Discussion of Destination Branding.

イベントでライフスタイルは作れるか

私の居住地では、現在、市長選の最中である。

候補者は3人なのだが、現職に対する新人2人は、いずれも「大型イベントの実施是非」を争点として掲げている。
http://www.saitama-np.co.jp/news/2017/05/08/01_.html

確かに、現職が市長になってから当地では「大型イベント」が行われるようになっている。
この実施には、億単位で費用がかかっているわけで「そんな金があるなら、福祉に回せ」という主張は解りやすいし、他の地域でも良く聞く話でもある。

こうした主張は、かつて、学童保育のNPO理事をやっており、その運営に苦慮した私自身の経験からも、うなずける部分もある。

更に言えば、当地において、大型イベントを行っても、それ単体の経済的なインパクトは乏しく、おそらく収支的には赤字だろう。
なぜなら、当地はベッドタウンとして拡大し、飲食業の集積は一定程度あるとはいえ、その他の観光的なサービス業集積は乏しいからだ。
さらに、大型イベントの多くは土日開催だが、もともと人口は多い地域なので、土日は、一定の余暇需要が発生している。供給量は、この需要規模に応じたものになっているであろうことを考えれば、立地している事業者(サービス分野)においても、イベントで呼び込んだ需要を受け入れる余地は限られているだろう。

結果、イベントで多くの人が来訪しても、そこで発生する需要の多くは、顕在化しないか、域外へと漏出するか、市民需要とトレードオフされるかという事になる。

つまり、観光交流需要という「食料」を地域経済振興という「血肉」としていく体質になっていないのに、満漢全席を並べられているような状況と言える。

ただ、では政策的に無意味なのか?といえば、そうでも無いと思っている。
当地は、ベッドタウンとして高度成長期以降、急激な拡大をした地域であり、機能的価値はあっても、情緒的な価値は乏しいからだ。

成熟社会を迎え、少子高齢化、人口縮小時代となっている現在、ライフスタイルに関心をもつ人達を呼び寄せたり、無趣味な人達(住民)にライフスタイル志向を持たせることは、地域経営において重要な視点になっていくだろう。

大型イベントをそういう取り組みの一環として展開するのであれば、それはそれで意味があるだろう。やはり「本物(例:世界トップレベルの競技選手の走り)」を目の当たりすると、心が揺さぶられるからだ。特に、子ども達は、その一瞬の体験で、意識が大きく変わることもあるだろう。

とはいえ。実際問題として、ライフスタイル育成の手段として大型イベントが使われているかと言えば….、残念ながら、そうとは感じられない。
イベントはイベントとして、終わっているように感じる。

例えば、マラソンや自転車レース・イベントを実施するなら、スポーツ用品販売店や体育施設を使って恒常的にセミナーを展開したり、クラブ化を促したりしても良いだろう。
そして、そうしたクラブの活動を見える化したり、中小規模のイベント(競技)開催を支援したりすることも考えられる。

要は、1日だけ、2日だけのイベントに終わらせるのではなく、その活動を日常へと拡げていく取り組みを平行することが重要なのではないかということだ。

市民のライフスタイル育成は、ある種、文化創造とも言える。
そういう視野で考えて欲しいなぁと思う今日この頃。

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