10年前を振り返ると
○Windows95の登場直後(日本でのWindows95の登場は1995年末)
○日本において、やっと「社内LAN」が可能に
○(民間利用)インターネットがはじまったばかり
つまり、ITは、
○ワープロや表計算を「単体」で行うOA(パソコン自体は80年代からあった)
から
○多くの人が参加できるインターネット(WAN)&LANによるネットワーク(Windows95以前のパソコンは一部の人しか操作できなかったし、ネットワークも構築できなかった)
へ、この10年で領域を大幅に拡大した。
この結果として、何が起きたか。
○ホームページや、メール、携帯電話の普及によって、人々の情報収集、交換、コミュニケーションの形態が大きく変化した
○こうした「顧客」の変化をふまえ、インターネットを前提とした新しいビジネスモデルを持った、いわゆる「ニューエコノミー」が登場した。
○「ニューエコノミー」の台頭に対抗して「オールドエコノミー」においても業態変化が生じ、産業構造、社会構造が大きく変化した。
産業構造、社会構造の変化はIT以外の要素(経済環境など)とも関係するため明言は難しいが、ここでは2点挙げる。
1つは、重層的な構造から、フラットな構造への変化である。いわゆる中抜きが象徴的であるが、単なる流通変革だけでなく、消費者(顧客)側が供給側に比肩するだけの情報を持ち、意志決定するようになった、つまり、供給側と需要側の関係そのものが変化した。
次に、事業体の規模と業績との比例関係が弱まったことである。ニューエコノミー(変革されたオールドエコノミーを含む)の特徴として、投入している経営資源(≒事業体の規模)に比して、生み出す経済価値が多大(乗数が大きい)であることが挙げられる。
これはデリバティブなどの金融工学とニューエコノミーとが密接に関係していることもあるが、規模を前提とした労働集約型や資本集約型ではなく、効率を前提とした「知識集約型」がITと組み合わされたことで、具現化された形態と考えられる。
■「システム」の意味合い変化
また、この状況変化の中で「コンピューターシステム」の意味合いも変化した。JTBのトリップスに代表されるように、コンピューターシステムは以前より存在していたが、80年代までは、そのシステムにつなぐことの出来る端末は限定され、かつ、端末間では横の連携が無かった。さらに、端末の処理能力は低く、システムからの出力を再加工したり、他の情報を組み合わせたりすることは出来なかった。そのため、情報をホストコンピューターに全て集約し、整理された結果を効率的に端末に出力することが求められた。つまり、端末(パソコン)では出来ないことを、代理で行う事がシステムの意味であった。
90年代に入り、WAN、LANが普及し、かつ、パソコンの処理能力が向上するとどうなったか。
端末側からみれば、ホストコンピューターに頼らずとも、自身でもかなりの演算、データ処理が可能となった。さらに、インターネットの普及によって、様々な情報が分散的に発信されるようになった。これによって、ホストコンピューターの意義が薄れたが、一方で、端末の処理能力が向上したことによる弊害も出てきた。
それは、端末レベルで実施する業務の種類が増大したことである。以前は、(それこそワープロ専用機というものが大手を振っていたように)端末レベルで行う業務内容は限定されていた。しかしながら、現在は、表計算からグラフ、画像加工、プレゼンテーション、メール、ホームページによる情報収集などなどその範囲は非常に広範囲となっている。ワープロだけに限定しても、自由に文字の大きさが変えられ、色も付けられ、フォントも変えられるようになっており、初歩的なDTPレベルにまで達しているのが現状である。これによって、1つ1つの業務単位の効率性は高まったが、その量が増加したことによって、1 人あたりの負担はむしろ増大したと言えよう。当然、端末を扱う従業員には、これら広範な業務を行う能力、リテラシーが要求されるようにもなっている。
もう一つの視点は、端末同士のコラボレーションである。1台1台の処理能力が向上したことによって、各種の作業が端末で行われる一方で、その成果物は未整理のまま属人的(属端末的)に蓄積され、共有化されない状態となっている。情報そのものは同様でも、個人が占有的に利用できれば良い状態と、組織的に共有して利用できる状態とは別物である。具体的に言えば、前者はエクセルやワードで良いが、後者はアクセスなど「共有化」をふまえた仕組みに入れ込んでやらなければならない。しかしながら、実際には日々の業務の中で、その段階に至ることは難しく、死蔵されることになる。結果として、同様の作業、情報処理が複数の端末(従業員)で実施されてしまう現状を招いている。
こうした状況下における「システム」とは、業務における共通項を洗い出し、その共通項を普遍化し、各端末ではなく、組織として代行・共有することで端末の負担、すなわち従業員の負担を軽減させ、他の業務(多くは創造的な分野)に注力させることが主体となっている。
すなわち、端末でも出来ることを組織としてより効率的に代行し、より端末のパワーを引き出するのがシステムの役割となっている。これによって、「相乗」効果を得ることになる。
これを整理すれば、
1.個々人においてパソコン活用度(情報収集、整理・分析、蓄積、発信)を高め、新規領域(発想)を創造する
2.その上で、共通項的、共有することで価値を生み出すものをシステム化する
3.システム化によって生み出された「時間」や「共有された知恵」を創造的活動に投入する
といったサイクルを構築することが重要と考えられる。

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