にわかに「政治課題」となった少子化問題。

この問題の原因を、経済問題とする論調は多い。特に、2000年代始めに起きた非正規雇用の拡大が指摘される場合が少なくない。

ただ、少子化は、団塊Jr.以降となる1980年代には顕在化していた問題であり、さらに言えば、日本だけでなく先進国の多くで生じている問題。なので、2000年代の非正規雇用拡大に理由を求めるのは無理がある。統計上、以下も非正規雇用者数は増大中のため、それと関連付けて行うことも多い。

では、非正規雇用は、どうなっているのか。

総務省の「労働力調査」「労働力調査特別調査(2001年以前)」より、長期レンジで見てみよう。

これを見ると、確かに非正規雇用の人数は増加傾向にある。特に、男性は非正規雇用が拡大された2000年代初頭に、グンと伸びているのがわかる。

ただ、年代に注目すると25-34歳、35−44歳は、男女ともに2000年代以降、増えておらず、むしろ減少傾向にある。増大しているのは、男性では65歳以上、女性では45歳以上である。

 次に、非正規雇用者が、全体の雇用者に占める割合を見てみると、比率が増えているのが男女ともに、65歳以上のみ。男性の35−54歳は横ばいだが、その他の年代・性別では2010年代には、むしろ減少傾向にある。

1990年代まで25-34歳の男性での非正規雇用者比率は5%程度だったのが、2000年代以降、15%程度にまで高まったことや、34−54歳も同様に3%程度から9%まで高まったことは、自由化の影響と言える。

ただ、非正規雇用が近年も増えているのは、高齢化の問題だということだ。

65歳以上でも働かなければならない…というのは、経済問題であると言えるが、少なくても少子化の問題ではない。

なお、正規雇用者の推移は、以下のとおり。

やはり男性の正規雇用は、2000年代始めに減っている。が、その後は、基本的に横ばい。女性についていえば、どんどん増えている状態にある。つまり、女性の非正規雇用者比率が低下したのは、正規雇用者数が増えたことが原因。

これは、男女共同参画と、経済のサービス化によって、女性の就労環境が改善され、職場が増えてきたためだと考えられる。

こうしてみてみると、男性は確かに自由化の影響を受けた。が、それは20年前に起きたことであり、それ以降も継続的に非正規雇用が進んできた訳では無いし、正規雇用が減少し続けたわけでもない。

また、その男性は54歳以下の非正規雇用者数は約200万人。対して、正規雇用者数は約1800万人。つまり、非正規雇用者は全体の約10%だ。圧倒的に多い…という話ではない。

むしろ、問題は女性。54歳以下の非正規雇用者数は約800万人。対して、正規雇用者数は約920万人。つまり半数弱が非正規雇用。正規雇用者数が増えてきているとは言え、改善余地は大いにあるだろう。

時系列的に生じている変化は、様々。本来は因果関係の無いものでも、同じように時系列的な変化をしていると相関関係が生じてしまう。これは、時系列分析をする際に、十分、注意しなければならないことである。「同じように変化しているから」という考察には留意したい。

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