キッズウィークについて、(どちらかといえば)ポジティブに取り上げたコラムがあったので。

キッズウィークは誰のため? 休暇は取りやすくなり、家族の時間は増えるのか?

私は、15年ほど前に、日本と諸外国における年休制度の変遷と現状比較を行ったことがあります。

その中で、明らかになったのは、労働に対する欧州と、日本の意識の違いです。

「キリスト教 労働」といったキーワードで検索すれば、出てきますが、キリスト教において労働は「罰を償うための苦役」という位置づけにあります。フランスやドイツで、日曜日に商業施設が休んでいることが多いのは、宗教上「安息日」であるためです。
また、貴族制度、その後の資本家VS労働者という対立構造は、労働は「資本などを持たない人間が、生きるためにやむを得ず行うもの」というマルクス的な価値観を形成することになります。

こうした意識の中では、労働者は「職や収入を確保しつつ、出来るだけ働かないようにする」というのが、基本路線となり、1日の労働時間や、1年間の年休数などは、資本家と「戦って」労働者が勝ち取った「権利」ということになります。

そのため、利用可能な「年休」はちゃんと使うのが「当たり前」ですし、資本家の「横暴」を防ぐために法制度としても担保されるという流れとなっています。

他方、日本はキリスト教的な価値観は限定的ですし、労働はむしろ「尊いもの」という意識があります。さらに、我々の労働基準法は、太平洋戦争後にGHQの指導によって作られたものであり、欧州のように労使の激しいやりとりから生まれたものではありません。

結果、労働者側も「別に休まなくてもいいや」となりがちだし、経営側も「年休を使わせることが社会的責務だ」とも思わない。
「休むこと」は、「仕事をほったらかしにする無責任な行動だ」というような意識がでがちなのも、こういう背景があります。

このように社会文化的な背景が異なるので、ドイツなどの「バカンス法」を日本に入れれば万事解決とはならないでしょう。「働く機会を失わせるな」とか「強制的に休ませて、金を使わせようとするとは何事か」といった指摘が出てくるのが目に見えています。

他方、今回のキッズウィーク(プレミアム・フライデーも含む)のような政策が提示された際、「そういう時間が出来たら、あれが出来る。嬉しい。」と思った人も、少なからず居るでしょう。こういう人は、既に、年休をそれなりに使っている人達(=もしかしたら、社内では怠け者と思われているかも知れない)だと類推できます。

こうした人々を「休み」に駆り立てるモチベーションは、仕事とは別に「やりたいこと」があるからです。趣味の活動かもしれないし、家族との時間かもしれないし、勉強のためかもしれない。その中身は、それぞれでしょうが、仕事以外の活動を持っているから「休みたい」のです。

そう考えると「労働は苦役」は行き過ぎとしても、労働以外の「活動」を持っていく事が、結果として年休取得率の向上、ひいては「ワーク・ライフ・バランス」の向上に繋がっていくのではないかと思います。

とはいえ、都会から見れば、遊ぶところが沢山有る地方において、パチンコ屋が大盛況…という現実を考えれば、無趣味な人に趣味を持たせることは難しいのが実状です。

その中で、今回のキッズウィークは「子ども連れの家族旅行」という、非常に解りやすく、かつ、多くの人々のモチベーションをかき立てる活動にフォーカスしています。この高いモチベーションを健在需要に繋げるための施策が「キッズウィーク」と整理できます。

また、この「キッズウィーク」を経験した子ども達は、より多趣味な人になっていく事も期待できます。
これも以前の調査ですが、2泊以上、連泊する人達の多くは、子ども時代に親の別荘などを通じて連泊経験をもっていました。つまり、連泊を経験することで、滞在する面白さを知り、それが、大人になってからの行動に影響しているわけです。
この関係を考えると、キッズウィークで、新たな経験をすることは、10年後、20年後の個々人の「ライフスタイル育成」につながり、結果として余暇市場の拡大にも繋がっていくことが期待できます。

Share