ブランディング活動を、観光地において展開する事の難しさに、ブランドの核となる価値(ストーリー)を地域側でセットしたとしても、それだけでは「人は来ない」ことにある。
いわゆる「お国自慢」が、内輪の盛り上がりにとどまり、拡がりをもたないのも同根である。
ブランディングで必要なことは、価値をセットしたら、その価値を評価してくれるセグメントを見つけることである。地域の価値がユニークなものであるほど、それに反応する人は限られるという事実を忘れてはいけない。
そうした人達(セグメント)に、ストーリーを適切に届けることができれば、強く評価してくれるが、関心の無い人達には「馬の耳に念仏」にしかならない。
つまり、ブランディングを成功させるには、価値(ストーリー)のセットだけでなく、それに反応するセグメントを見つけ出し、さらに、そのセグメントに対する有効なコミュニケーション手法を見出すことが必要となる。
では、そうしたセグメントはどうやると見つかるのか。
私は、現在の来訪者にこそ、その答えがあると思っている。
ストーリーが地域に根ざしたものであるならば、既に現在の来訪者は、そのストーリーに触れていることになるからだ。
それがどのような経験であるかは地域によって異なるが、例えば、「雄大な自然の中で自己にチャレンジする」といった事がストーリーであるなら、それに関連する活動、例えば、マウンテンバイクやトレッキングなどを行っている来訪者を抽出する。
その上で、その来訪者をロイヤルティの高い・低い、消費額が高い・低いという2軸で整理する事で4群に区分する。ここで、ロイヤルティが高く・消費額も高い という群が、地域にとっては最も好適な群であり、ついで、ロイヤルティが高いが消費額は低い、ロイヤルティは低いが消費額は高いといった並びになるだろう。
ここで、これらの群を統計的に比較することで、ロイヤルティが高く・消費額も高い という群の特性をあぶりだす。例えば、来訪目的、同行者、来訪理由、年収、家族構成(ライフステージ)、日常的な利用メディアなどである。
これを整理していくと、地域のストーリーに反応し、かつ、地域にとって上客となるような群(セグメント)の特徴が明らかになる。来訪理由やメディアを整理すれば、どういったコミュニケーションが有効なのかという情報も得られる。
あとは、一般的なマーケティング活動と同様だ。明らかとなった「上客」をターゲットとして、その特性に合わせた展開をしていくことになる。
なお、こうやって、導き出されたターゲットは、マーケティング発想で言えば「ニッチ市場」ということになる。前述したように、マーケティングとブランディングは、重なり合う部分が多く不可分な関係である。
なので、ブランディングをすれば、マーケティングは要らないという訳ではない。
「お国自慢」と「ブランディング」の違いは認識しておくことが必要であろう。