Discussion of Destination Branding.

問題の解決方法

今回は、私が講演でよく話すことを。

観光に限らず、解決すべき問題というのは、無限と言ってよいほどある。
こうした問題は、解決せずにおくと、更なる問題を引き起こし、ある種の合併症を起こし致命傷となっていくリスクを抱えている。

問題の解決において、まず、意識をしておく必要があるのは「閾値(しきいち)」という概念である。これは、一定の基準(=閾値)を超えた対応がなされないと、対応そのものが無意味になるということである。

解りやすい例として、資格試験がある。
なんらかの資格を取得しようと勉強なり練習なりを積み重ねたとしても、結果的に、資格取得が出来なければ、それらの取り組みはほとんど無意味となってしまう。
※経験値があがったという効果は、とりあえず置いておく。

つまり、問題解決に向けて努力するだけではダメで、やるなら閾値を超える水準まで、やりこまないとダメだということだ。
これは、実際問題として、結構、しんどい。

とはいえ、問題の内容によって、閾値は決まってしまうから、その難しさを嘆いても仕方ない。
当事者としては、いかに閾値を超えるか、その方法を考える事が求められる。

この問題解決方法について、私は以下の3つに区分している。

  1. セルフ・ソリューション:当事者自身で解決する
  2. クラブ・ソリューション:共通する利害関係者で連携する事で解決する
  3. プロ・ソリューション:当該の問題に秀でた専門家に依頼し解決する

基本的に、当事者にとっての問題の難易度が高まるにつれ、セルフ<クラブ<プロという対応となる。
例えば、前述の資格取得で言えば、自分だけで頑張る(セルフ)、同じ受験者で集まり勉強会する(クラブ)、予備校に通う(プロ)といった感じだ。

この整理は、普遍的なものだと思っており、もちろん、観光振興にかかる問題でも適用可能だ。

観光振興においても、まず、旅館や体験プログラム事業者など、個々の主体が自分で問題を解決するということが求められる(セルフ・ソリューション)。典型例として、最終的に商品サービスの取引を成立させる「セールス」活動は、各主体が自立的に行うべき活動だろう。

ただ、各主体が取り組んでも、対応出来ない部分も多い。例えば、マスメディアなどに広告を出そうと思っても、個店では費用負担が難しい。個店で、集客イベントを開催することや、交通サービスの充実をはかっていくことも難しいだろう。
これらの取り組み、具体的にはプロモーションや、ロジスティックなどは、個店ではなく、同様の利害関係者が集まり、費用や人材、情報などを出し合って対応するのが有効であろう(クラブ・ソリューション)。

さらに、地域間競争が激しくなってくると、より多面的な情報をあつめ、戦略的に対応していく事が必要となってくる。これは、マーケティングやブランディングと呼べる活動だが、この展開については、専門知識や経験が必要となる(プロ・ソリューション)。
また、クラブ・ソリューションでは「クラブ」のため、関係者の一部でも不利益が生じるようなものは範囲外となるが、プロ・ソリューションでは「目的」を達成するためには、一部の不利益も許容するという違いもある。

例えば、市場変化をふまえればFIT対応は必須となっている。しかしながら、地域には団体客を呼びこまなければ事業存続が難しい施設も存在する。クラブ・ソリューションでは、そうした施設にも配慮し、大味なプロモーションとなりがちだが、プロ・ソリューションでは、FITに特化した、より鋭さをもったマーケティング(プロモーション)の展開が可能となる。

従来の観光協会はクラブ・ソリューション、近年、注目されるDMOはプロ・ソリューションとして整理すると解りやすいだろう。

なお、どのソリューションが適切なのかは、地域や事業者の状況によって異なる。
例えば、星野リゾートのような事業者は、そのほとんどをセルフ・ソリューションで対応している。その上で、外部の専門家を使ったプロ・ソリューションも展開しているが、クラブ・ソリューションは、ほとんど行っていない。この事が、同社が地域で「嫌われやすい」ことの原因でもあると思うが、それについては、また、どこかで。

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