昨日の続きになります。
観光マーケティングを観光地マーケティングとして使ってしまっている多くの地域(ディスティネーション)において、決定的にかけているのが「ポジショニング」です。
前述したように、観光マーケティングが、もともと、発地側のマーケティング手法だからです。発地側では、ディスティネーションは、海外も含めて多量の選択肢から選択が可能ですから、ディスティネーションは、リソーシングに相当します。なお、観光マーケティングの場合のポジショニングとは、旅行会社としての相対的な関係になります。
観光地マーケティングの場合、自身を置き換えることは出来ないわけですから、リソーシングは、自地域内のものに限定されます(周辺地域との連携といったことはあります)。さらに、時間や費用の制約を考えれば、自らが持つ資源を簡単に増大させたり、上質化させたりすることは、容易ではありません。
複数のディスティネーションから、自由に選択が出来る旅行会社とは、根本的に異なるのです。
さらに、CVB、DMOといえども、地域にある観光系資源を自由自在に使えるわけではありません。
例えば、オーランドの場合、圧倒的に強い集客力を持つWDWが存在します。さらに、ユニバーサルスタジオや、シーワールド、そして、多様な小規模テーマパークが多量に存在します。また、ホテルもデラックスクラスからバリュークラスまで多種多様。と、まぁ、ディスティネーションとしては、とても恵まれているわけですが、民間企業は、それぞれ自らの戦略を持って経営をしているわけですから、CVBが左右できるわけではありません。
CVBは、個別の企業の取り組みでは実現することが困難だが、それを行う事で、産業の活性化、各企業の活性化に繋がるようなことが主たる取り組みとなります。
例えば、地域に来訪する人々や発地に対するマーケティング・リサーチは、多額の費用と知見が必要となります。もちろん、各企業への来訪顧客に対する各種調査は、各企業の問題ですが、ホテルであれば、ホテル客のことは解っても、テーマパーク客のことは解りません。レストランも、自身の客の事は解っても、地域の動向については解りません。さらに、世界中のどこに、自地域や自施設にあった顧客が居るのかについても把握する事は困難です。
一方で、CVBがそうした情報を集め、地域の状況に合わせて的確な分析を行い、地域としてのプロモーション・ミックスや、各施設へのフィードバックを行っていくことは、各施設との相乗的な連携を可能とし、集客力をあげていくことにつながります。言い方を変えれば、そうした取り組みがCVBには求められることになります。
さらに、コンベンションホールに代表される「多額の投資」が必要だが、中長期的に地域への集客力増大が期待できるような施設の場合、その建設だけでなく、その後の、稼働確保、それも、ホスピタリティ産業の発展に寄与するように稼働率を上げていく事が求められます。
このように、CVBは、自らの裁量の中で、自らが考え、自らで意志決定を行い、自らで地域に顧客を呼び込んでいくことが求められるのです。
ところで、オーランドCVBは、宿泊税が、その活動資金となっています。そのため、潤沢な資金が安定的に確保されていますが、その分、投入された資金に見合う活動成果を証明することが求められています。ここでは、経験や勘といったものは通用しません。甘い予測、憶測に基づいた計画が出されれば、容赦なく非難されることになります。合理的な理由、定量的な分析が必要です。
結果、オーランドCVBは、全米でも随一の観光地マーケティング力を誇り、非WDW領域においても、大きな成果を上げてきています。資金が先か、知見が先かという議論はありますが、限られた資金であればこそ、その活用策について、「自分でちゃんと考える」ことが必要なのではないでしょうか。