今朝、なるほどと思ったコラムが2つあった。
「ボーイング787の報道で少しだけ残念なこと」
http://diamond.jp/articles/-/13006
ボーイング787は、海外の企業から70%の部品を調達。日本企業の比率は、ボーイング本体の比率と同等らしい。
ボーイングが、国際的なネットワークで、航空機を開発すること自体は、777でも取られていた仕組みなので、特に目新しい事ではない。
ただ、このコラムでも指摘されているように、結局、富が集中するのは、日本企業ではなく、ボーイングである。
これは、ボーイングが、非常に難しいプロジェクトをマネジメントすることで、事業化にこぎ着けた為である。
このことは、部品や製品の絶対価値ではなく、それらの組み合わせ(または切り離し)によって、顧客が指示する価値をどのように構築するかという「頭脳」が重要になっている事を示しているのではないか?
さらに、次のコラム。
「日本の「現場力」は誇るべきものだが、批判を許さない「現場絶対視」には反対だ」
http://diamond.jp/articles/-/12995
このコラムにおける「現場」を「生産能力を持った企業」。本社や政治を「ファブレス企業」と置き換えれば、前コラムと驚くほど、論旨は似通ってくる。
すなわち、全体として組み立てる場合、ある流れに沿って、効用が最大化出来るように、各所を調整していく事が必要であるということだ。
これは、私がよく言う「ゲシュタルトな魅力」にも通じる。
http://www.jtb.or.jp/investigation/index.php?content_id=6
ただ、それぞれの立場において、やりたいこと、必要だと思うことに違いがあるのは、当然である。
ファブレス企業の場合、単なる契約であるから、現場となる生産拠点が、その仕様に不満であっても、ある意味構わない。
しかしながら、ボーイング787のようなプロジェクトの場合は、生産拠点側にも意欲を持ってもらい、協働していくことが必要であろう。
これは、政治と地域との関係でも同様である。
いかに、現場に意欲を持たせ、全体としての整合性を高め、効用の最大化に繋げていくのか。
これは、ひとえに、「リーダーシップ」と言う事が出来るだろう。
リーダーシップには、いくつかの型があるが、重要な事は、目指すべきビジョンを具体的に示し、それを皆で共有する事にある。
現場を含む関係者が、そのビジョンに共鳴すること、そのすばらしさや、必要性を理解することが基本である。
例えば、ボーイング787では、「ウォシュレット」が標準装備されるらしい。
正直、これだけでは、世界中を相手に商売するボーイング787にとって、異端装備でしかないだろう。
が、ボーイング787は、例えば、キャビンに加湿器があったり、証明がLEDであったり、窓が電子シェードになったりと、室内環境の大幅な改善、新しい価値創造に取り組んでいる。こうした「質」を前面に出す取組は、エアバスのA380の「絶対的な大きさ」を前面に出す取組とは、競合すらしない軸になる。そうした全体の取組の1つとしてウォシュレットがあるのであれば、これは、意味があるだろう。
実際、ビデオを見る限り、そうした取組は成功していると思う。
[yt:G_mN1waur6A:425:350]
ウォシュレットなどの単品装備を並べ立てたのではなく、こうした「新しい価値」を関係者に示す事で、「こんな飛行機を作り上げたい」と関係者に思わせただろうというのは想像に難くない。
さて、私は、約2年前に、「ファブレス企業」と観光との関係について、投稿を行った。
http://www.resort-jp.com/ppBlog17/?mode=show&date=20090929
日本の旅行会社は、現在、地域との接点を強めようとしている。
が、旅行会社をファブレス企業と考えれば、それは、正しい選択なのか?
むしろ、必要なのは、全体として置き換えの効かない観光客にとっての魅力をビジョンとして作り上げ、そのビジョンに地域が向かっていけるようなリーダーシップを発揮することが重要なのではないだろうか。