変化と懐古主義 ~ライフスタイルを見直す機会?

震災後、よく指摘されるようになっているのが「今回の震災を機会に、ライフスタイルを見直すべきだ」という意見だ。
確かに、多額の費用と時間をかけて整備した防潮堤の多くが役に立たず、広大な面積に津波被害を招いた事や、未だ、収束できない福島第一原発といった事は、科学や土木技術と言った人類の英知の非力さを感じさせる。
「人は、道を間違ったのではないか」というのは、多くの人が感じる思いでもあろう。
ただ、これは、ある種の懐古主義なのではないかと思う。
まず、整理しておきたいのは、日本人は、エネルギー浪費をしているのか?という事だ。
実のところ、一次エネルギーの1人あたり消費量は、いわゆる先進国の中で標準でしかない。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01070303/02.gif
日本は人口が多いため、総消費量という点では高くなるが、1人あたりなら、ドイツやフランスと大差ない。
都市しかないシンガポールや、オイルマネーで近代化するブルネイ、更には、エコ的なイメージの高いオーストラリアやNZよりも少ないという位置づけにある。
さらに、このエネルギー消費は、「産業」が消費する分も含まれている。
日本は、製造業が国の基幹的な産業とされており、その産業が消費するエネルギーは約4割を占める。
一方、「ライフスタイル」と言われる、我々が消費するエネルギー(民生)は、3割。
この3割という民生の比率は、他の先進国と比較して、低めの水準だ。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01070208/03.gif
更に言えば、家庭で利用しているエネルギーは民生全体の約4割(=全エネルギーの1割強)でしかない。
残る6割は、サービス業の業務部門だが、この内、事務所・ビル(21%)、卸・小売り(11%)、病院(11%)、学校(8%)といった部門で半数を占める。
その一方で、余暇的なサービスであるホテル(19%)、劇場・娯楽場(9%)、飲食店(3%)、デパート(2%)は合わせても3割強(=全エネルギーの1割弱)でしかない。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010energyhtml/2-1-2.html#n9
つまりは、ライフスタイルと称する家庭と余暇は、全エネルギーの2割程度しか無い訳だ。
このように、
・1人あたりの消費量はエコ的なイメージの高い諸外国と比しても低めである。
・民生比率は相対的に低位である。
・さらに、「ライフスタイル」に関連するエネルギー消費は全エネルギー消費の2割程度でしかない。
これを持って、我々はエネルギー浪費の上に、異常なライフスタイルを構築していると言えるだろうか?
また、仮にライフスタイルを変えたからと言って、エネルギー消費量を劇的に削減できるのだろうか?
では、なぜ、ライフスタイルへの反省が出るのか。
これは、前述したように、「英知」の非力さを感じた事もあるだろうが、同時に、懐古主義的な意識もあるのではないかと思っている。
いわゆる「昔は良かった」というものだ。
これについては、「昔は良かった 嘘」といったキーワードで検索すると、いろいろな記事があるので、ここでは触れない。
ただ、公害や交通事故の多発、冷戦など時代の進展に伴う「危機」はいつでもあった。
そのたびに、人類は、「間違っているのかも知れない」と感じてきたのではないか。
が、結果としてみれば、人類は、その人口を増大させて来た。特に、産業革命以降の人口増加は顕著である。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1150.html
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9010.html
つまり、産業革命以降の、急激な「変化」に戸惑いながらも、その「変化」がもたらした食料供給、医療・衛生環境、居住環境が、我々、人類を増加させて来たわけである。もちろん、日本人も同様だ。
江戸時代。戦乱が落ち着き、長期にわたって平和であった時代。この時の総人口は約3,000万人とされる。
この内、江戸の人口は100万人とされ、世界でも有数の都市であったとされる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E3%81%AE%E4%BA%BA%E5%8F%A3
このことから、産業革命以前のエネルギー消費での、日本の人口限界は3,000万人程度と考える事が出来る。
極論ではあるが、ライフスタイルを見直すということは、究極的には、こうした世界観に行き着くことでもある。
我々が生き残っていくためには、懐古主義に陥るのではなく、「変化」を受け入れ、変化していく事が必要だと思うのだが。
さて。

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