2019年1月、約10年ぶりにマウイ島を訪れたのですが、そこで、改めて確認できたのは、来訪している人々の、ほぼ全てがいわゆる「白人」だったということです。
我々はよく「欧米人」と言う言い方をしますが、米国も欧州も、世界中の人々が集まる国なので、本来、多種多様な人々がいます。実際、米国内の諸都市はもちろん、ロンドンとかパリに行くと、色々な「肌の色」の人たちが入り乱れています。
しかしながら、マウイ島には、白人しかいない。
リゾートホテルのグレードをあげて行くと、その傾向が更に高まります。
この時期は、メインランドとカナダの人が多いとのことですが、現地の状況を主観的に言えば、高級リゾートは、メインランドとカナダの「白人」でほとんどを占めるということになります。
「白人はビーチが好きなのでは無いか」という指摘が出そうですが、実は、高級なスキーリゾートでも同様の傾向があります。
更に言えば、オーランドのWDWでも、テーマパークや安いホテルは多様ですが、高級なホテルになると白人だらけです。
こういう傾向を見ると、2つの仮説が出てきます。
1つは、バカンスをしたいという意思を持った人たちは、国に関わらず白人なのでは無いかということです。
もう1つは、高額なバカンスを実現できるだけの所得や時間、そして意思を持った「白人」は、白人が多く集まっているリゾートを選択する傾向があるのでは無いかということです。
この辺、ちゃんと調べてみたいところですが、現時点の個人的な仮説は、前者が基礎的にあり、後者の関係が、その後の観光地ライフサイクルに影響しているのでは無いかと思っています。
その理由は、アジアの経済振興は著しいですが、かつての日本と同様に、旅行者数は増えても、必ずしも滞在日数は増えていないからです。私の知る限り、世界のリゾートにおいて、滞在日数が多いのは「白人」であり、アジアの人々は、その半分(またはそれ以下)です。
同じ地域(デスティネーション)に訪れながら、滞在日数が大きく異なるという事実は、滞在日数の長短は地域特性が決めているのではなく、来訪者の習慣、需要が決めているということを示しています。
海外に行くと、何も無いようなところで、夫婦や家族でのんびりと時間を過ごしている人たちをよく見かけますが、その多くは白人です。
こうした時間の過ごし方ができるからこその「バカンス需要」であり、その背景には、パートナーや家族との関わり方に関する価値観、社会観があることが伺えます。
また、パートナーや家族と過ごす時間が、バカンス需要の核となるのであれば、異文化との接触をストレスと感じる人達は、できるだけ同質な文化を持つ人たちの中で過ごしたいと思うことになります。
つまり、パートナーや家族との関係性から生まれるバカンス需要を白人の人々は広く持っており、所得額に応じた旅行先選択を行なっている。この需要を取り込めたところが、いわゆるリゾートとなることができ、そのブランドによって、他の人々の需要(観光旅行を含む)も取り込むことができる。
その一方で、白人の一部は、バカンス先での異文化交流は望んでおらず、所得が上がって行くと、白人だけが集まるリゾートを志向するようになると考えると、各地のリゾートで起きている事象が整理できます。
これはマーケティングにも大きな影響を及ぼしますが、文化や人種、社会観などが関わってくるので、なかなか、難しいですねぇ。
特に後者については、白人を日本人と置き換えると、観光需要全般の話としても成立する部分が出てきます。ここ数年のインバウンド客の増大について、それをよく思わない人々は少なからず存在しますから。
なかなかに、奥の深いテーマです。