昨日のお昼で学会は終了。
最終日は、既に帰ってしまった参加者も多かったようで、少し、寂しい感じでしたが、個人的には面白いものが多かったです。
特に、「大学でホテルのプロパティ・マネジメントをどのように教えているか」という事例紹介は、なかなかでした。
この大学では、講義のために、実際にホテルが導入しているのと同様のプロパティ・マネジメント・システムを構築し、それを学生に使わせながら、プロパティ・マネジメントの概念と実践方法を伝えているとのこと。
このシステム、ちゃんと、講義用になっていて、学生にどこまでの権限を与えるのか、どういう動きをとっているかなどの管理も出来る。大学でワードとか、エクセルを教えている世界とは、だいぶ、違うなぁと。
また、この学会は、論文発表だけでなく、産業からの発表や、こうした人材育成手法(講義手法)のセッションもあり、ホスピタリティ・マネジメント系の大学の「先生」を基軸に、様々な要素が詰め込まれていることを実感しました。
日本の観光系学会でも、こうした組み合わせをすると面白いかも知れませんねぇ。
特に、人材育成手法については、もっとレベルアップが必要だと思います。
学会はお昼に終了しましたが、日本行きの飛行機は朝出発なので、もう一泊必要。
ということで、午後はフリーに。
当初、ボストン日帰り(利用空港はボストンなのですが、飛行機は早朝なので、空港直行)とか、海側のニューポートとかに行くことを考えていたのですが、初日に引き込んだ風邪症状が完全回復して居らず、また、考えて見たら、ボストンは機会があれば、再訪する可能性はあるが、プロヴィデンスは、おそらく二度とこないことを思い、徒歩と自動車でプロヴィデンスを巡ることにしました。
初日のレポートでも書いたように、プロヴィデンスは、歴史をもった街としてのたたずまいを見せています。
近代的な高層ビルは少なく、目にとまる新しい高層ビルも外観がコントロールされているため、調和が取れた景観となっています。
よく見ると、低層ビルでも、新しい物と古い物が混在していますが、新しい物も同様に外観がコントロールされているため、一見するだけでは、違いがわからないほど。
かなり面白かったのは、ファサードだけが残され、後ろ側が駐車場になっている事例。強い意志や法的な制約があってこうなったのか、たまたまやっただけなのか事情はわからないが、普通に車で通過するだけなら、気がつかないくらい自然な感じであり、外壁だけであることに気がついたときは、ぎょっとしました。
少し離れたブロックになれば、ガラス張りの近代的な建物も出てきますが、ダウンタウンのエリアは、かなりがっつりとした景観規制がかかっていることが伺える。そのため、どの方向にファインダーを向けても、それなりの絵になる光景が飛び込んでくる。日本の都市と比べると…彼我の差は大きい。
欧州の都市だけでなく、米国ですらこうした町並みを造っているのに、京都などを訪れた欧米人は、本当に、良かったと思ってくれているのか。心配になる。
新しい公共空間の整備も、かなりしっかりとしたデザインセンスになっている。ダウンタウンのそれとは違うが、全体として違和感がなく、かつ、見るからに快適だろうなぁと思わせる処理がされている。これは、サービススケープの観点から言っても秀逸だと思う。
その後、車でもう少し郊外にも出てみる。
プロヴィデンスは、東側が丘。南東側が海(川)。南側から北西にかけては平地(内陸となる北側に向けて丘)となっている。
どこでも金持ちは高台に住むので、プロヴィデンスの高級住宅地は中心部から見て東側となる。
実際、昨日のレポートで出したスーパーは、この一角にある。
車を走らせると、いやまぁ、絵に描いたような住宅地。かわいらしい落ち着いた風情を持った住宅が並ぶ。
しかも、現在の住宅と異なりガレージを持っていない事も面白い。
実は、ガレージが無いのは、他の(高級ではない)住宅地でも同様。
ちょっと、ここは入り込んだらまずかったかな(=写真など撮れない)と思う地区でも、十分な修繕はされてはいないものの、昔の住宅が活用され続けていた。
自動車が本格的に普及する前に建てられた住宅が、大きさやグレードにかかわらず、その後も、改修を続けながら、この地域広域で使われ続けられていることが解る。
つまり、ダウンタウンだけでなく、一般の住宅地においても、古くからの景観、町並みが大切に維持されているのである。
このように、プロヴィデンスは町並み、景観という点で、すみずみまでかなりがっつりとした対応がなされている。
さらに、ダウンタウンについては、景観を維持しながら、新規の投資、開発も行われており、建物や空間、町並みといった要素においてスキはない。正直、元都市計画屋からしてみると、うらやましい限り。
ただ、ソフトウェアという点では、課題もある。今日、出歩いたのは、土曜日の午後だったが、3つのデパートが入っているSCには、沢山の人は居たものの、商業系のダウンタウンの人通りは少なく、空きビル、空き店舗も少なくない。
なんとなく「管理されたゴーストタウン」という言葉が、頭の中をよぎるくらい、都市活動を感じる機会が少ないのである。
人気のないテーマパークという表現の方が適切だろうか。
また、私の泊まっているホテルは、極めて中心部にあるが、夜中は2時過ぎまで、車のクラクションやパトカーのサイレン、バイクの爆音などが鳴り響き、その音は、12階のホテル内にまで達する。
ウォルマートとホールフードの「違い」のように、生活レベルの違いも大きく二極化されている。
(ただし、SC内のテナント構成を見る限り、さほどアッパーではない)
綺麗に整備された都市空間があっても、需要の喚起、呼び込みとは別の問題なのだという事を感じる。
あと1時間余りで、ホテルを出ます。
ボストン空港まで、夜道をドライブ。
安全運転で行きたいと思います。
では。