昨日のブログで示したように、私は、もともと「ブランド」という物に対し、あまり、よい印象を持っていなかった。
もちろん、私自身、1人の消費者としては、好きなメーカー、ホテル、旅先といったものは持っているし、その「好き」の背景には、ブランドに属するであろう価値観が含まれている。よって、ブランドが消費者、顧客を獲得し、維持し、単価を上げる事に有効であるということは、否定しない。
私が、良い印象を持っていなかったのは、その「ブランド」の作り方に関してである。
ネットで、「観光 ブランド」といったキーワードで検索してみれば解るが、本件は、多くの地域で取り組まれている。
しかしながら、その中身は「名前を知らしめる」ということに偏在した取り組みとなっていることが多いように感じる。わかりやすいキャッチコピーをつくる、親しみやすいロゴをつくる、各所でそれらを露出させる。といったことだ。
確かに、知られていなければ、購買にはつながらないわけだから、必要な取り組みではある。
しかしながら、これらは言ってみれば、単に知名度を高める取り組みに過ぎない。現在のような成熟市場において、少々、「知名度」を高めたところで、どれほどの意味があるのだろう。そもそも、東京圏など、多量な情報が流通している中で知名度を高めることは、莫大な費用が必要であり、それに見合うだけの意味があるのだろうか?というのが、私の疑問である。
http://www.resort-jp.com/ppBlog17/index.php?UID=1122626882
で示すように、良い製品、安い価格、そして、知名度だけがあっても、そこに、「需要」が無ければ、物やサービスは売れない時代になっている。
昨日の「伊東園」などは、「安い価格」でやっているじゃないかという話もあるが、そもそも、「豪華でなくて良いから、温泉に入るような旅行を安価にしたい」という需要が先にあり、その上で、抜群の価格競争力を得たことで、顧客を獲得している。
これに対し、残念ながら、各地で行われている「ブランドづくり」は、あまりに重要側への意識が低い取り組みのように感じるのだ。
その「ブランドづくり」は誰のどのような需要に対して、どのような価値を保証するものなのかが見えないのです。
一方で、昨日示したように、こちらでは、ブランドを巧みに創造し、事業活動に活用している。この差は何なのだろうかと。
昨日来、この辺について考えた、一つの結論は、結局の所、セールスとマーケティングの違いとして整理できるのではないだろうかということだ。
ブランドマネジメントの講義の第1回目に「ブランドとは、顧客の心の中に作られる物だ」ということが言われた。これは、CSやロイヤリティとも同様の事であるのだが、サービスを提供する事業者や地域と顧客との相互的なやりとりのなかで顧客の心の中に創造されるものであるということだ。
世の中には、沢山の、様々な価値観を持った人たちがいる。夫婦や恋人、親子であっても意見が相違することは少なくない現実を思えば、こうした人たち全ての心の中に、同じような「ブランド」を創造することは、不可能である。
つまり、ブランドとは、不特定多数の人たちにむけて作り出すモノでは無く、そのサービスや製品に需要が刺激され、信頼感などを寄せてくれるであろう、ごく限れられた人たちの中でだけ作られるモノなのだ。
そうなれば、当然ながら、まず、先にあるのは「相手が誰なのか」「対象となる需要は何なのか」という事になる。
そして、その対象者、需要に向けて、指向性の高い価値を創造し、提供する。
このように、指向性の高い価値を伴ったブランドは、対象外の顧客を事前に排除したり、顧客の期待値を揃えたりすることも可能とする。
コピーやロゴは価値を効果的にその対象者に伝えるための一つの手段に過ぎない。
この辺の主客が入れ替わってしまっていることが、日本でのブランドづくりの弱さなのではないだろうか。