ネットニュースからの情報ですが、東京モーターショー、入場者数が、当初想定の6割にとどまったとのことですね。
http://www.asahi.com/business/update/1104/TKY200911040335.html
この東京モーターショーは、開催前から、外国メーカーを中心に、出展が見直されるなど厳しい状況でしたが、出展者だけでなく、入場者についても、同様に厳しい結果となったというところでしょうか。
ただ、それでも、上海の60万人とほぼ同じ状態ですし、減少したとはいえ、現在でも、年間の販売台数は世界で第3位にあることを考えれば、外国メーカーの対応は極端なのではないか。という印象も持ちます。
ただ、これは、外国車メーカーが、ある意味、「新規顧客の獲得」を断念したためではないかと考えることもできます。
http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_eco_car-newsales-japan
にあるように、新車の登録台数(≒販売台数)は、どんどん減っています。
さらに、少子化により、絶対的な新規免許取得者が減るなど、需要面でも拡大は期待できません。(取得率も減っているという指摘もあります。未確認)
また、車の保有年数も増大しています。これは、買い換え需要を減少させることになりますが、同時に、顧客が「長く乗り続ける」=「特にその車に不満はない」という意識を持っていることを示していると考えることも出来るでしょう。さらに、定期点検などを通じてディーラーとの接点も増大しますし、その自動車の利用を通じていろいろな「思い出」も一体になってきます。
さて、そうなると、どうなるでしょう。
再購買意識、ロイヤリティは、CSが、主たる因子の一つですが、その他、信頼(トラスト)や、思い入れ(コミットメント)も重要な因子です。
長くなった保有期間の中で、ディーラーが、顧客との間に信頼感を構築することが出来、かつ、その車の利用が所有者のライフステージ変化と密接に関係していくことで、顧客のロイヤリティはとても高まることが予想されます。特に、車に対して思い入れをもって利用する顧客においては、そうした意識は顕著なのではないでしょうか。
話を外国車メーカーに戻しましょう。日本の場合、日本車の製品としての品質は抜群に高いですから、もともと、外国車、輸入車というは、単なる日用品ではなく、嗜好品の範疇となります。(これが、米国の場合、下駄代わりに乗るなら、日本車や韓国車の方が、国産より適しているのですが)
つまり、外国車メーカーにとっての顧客は、「自動車を下駄ではなく、自己実現の1つの手段として考えてくれる」ような顧客が対象となります。
でも、そうした顧客は、前述したような背景を考えれば、「すでに、どこかしらのメーカーに対してロイヤリティを持っている」ことが想定できるわけです。
かなり前の話ですが、トヨタの経営陣が以下のような発言をしました。(ソースは覚えていません)
「以前は、他社の小型車で自動車デビューをした顧客も、ライフステージ変化の中で、当社のセダンにスイッチしてくれていた。しかし、現在は、そのままデビュー時の自動車会社を乗り継いでいく傾向が強くなっている。(だから、トヨタも小型車に積極的に取り組む必要がある)」
これの、もっと、極端な例が、外国車メーカーといえましょう。そして、昨今の市場は、こうした傾向をさらに強めていると考えられます。
こうなると、エントリーレベルの車を持たない(日本では展開しない)外国車メーカーにとって、「東京モーターショー」に出展したところで、(賑わいを作ることは出来ても)割高な外国車に関心を持ってくれるような新規顧客を獲得できる確率は限りなく低くなります。
それくらいであれば、そこに投入する費用を、中国のような「これから」の市場へのマーケティング強化、既存のディーラーの強化、既存顧客向けの特別イベントなどに投入した方が、遙かに有意義でしょう。そして、おそらくは、そうした対応を行っているのだと推察します。
以上、外国車メーカーの狙いについて考えてみましたが、こうした事から、観光分野が学ぶべきことはないでしょうか?
私が思うのは、「アフターフォロー」を通じた顧客との関係づくりの重要性です。CSは、現地に来訪したときの対応が全てですが、信頼感や思い入れといったものは、来訪後でも、様々な形で構築していくことが出来、そして、そこで作られた信頼感、思い入れは、地域(施設)と顧客とのつながりをとても強いものとします。
実際、観光の場合、初来訪者とリピーターでは、リピーターの方が、CSが低いという結果も出ています。CSが低いにも関わらず、ロイヤリティは高いのです。これは、サービスクォリティへの評価ではなく、もっと、心理的な部分、サービス提供者とのつながりが、ロイヤリティ意識を左右していることを示しています。
例えば、外国車メーカーが、東京モーターショーへの出展を辞めたように、東京などへの縦断爆撃のようなプロモーションを止め、そのリソースを、こうした関係づくりにつかってみてはどうでしょう。宿泊した人に、季節の便りを送る、専用のメルマガを立ち上げる、地場の産品を特別価格で販売する、様々な手段が考えられると思います。
観光のように、対象者がどうしても多量になってしまう分野においては、ネットの活用は、とても重要でしょう。ただ、対象者によっては、逆効果になる場合もありますから、この辺は、それぞれで検討が必要でしょうね。
なお、実は、どういったタイミングで関係づくりをおこなっていくのが有効なのか。ということをテーマにした論文も存在します。(いや、まぁ、なんでもあるのです)