国内における観光振興に対する注目は、昨今の地方創生政策の展開から加速化されている。
その背景は、観光振興が人口の維持増大に繋がるという期待がある。

観光は、経済的に幅広い波及効果を有しており、それが地方創生に重要な「仕事」の創出に繋がるという理屈である。

観光は自然だけでなく、人がつくり出す文化やエンターテイメントが魅力となることを考えれば、観光と人口とは密接な関係があると考える事は合理的である。

実は、人口と観光動向については、昨年、私の方で分析し、論文としてまとめている。
この論文で示すように、人口の規模や推移が観光客(人泊)の規模や推移と有意な相関関係を有している。

ただ、この論文でも指摘しているように、人口と観光客数の因果関係はわからない。

地方創生の文脈でいえば、観光客数が増える–>職場が増える–>人口が増えるという流れであるが、人口が多い(増える)–>街に活力がある(生まれる)–>観光客が多い(増える)という関係である可能性も高い。

仮に後者の場合、人口が原因、観光客数は結果であるため、観光客数が増えても、必ずしも人口増にはつながらない。
確かに観光客数が増えれば、職場は増えるが、近年、サービス業における「人手不足」が叫ばれているように、仕事があれば、そこに人が住むというものでもないことを考えれば、観光客数を結果ではなく原因として考えるのは適切ではないようにも思える。

一方、欧米のリゾート地で感じるのは、その地域に住んでいることに対する誇りを持っている人達が多いということだ。もちろん、プロとして職を得てキャリア形成に取り組んでいる人達も多いが、そもそも「そこに住むことが好き」という人達も多い。そういう人達は、自身のライフスタイル>職場なので、職場がなければ、自分で作る/持ち込むという対応を行っている。近年のIT社会は、そうした働き方を後押しすることにも繋がっている。

日本においても、リゾートの「労働力」としての人口ではなく、それぞれの地域でのライフスタイルをどう創るのかということが、重要なのではないだろうか。

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