ハワイで、宿泊税(transient accommodations tax、以下、TAT)を、鉄道敷設の財源とするため、増税しようという動きがあるようです。

「Statewide Hotel Room Tax Increase to Help Fund Honolulu Rail Project(http://www.hawaiinewsnow.com/story/35282669/hawaii-lawmakers-want-to-boost-hotel-taxes-to-fund-rail)」

ハワイでは、1998年、宿泊事業者からの申し出により、増税分を観光地マーケティングの目的税とする事を条件に、TATを6%から7.25%へと“増税”し、その財源をもとにHTA(Hawaii Tourism Authority)を創設しています。
このHTAが、安定財源をもとに、中長期的な展望に立った戦略的なマーケティングを行い、ハワイ観光の再興に寄与した…というのは、日本にも伝わっている情報です。

一方で、ハワイは、観光は好調ですが、行政の財務基盤は必ずしも強くないと聞いています。
さらに、現在の州知事は、グリーン・エネルギーへの転換を進めており、それに伴うイニシャルコストの確保が求められているとも。

そうした状況の中、宿泊税の税率を10年間、現行の9.25%から12%にあげようというのが、前述の記事となります。

実は、ハワイでは、TATを2016年1月1日から7.25%から8.25%に増税し、さらに、2017年1月1日には9.25%にあげ、今回、さらに、12%にあげようということになります。

ハワイには消費者が負担する売上税(消費税)はありませんが、代わりに、売り手側が負担するHawaii GET (General Excise Tax)があります。まぁ、税込み価格みたいなものですね。
これがオアフ島だと4.712%、離島だと4.166%かかります。

さらに、それなりのホテルに泊まると、別途、リゾートチャージがかかります。ホテルに寄りますが、$15 〜30/泊といった金額です。ルームチャージ価格の10%前後かと。

結果、明示的か否かは別として、宿泊者はピュアな宿泊費に対して25%位上乗せされた費用を支払っていることになります。
参考:Planning for Those Additional Taxes and Fees When Traveling to Hawaii

まぁ、それだけの価格競争力があるとも言えますが…。

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基本、ハワイの人達が決める事なので、私がどうこう言う話ではありませんが、この話を聞いて感じたのは、宿泊税を「目的税」として使っていくことは難しいのだなぁということです。

2017年、TATの税収は$452ミリオン。このうち、HTAの財源は$82ミリオンにすぎません。これはTAT全体の18%で、税率でいえば1.67%に相当します。「1.67%」は、1998年の6%から7.25%にあげた差分「1.25%」よりは大きいですが、その後の増税分2%からは0.4%しか配分されていない計算になります。

当初、HTAの財源は、TATに連動していました。つまり、HTAの取り組みが観光収入(宿泊収入)に繋がり、それがHTAの予算に反映するという流れが出来ていました。しかしながら、現在では$82ミリオンに固定されています。
つまり、HTAとしては、予算が成果連動とはならなくなっています。
参考:HRS 237D-6.5

また、郡(カントリー)への配分も固定額となっています。
リーマンショックによる低迷状態にあった2010年のTAT収入は$244ミリオンで、郡への配分は$93ミリオン。これは、38%に相当します。その後、低迷期を脱し、2015年には
、TAT収入は$435ミリオンにあがったものの、郡への配分は$103ミリオン(24%に相当)とほとんど増大して居らず、しかも、$93ミリオンに戻ってしまう可能性もあるとのこと。
参考:Counties push to increase share of transient accommodations tax revenue

つまり、TAT収入が連動しても、HTAやカントリーへの配分額は変わらず、増収分は、州の一般財源となります。HTAやカントリーなどに割り当てられないその他の税収は、ハワイ州政府に入るわけですが、増大する税収が各方面から「アテ」にされ、草刈り場と化しているというのが実状のようです。
参考:With record tourism to Hawaii, more scramble for the growing ‘room tax’ pie

鉄道敷設の財源とするために、更に「増税」しようというのは、そうした政策の流れとしてみると解りやすそうです。

こうした状況を見ると、なんとなく「お手盛り」な状態になっているようにも感じます。

ただ、米国本土でも、宿泊税(正確には分担金)が直接DMO財源となるTIDの動きが顕在化してきているように、そもそも議会・行政に、目的税とはいえ、宿泊税を任せることには限界もあるのかもしれません。
※TIDへのヒアリングでも、この種の問題を指摘されています。

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