ここ数日、「オーランド滞在」とは関係の無いネタが並んでいますが。まぁ、3回シリーズと言うことで、今日は、旅行会社最終回。
近年、当たり前になってきているネット系旅行会社について、考えて見ましょう。
昨日の投稿で、宮古島の初来訪者の場合、旅行会社の店頭申し込みが最も満足度などが高くなるということを提示しました。
一方で、個人手配は、初来訪、リピーター問わず、満足などは低い。
これは、おそらく、旅行会社のパッケージング機能が有意に効いたのだろうと。
しかしながら、現在、注目を集めているネット系旅行会社は、パッケージではなく、ばら売りが主流です。ダイナミック・パッケージと呼ばれることもありますが、これも、ばら売りされているものをまとめ上げられるだけであり、選択は、自分が行います。
これは、従来のように、旅行会社がお仕着せでパッケージングしていた旅行商品に比して、自分で、自由自在に選ぶことが出来るという大きなメリットがあります。実のところ、私も、個人的には、多くの旅行手配がこのタイプになっています。
こうしたやり方は、言ってみれば、ワイシャツとか背広のオーダーメイドと同じです。あらかじめ、サイズ別に用意されている製品ではなく、自分自身の体型や好みに合わせて、自由に作り上げることが出来ます。例えば、私の場合、右手の方が、少しだけ長い。オーダーメイドだと、そんなことにも対応してくれてしまうわけです。
が、はじめて、オーダーメイドで作ったときは、「もう、やめてくれ」という感想でした。
生地選びから始まって、カラーの形、ボタン、ネームなど、様々なことに「オーダー」しないとなりません。さらに、それは、部分部分での発注ですから、全体の完成イメージは、別途、自分の頭の中で行わなければならないわけです。正直、「こんなの頼まなければ良かった」と思いました。
でも、2度目に行くとどうでしょう。その店では、私のデータが残されていて、以前のオーダーをベースにカスタマイズが出来るようになっているのです。これは、とても便利でした。こういう状態になれば、「選ぶ楽しさ」も出てきます。
ちなみに、そのお店は、その後、無くなってしまい、私のオーダーメイド:ワイシャツ歴は途絶えました。現在は、再び、「つるし」に戻っています。
また、欧米系のテーブルサービスのレストランは、前菜、メインなどが別れたアラカルトになっている場合が普通です。さらに、組み合わせるワインなどを考えると、その組み合わせは、かなりの数にのぼります。この中で、うまく組み合わせることができれば、その経験はとても高まりますが、逆に、失敗してしまうリスクもあります。あらかじめコースが設定されている場合には、そうしたコースを選んだ方が無難であるということは、少なくないでしょう。
さて、ここまで、読んでいただけば、私が何を言いたいのか解っていただけると思います。
旅行の素材をオーダーメイドできることは、確かに便利ではあるけれども、それを使いこなすには知識や経験が不可欠だということです。さらに、オーダーメイドしたからといって既製品を必ずしも上回るという保証もありません。下回ってしまう場合だって少なくないでしょう。
ネット系旅行会社が注目されるのは、その手軽さと自由度の高さ。そして、価格の安さでしょう。楽天トラベルは、宿泊施設に同一条件最低価格保証をつけていますし、なにより「パッケージング」する人の人件費がかからないのですから、安価になるはずです。(この辺が、ワイシャツなどのオーダーメイドとは異なる部分)
でも、価格の安さも享受した上で、その自由度を活かして、既成の旅行商品以上の価値をもった旅行商品に仕立て上げるのは、そう、簡単なことではないことを、宮古島の調査は示しています。
例えば、ここオーランドでも。WDWを目的に来るのであれば、WDWの直営、少なくとも、ネイバーのホテルに泊まることが「絶対」に良いです。でも、それよりも安いホテルは沢山有ります。そして、そうしたホテルからでもWDWに行くことは可能です。結果、WDWに行くにも関わらず、そうした周辺のホテルを手配する人は少なくありません。結果は、まちがいなく、現地での経験の差となります。
「WDWと直営ホテルを組み合わせると、相乗効果が生まれる」ということを知っているか、もしくは、教えてもらうことがなければ、価格だけの判断に走ってしまい、「失敗」してしまうわけです。
全ての旅行商品が、オーダーメイド化されるなんてことは、絶対にあり得ませんが、楽天トラベルの経営成績が示すように、もっと普及していくことにあるのは間違いないでしょう。
ただ、その場合に、パッケージングの機能を、全て顧客にゆだね、自由度が高いシステムなのだから、自分で、好きなように組み立ててね。と突き放してしまうことは、おそらく、旅行離れを促進することに繋がってしまうのではないでしょうか。
なぜなら、ネットで旅行商品をオーダーし、決済し、実際に旅行に行くというのは、前述したオーダーメイド:ワイシャツなどもよりも、遙かにハードルが高いことだからです。にも関わらず、「こうやって自分で選ばなければ、お得で、楽しい旅行は作れない」などと言われたら、多くの人は「そんな面倒なことしたくない」と思うことでしょう。実際にやってみて、トラブル(旅行中だけでなく、決済など事前準備を含む)を経験した人は、さらに、その傾向が高まるでしょう。
余談ですが、厄介なのは、人間は、そうした「自分が出来ないから、やらないこと」「知らないからやりたくないこと」について、正直に申告しないことです。時間が無いとか、お金が無いとか、行きたいところが無いとか、違う理由を立てがちです。その結果、アンケート調査をすると、明後日の方向を向いた結果が出てきたりします。
さて、では、どうしたらよいのでしょう。
いくつか考えられる事項を雑多に挙げてみましょう。
まず、既存の旅行会社では、自分たちのパッケージング力を、しっかりとアピールすることが重要でしょう。うまくパッケージングできれば、それこそ、良くできたテーマパークのように、様々な要素が絡み合って相乗効果を起こし、顧客の旅行経験を飛躍的に高める事になりますから。ただ、こうした「知恵」に対する対価を、日本人はあまり払いたがらないので、対象者はしぼり込むことが必要にはなるでしょうね。
もちろん、こうしたパッケージング力は、CRMなどITを活用することで、システム的に高める事も可能です。大手の旅行会社では、マスではなく、こうした世界に入っていくことが重要なのではないでしょうか。
でないと、多分、ネット系旅行会社が、こうした領域に進出してくることになるでしょうから。
では、地域はどうでしょう。旅行会社からの送客の場合、旅行会社が、一定程度、地域の情報を把握していて、そこを媒介して、顧客に情報が流れていました。つまり、地域としては、個人を対象に、情報をうまく出していくということは意識する必要が無かったわけです。しかしながら、オーダーメイド商品を仕立てる顧客に対しては、その商品を仕立てる前から、適切な情報提供をおこなっていく必要があります。来訪目的や同行者から考えればどのホテルが良いのか、何時くらい到着の飛行機がお得なのか、レンタカーは必要なのか、お勧めの食事処はどこか、名所は何時頃が一番美しいのか。などなど。伝えるべき情報は多々あります。しかも、それらを単にダウンページのように列挙するのでは、顧客の情報処理能力をオーバーしてしまいますから、適切な人に、適切なタイミングで、適切な情報を提供していく仕組みをつくっていく事が必要になります。
さらに、それらの情報提供とあわせて、顧客をコミットメントさせてしまう仕組み、具体的には、共通割引券のようなものを広域で導入していくことも効果的ではないでしょうか。例えば、オーランドでは、GO Orlando Card https://www.orlandoticketsales.com/oi/Go_Orlando_Card_C192.cfm というものを用意しています。これは、以前もこのブログで取り上げていますが、オーランドと名前は付いていますが、非常に広域をカバーしています。しかも、WDWやユニバーサルスタジオといったメジャーが入っていないのもポイントです。そうしたパークは、ほっておいても人は行きますからね。むしろ、来訪目的にはならないマイナーどころを集めた方が、現地での回遊促進には効果的ですから。
実際には、一泊しかしない日本市場では、難しい面もありますが、セットで買わせてしまうことから、無理矢理、コミットメントさせるという手段については考えておいて良いでしょう。例えば、一ヶ月前までに旅館を予約したら、地域の割引券が付いてくるとか。
いずれにしても。このままでは、顧客自らの意志によって、パッケージング機能が落ちていくことになります。それは、短期的には、顧客に対して「安さ」というメリットを与えますが、顧客自身の旅行経験内容が低下すれば、そのとばっちりは、地域や施設が受けることになります。さらに、そうした経験内容の低下は、旅行に対するモチベーションそのものを低下させてしまうことにも成りかねません。それは、市場の縮小だけでなく、さらに「安さ」だけが価値基準となる状況に繋がりかねません。
オーダーメイドを行う顧客に、いかに、価値ある経験をオーダーメイドしてもらえるようにしていくのか。その辺がポイントになっていくような気がします。