昨日のブログでも示したように、最終的な学年末の週を迎え、なんとなく寂しいような感じになっているここUCFです。
リーダーシップの講義も、事実上、今日で終了。明日は試験(私は聴講生なので試験自体は受けません)、最終日の木曜日はその試験結果をもとにした講評というスケジュールになります。
さて、先週から読み始めている論文ですが、私の備忘録も兼ねて整理しておきます。
Have the Perceptions of the Successful Factors for Travel Web Sites Changes Over Time? the Case of Consumers in Hong Kong / Caterine Cheung and Rob Law / Journal of Hospitality & Tourism Research 2009; 33; 438
CS系では無いが、目に付いたので、読んでみた。というもの。
香港の人たちを対象に、旅行会社のWEBの利用状況について整理を行った物。同様の調査を2000年にも実施していて、それとの対比も行っている。結論としては、「利用者は増大している」「年収や学歴が高いほど利用率が高い」「年代では若い人ほど利用率が高い」「WEBサイトに重要な機能は、高速での情報検索(rapid information search)が最も高く、ついで、使いやすい仕組み(user friendly system)、安全な決済の仕組み(secure payment methods)など」「「利用者と予約経験者では、決済の仕組みと、オンライン予約および確認機能(online booking and confirmation)について、予約経験者の注目度が高い」といったこと。
結果については、概ね、納得感が高い。特に、実際の予約・決済につなげるためには、システムとしての安全度と予約の使いやすさが重要であることが改めて認識できる。
Do Chinese cultural values affect cutomer satisfaction/loyalty? / Rui Jin Hoare adn Ken Butcher / International Journal of Contemporary Hpspitality Management Vol20 No2, 2008
中国人としての性質が、レストランの満足度やロイヤリティにどのような影響を与えているのかをテーマにした論文。
過去研究から、中国人の特性として「Face:顔を立てる」「Harmony:和を大事にする」の2つが抽出されており、特に、Faceは男性が、Harmonyは女性が強く意識するとされており、それを、レストランの対応にあてはめて検証してみようという物。
テーマ時代は、先日、ブログに書いた異文化ものであるため面白いし、リサーチャーレビューもそれなりにされてはいるのだが、肝心の調査自体がオーストラリアに来ている中国の留学生にアンケートするというものであり、結論自体は、仮説をうまく検証できるような形にはなっていない。ちょっと尻つぼみ的。
Defining the Hospitality Discipline: a Discussion of Pedagogical and Research Implications / Michael Ottenbacher, Robert Harrington and H.G. Parsa / Journal of Hospitality & Tourism Research 2009: 33; 263
ホスピタリティとは何か。どのように定義できるのか。ということを、過去研究を整理しながら、自身の対案を示した論文。
定量的なアプローチではないが、ホスピタリティという概念が、どのように捉えられてきており、そして、どのような整理が試みられてきたのかについてホスピタリティ・マネジメント系だけでなく、サービス・マーケティング系からの視点も含め整理を行っている大作。
ホスピタリティとはなんぞや。という議論は、日本でもいろいろ行われているが、その言葉を生み出した本国でも、実は、きっちりとした定義は無いのだということが解る論文でもある。また、ホスピタリティとツーリズム(いわゆる観光)との関係についても、ふれられており、こちらでの観光の位置づけも垣間見ることが出来る。
また、この論文を読んでいると、ホスピタリティという概念は確実に存在しており、多くに人たちの頭の中にイメージがあるにもかかわらず、あまりに多様な軸によって構成され1つの集団となっているために、シンプルに定義付けすることは出来ない存在なのだと言うことが、明確に解る。
なお、結論は、タイトルにディスカッションとあるように、示されている対案もいわゆるたたき台という位置づけのようであるが、Core Industryとして、Lodging、Food-service、Leisure、Attractions、Travel、Conventionsをおき、それをドライブさせる(もしくは阻害する)存在として、Academia、Economic&Cultural Forces、Tourism、Socio-Political Forcesの4つを配している。
この論文は、何度か読み返したい論文である。
A focused servie quality, benefits, overall satisfaction and loyalty model for public aquatic centers / Gary Howat, Gary Crilly and Richard McGrath / Managing Leisure 13, 139-161(2008)
プールを主体とした公共のスポーツクラブにおけるサービスクオリティと満足度、ロイヤリティとの関係を対象とした論文。
これも、リサーチャーレビューがしっかりとなされていて、ロイヤリティ、満足度、サービスクオリティに関する既往研究をレビューしつつ、スポーツクラブにおけるサービスクオリティの構成軸(Dimension)を導き出し、それらを仮説として、検証するというスタイルをとっている。その中で、同じスポーツクラブでも、選手育成など専門性の高い所に対し、公共施設では利用者の属性や目的が幅広いことなども考慮して、個人的な達成感(Personal accomplishment)を設問に加えるなどしている。
分析手法は、SPSSのAMOS。共分散構造分析だ。この分析手法は、すでに標準となっているという事だろう。
結果は、サービスクオリティのうち、施設の状態(Facility presentaion)、職員(Personnel)が満足度への影響が高いことが示された。ただ、満足度と紹介意向との相関は高い物の、再来訪意向との相関はさほどではなく、公共施設と言うこともあってかロイヤリティ形成には必ずしも繋がっていないことも示されている。
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この他にも既に取得し、斜め読みをしている論文がいくつかあるが、それらを含め、CS研究について感じているのは以下のような事項である。
- サービスクオリティ、満足度、ロイヤリティの関係性については、概ね確認されている
- ただし、3者は必ずしも密接な関係にあるわけではなく、あまり、相関が見られない場合も少なくない
- そうした誤差を説明するものとして「個人の属性・嗜好(国による違いを含む)」「施設の特殊性(カジュアルなレストラン、クルーズ、公共のサービス施設など)→サービスのディメンジョン設定」「現場での対応力(サービスに間違いが生じた場合の対応策)」などが注目されている
- 分析手法は、これらの仮説についてモデルを組んだ共分散構造分析が一般的。90年代半ばまでは重回帰分析、その後、少しだけ、主成分回帰分析がみられたが、統計パッケージの充実によって共分散構造分析に進んだ模様(これは未確認)
共分散構造分析が主体になったためか、私が日本で取り組んでいた1つ1つの要素と総合満足度との関係が、直線的なのか、曲線的なのかといった「効き方」に注目して、モデルを調整する(誤差を抑える)というのは、近年の研究ではあまり意識されていない感じである。
もともと、こちらでは数量化分析はメジャーではないので、曲線的な効き方をうまく捉えることが出来ないという部分もあるのかもしれない。その代わりに、誤差の原因を、前述したような部分に求めているようである。
ただ、この中での「ディメンジョン」の考え方は、「効き方」に比較的近いところにあるとも考えることができる。
この辺を意識しつつ、知見を深めることが出来れば面白い。