Discussion of Destination Branding.

オーランド202日目 ~目標を持った戦略づくり

今日は先週末にあげたうちの1項目。「目指すべき目標が明確で、資源は有限であるということを前提とした戦略を作ること」について、まとめてみましょう。
まず、米国の場合、なぜ、観光振興を行うのか?は「経済振興のため」と非常にシンプルです。
より具体的に言えば「地域のホスピタリティ産業を振興することで、雇用と税収、付加価値を生む」ということです。
なので、行政の総合計画などで触れられるとすれば、経済局の中で触れられることになります。
もちろん、博物館や歴史地区などの管轄は、文化系部局であるため、そうした部局でも、観光について触れることはあります。こちらの場合、この手の施設でも、その維持補修費などを利用者の入場料などで手当てする意識が強いので、その流れで、有料入場者数の増大、場合によっては、CS向上などが目標として掲げられることもあります。
ただ、フロリダ州の将来ビジョンでみれば、観光振興は、ホスピタリティ産業振興であり、輸出産業として認識、位置づけられています。フロリダの場合、地勢的に南米との結節点でもあり、交易も盛んであるため、ホスピタリティ産業は、複数ある輸出産業の中のひとつです。よって、取り扱いがさほど大きいわけではありません。これに対し、たとえば、ハワイ州になると、ホスピタリティ産業は、大きな柱になるため、より大きな取り扱いとなりますが、それでも、「経済振興」がキーになっています。
そして、こうした「経済振興」をホスピタリティ産業の領域、すなわち、外部から人々が訪問し、消費活動をすることで、達成するにはどうしていくのかというのが、米国の基本的な観光振興(ホスピタリティ産業振興)計画の骨格です。
一方、日本ではどうでしょうか。
日本では、国、県、市町村など、各種のレベルで「観光計画」があります。ただ、その中身に注目すると、目的が曖昧であるものが少なくありません。これについては、疑義もあるかと思いますが、日本の観光計画の特徴は、「目的を複数持っている」ことにあります。米国のような経済振興はもちろんのこと、文化振興、市民の交流促進、福利厚生などなどです。
つまり、「観光振興」という手段に対して、複数の目的が存在しているのです。
確かに、「観光」が及ぼす影響は多岐にわたります。ただ、そのことと、観光に複数の役割を持たせることは、本来、違うことです。
たとえば、自動車産業。自動車産業の振興は、経済効果だけでなく、便利になることによる生活の向上、産業構造の変革、場合によってはデザイン性に富んだ自動車開発で文化振興などもあるかもしれません。ただ、自動車産業の振興策において、そうした要素を羅列することは無いですよね。
シンプルに、「国際競争力を持つように自動車産業を育成する」ということに過ぎません。
しかしながら、観光の場合には、前述したように、様々な目的をつけてしまうのです。
そうするとどうなるか。手段である「観光振興」がシンプルでなくなり、その振興の方向性が曖昧になります。
たとえば、「経済効果」が唯一(もしくは優先順位1位)の目的であれば、人数×単価の向上が目標となります。また、ホスピタリティ産業の生産性を高めていくことも重要となるでしょう。
しかしながら、「経済効果」と「文化振興」が並列で来てしまうとどうでしょう。後者の場合、人数のみが重要な指標となりますから、「単価」についての意識は薄れることになります。すると、本来なら、宿泊客を対象にしていくことが求められるのに、イベントなどで、ともかく「人数」を集めることに注力してしまうことになります。
まずは、「何のために観光振興を行うのか」について、シンプルにすべきでしょう。
なお、「経済効果だけを考えると、企業が暴走して、文化破壊を起こしてしまう」という危惧はあります。ただ、これは、計画の「与件」「条件」として別途、設定すべきものであり、目的に入れ込むものではないでしょう。
実際、米国では、別途、厳しい用途規制、景観規制がかかっています。自然や文化の保護も、観光振興とは違う次元で整理されています。(前述のように、観光利用もされています)
こうやって、目的をシンプルにすると目標もシンプルになります。
目標がシンプルになれば、具体的な取り組み策もシンプルになります。これは、計画を戦略的なものにすることにつながります。
戦略とは、私は「資源を有限なものとして、目的、目標を達成するために最適な分配を行うこと」と定義しています。
よって、目的、目標がシンプルでなければ、最適な分配を考えることすらできなくなるからです。
一方、日本の計画は、前述のような事情のため、目的、目標が曖昧な状態にある一方で、各分野における「問題意識」「課題意識」は強くあります。
たとえば、「旅館の倒産が多くなっている」「景観が荒れている」「地域住民が減っている」といったことです。
そして、そうした「問題を解決」するための手段として、観光が位置づけられている場合が少なくありません。
ただ、たとえば、「旅館の倒産」は、観光だけの問題ではありません。非観光分野でも、中小企業の倒産が問題になっているように、様々な要因が絡んでいます。仮に、地域の観光が振興されたら、個々の旅館がつぶれないという保障や法則などもありません。景観や、地域の人口数なども同様です。もっと言えば、バブル崩壊以降の日本経済全体が、様々な問題をかかえているわけです。
そうした「問題」を、観光計画ひとつで解決することなど不可能です。しかも、前述したように「観光」に様々な役割、期待を載せて漠然(=何を持って観光振興された、されないと判断するのかが設定されていない)とした「観光振興」によって、魔法のように問題が解けることなどありません。
なぜなら、計画によってできることは、自身が持つ、限られた資源の中での、限られた取り組みでしかないのですから。
まずは、地域において、観光振興を考える際の「目的」「目標」をシンプルにすることが重要なのではないでしょうか?

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