、気象条件だけでなく、人出によっても影響を受ける。そこで、人出をグーグルのデータ(商業施設の人の数)と、感染拡大傾向との突き合わせを行うと、以下のようになる。なお、REDは12月に大阪府が発出したレッド・ステージを示す。

これを見ると、大阪府の場合、行動量が-20%(昨年の年初時期との相対値)を上回ると、感染が急拡大する傾向にあることがわかる。11月の乖離も、3月中旬からの乖離も、この感染拡大パターンの延長線上にある。

ただ、12月中旬の乖離(大阪府のほうが低い)のは、レッド・ステージ期に相当するが、外出量は−20%〜−10%であり、大きな違いはない。というか、大阪府の場合、緊急事態宣言時以外では、外出量は−20%〜−10%の範囲に概ねとどまっている。

大阪府の感染拡大は、絶対的な外出量ではなく、気象条件や、出かけた先での行動が大きな影響を持っていることを示している。

一方で、東京都の場合、緊急事態宣言時でなくても、外出量は-30%〜-15%に分散しており、-20%以上に外出量が増えた時でも、大阪府のような急拡大は起きておらず、2W前比は概ね1.7以下に収まっている。

前述したように、東京都と大阪府で気象条件に大きな違いはないから、感染拡大傾向の違いは、その他の要因となる。現時点では、変異株が原因とされているが、この結果を見る限り、もともと、大阪府ではピーキーに感染拡大しやすい要素を持っていると考えるほうが適切だろう。

大阪府での急拡大をうけて、東京都でもマンボウ発動となったが、両者の感染拡大の構造には違いがあり、必ずしも、大阪府の後を東京都が追うわけではない。昨年春によく流布した「NYCは、3週間後の東京の姿」という言説に近いものがある。

ただ、東京都でも、当面の間は2W前比は1.3〜1.5程度で推移するので、陽性者数のベースラインを下げるために、マンボウ発動をすること自体は、一つの選択だと考えている。かつてのNYCのように、大阪府の状況を使って、過大に危機を煽るのは止めて欲しいということだ。

平均水蒸気圧と外出量の関係

このように、外出量が感染拡大傾向とも関係することを考えると、気になるのが、同じく関係が確認されている平均水蒸気圧と外出量は、どのような関係にあるのか?ということになる。

そこで、平均水蒸気圧と外出量の関係を見てみると、以下のようになる。

東京都も大阪府も、ほぼ同じ傾向を示している。つまり、平均水蒸気圧が増えれば、外出量は減少し、平均水蒸気圧が減るについて外出量は増大するという関係にある。さらに、緊急事態宣言時は、平均水蒸気圧に関係なく大きく外出量が減少する。

この解釈は、いくつか考えられるが、平均水蒸気圧が高いということは、空気中の水分が多いということであり、端的に言えば「天気が悪い」。天気が悪ければ、外出する人も減る。ということなのだろう。

仮にその解釈が正しいとすれば、平均水蒸気圧は、ウィルスの飛翔(飛沫感染)を制限するだけでなく、人々の行動すらも動かすことになる。「平均水蒸気圧」恐るべし…だが、欧州のように乾燥して過ごしやすい地域での感染が拡大しやすいことの説明にもなる。

日常的な行動が重要

ウィルスも環境が生み出した産物ではあるが、それが感染拡大するのか否かということについても自然環境が強く影響するということなのだろう。

総体的な人出、外出は、一つの変数とはなるが、大阪府のように、同様の人出であっても、感染拡大傾向が大きく異ることは、最終的に人と人が接触する、コミュニケーションするという極めてミクロな世界での振る舞いが強く影響するということだろう。

このことは、感染拡大防止の対策として、一律で行動制限をかけることの、非効率性を示すものであると同時に、感染のリスクは、生活の各所に潜んでいることを示すものでもある。

感染拡大を効果的に抑制していくためには、地域での生活習慣、コミュニケーション形態などを踏まえ、それぞれの地域で対策を検討していくことが重要となるだろう。

Share

「東京都と大阪府のCOVID-19感染拡大傾向の違い」に1件のコメントがあります

コメントは受け付けていません。