先日、テレビを見ていたら、ウォルマートが薄型TVのCMを流していました。こちらでも、薄型TVの人気は高いらしく、ウォルマートには、ずらっとTVが並んでいます。
そのCMの中で、ソニーやシャープ、または、サムソンとならんで紹介されていたのが「VIZIO」という会社。「それって何?」と思い、調べてみたところ、ファブレス企業として、急躍進してきた会社だったのですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/VIZIO
ファブレス企業自体は、IT系では少なくありません。
生産技術そのものには投資を行わずに、最終の製品に関する果実を取得するというのは、少し、「ずるい」という気がしなくもありません。が、それが顧客から支持をうけているということは、生産技術をもたないからこそ、技術オリエンテッド的な思考から解き放たれ、顧客の立場、視点に立った商品を提供できる。結果として、それが顧客からも支持をうけるのだと考えることが出来ます。
では、ホスピタリティ産業では、製造業に言うところの「ファブレス企業」に相当する企業、業態はあるのだろうかと考えてみました。
まず、思いついたのは「コック(調理人)」。
コックは、食材を作ることはしないですよね。中には、「そばを作るところから始めるそば職人」とか「自分で使う野菜を自家菜園で作っている料理人」という人は居ますが、基本的には、農家や漁民が育てたり、収穫したりした食材を集めてきて、1つの料理を組み立てます。
これは、まさしくファブレス企業ですね。コックが作り出す料理は、レストランの主たる価値を創造するモノですから、レストラン自体がファブレス企業と考えることも出来るでしょう。
次に、思いついたのは、「旅行会社」。
旅行会社も、基本的には、自らホテルや交通機関は所有していません。(所有している旅行会社も存在します)
その上で、各種の観光資源やホテル、交通機関を組み合わせて、旅行商品を構築します。特に、手配旅行ではなく、企画旅行ではその「組み合わせ方」が商品としての価値を大きく左右することになります。
これも、まさしくファブレス企業。
このように考えると、ファブレス企業としての強みと弱みを、そのまま、レストランや旅行会社に当てはめることも出来るのではないでしょうか。
一般的にファブレス企業の強みは、「多額の初期投資(固定的な経費負担)を必要としない」「需要の変動に強い」といったものがあげられます。他方、弱みは、「その素材生産にかかる生産性向上によるコストダウンによるメリットを得にくい」「大量生産品では価値を提示しにくい」ということがあります。
このことは、ファブレス企業というのは、流行の変化が激しい、嗜好的な商品、サービスに適しているが、コモディティ化してしまった商品、サービス分野での対応は難しいということを示しています。顧客に対して、常に、新しい価値を提供し続けなければならないということですね。
ただ、この「新しい価値」というのは、何も、大型であったり、高級であったりする必要はありません。対象となる顧客が「価値」を感じれば良いのです。前述の、VIZIOも、TVそのものが特別高機能な訳ではありません。むしろ、機能をシンプルにしたり、コネクタをわかりやすくなどにして、多機能をもとめない顧客セグメントに価値を提供しています。
ファブを持たない身軽さを、どこまで、顧客志向の取り組みにつなげられるか?がその事業のポイントとなるでしょう。
このように考えると。旅行会社がどこに向かっていくべきなのか。昨今、なぜ、調子が悪いのか。整理できるような気がします。