東京都も3度目の緊急事態宣言(SOE3)発出が、ほぼ既定路線となってきました。

そこで、3度目の緊急事態宣言が、どれくらいの効果を示すのか、推計してみます。

推計に当たっては、以下のように条件設定しています。

  1. 東京都では、12日に発出したマンボウの効果が26日頃から出始めるハズ。このマンボウ効果は実績値が乏しいので検証のしようが無いが、平均水蒸気圧からの2W前比を10%削減するとした。
  2. SOE3発出は、26日と見込まれているが、SOE2の時を見ると発出検討の段階から、2W前比は減少傾向となる。そこで、明日(22日)から徐々に2W前比の抑制効果がでて10日後に0.5(SOE2実績)まで下がるとした。
  3. 現時点でわかっている平均水蒸気圧は4月20日(2W後は5月4日)なので、5月5日以降は、昨年実績とした。

こうした条件で、推計をしてみると、以下のような感じになります。

このままSOE3を発出しないと、GW中に1000人を大きく超える状況となり、GW後も、それを引きずることになります。が、このタイミングでSOE3を発出すると、マンボウ効果次第のところはありますが、1000人少し超えるもののGW後半になるとSOE3効果が出てきて減少傾向に変わっていくという推計結果となりました。

政府というか、東京都としては、わざとSOE3をGWにぶつけてきたのかもしれません。GWであれば、通勤通学は基本的に止まっており(大学はあるけど)、人流を抑えやすいと考えた可能性があります。

これは、観光業界すれば噴飯ものですが、観光業界としては、そういう政治的判断がなされるようになっていると考えておくほうが、今後の対処、意思決定判断にもつながると思います。

なお、マンボウ効果は低めに10%抑制としていますが、飲食店の営業時間がクリティカルな要素なのだとすれば、もう少しでてくるでしょう。逆に、そうでなければ、ほとんど効果ゼロとなります。この辺は推移を見守る必要があります。

いずれにしても、(少なくても関東、関西周辺では)GWは事実上の禁足令がひかれることになるでしょう。

私の推計モデルからも、SOE3発出は、やむを得ない判断となりますが、それは行動の緩みが原因ではなく、気象条件に依る「自然増」でしかありません。

この「自然増」を、SOEという規制で「社会減」にしようとしているわけですが、その対象となる人流の一つ、宿泊観光について言えば、宿泊施設などの防疫体制も高度になっており、顧客側も、感染しやすい場所、機会もわかってきていて、個人で出来るPCR検査も充実。さらには、GWの旅行は家族客が主体になることを考えれば、いわゆる「バブル」の単位での旅行が主体です。

にも関わらず、一律で観光を止めるというのは、個人的には、とても不合理な話だと思っています。

また、相対的にリスクが高いとされる飲食店についても、「誰と会食するのか」という方が、リスク変動要素であるはずなのに、そこへの言及は乏しい。それこそ、大戸屋とかで単身者が夕食を取ったり、同居している家族が外食することにリスクがあるとは思えません。

全体ではなく、個別にリスクを推計し、そのリスクに沿って細かい対応をしていくようにしないと、社会が持たないと思っています。

変異株は脅威なのか?

もう一つ、個人的に疑問なのは「変異株が蔓延しているから危険だ」という言説。これは、暗に、東京都が、大阪府のように感染爆発するだろうということを示唆していますが、前述のように、東京都での感染者増は、気象条件に依る「自然増」がほとんどです。

確かに、ここ1Wほど、20%ほど上回るようになっているので、注視は必要ですが、変異株で感染拡大したはずの大阪府は、急激に、感染率を下げてきています。マンボウ効果が、あまり効いていないのは事実ですが、一時期、2W前費が4を超えたものが、2を下回るところまで下がってきています。

現在の気象条件でいえば、1.3〜1.5といったあたりとなりますが、その水準に大阪府は戻ってきています。

仮に、変異株が、言われているように強烈な感染力を持っているのだとすれば、もっと言えば、3倍、4倍に膨れ上がったのが変異株のせいであるなら、こんな急激に収束方向に戻っては来ないのではないでしょうか?

大阪府で、SOE2後に感染爆発してしまったのは事実ですが、変異株を持ち出して思考停止するのではなく、どこで、どのような形で感染が爆発したのかということを、しっかりと整理するほうが重要だと思います。それが、Withコロナというか、コロナのある社会での生き方なのではないでしょうか?

夏休みはどうなる?

とはいえ、東京都でも、1.5を超えてきています。私の推計モデルでは、徐々に2W前比が落ちていく計算ですが、実際には、オーバーする傾向が高まっています。これが、変異株の影響なのだと言うのであれば、そうかもしれません。

要は、大阪府のようなピーキーな動きを、あたかも「東京もああなる」というように煽るのは止めて欲しいということです。1年前ならともかく、現在は、この1年間の推移データがあるのですから、そのデータを元に考えたいところです。

さて、GWは、かなり厳しい状況になることが確定的ですが、夏休みはどうなるでしょうか。

私の推計モデルでは2W先までしか見通せない(その後は、根拠がどんどん薄くなる)ですが、仮に、SOE3が2Wくらいで終わった場合、種火が残ることになるため、かなり、危うい感じになります。5月中旬になれば、気象条件は良くなってきますが、ベースとなる人数が多ければ、やはり、感染者数が一定のボリュームとなってしまうからです。

これを避けるには、SOE3を一ヶ月くらいやるか、SOE1クラスのロックダウンにするかとなります。

SOE1時には、2W前比が0.1〜0.2というレベルにまで落とし込んでいます。GWを事実上、ロックダウン状態として、このレベルの抑制効果を実現した場合、SOE3後には100〜200人まで落とし込みが出来ることになります。ここまで落とし込めれば、気象条件も良化することとあわせ、比較的、安定した推移が期待できます。

2Wで強烈なロックダウンをするか、月単位で緩やかに対応するか。なかなか難しい選択ですが、政府は前者を狙っているのかもしれません。

もっとも、昨年、7月に感染拡大(いわゆる第2波)が来たように、気象条件が良化しても、ニューノーマル対応が取れていなければ、また、再発火することになります。

SOE3でしっかりと、十分な感染症対策を行いつつ、ワクチンの普及を持つというのが、社会的には唯一の選択肢でしょう。

一方、観光業界としては、さらなる感染拡大リスクも想定し、コロナ禍であっても「動かせる」観光のあり方を考えていくことが求められています。

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