先日、ソフトバンクの孫社長が、提起した問題。

私は、もともとWi-Fiを「訪日客」のために整備することについては、否定的な立場です。
特に、行政が「訪日客の利便性向上」を理由に「全国的に」整備するというのは「違うだろ」と思っています。
いろいろな理由がありますが、単純にいえば「効率が悪い」ということです。

まず、日本人の多くは4G、LTEでネット接続しており、Wi-Fiへの依存度は低下中。そもそも、キャリアによるWi-FI整備は3G時代に、回線への圧力を回避することが目的であり、LTE、4Gへと移行する事で、その役目を終えることは自明でした。事実、MVNOを含めてキャリアによるWi-Fiサービスは縮小傾向にあります。

変わって台頭してきたのが、商業施設や行政によるWi-Fi整備です。ただ、良く知られているように、訪日客が訪れる場所は、かなりピンポイントです。前述のように、日本人の多くはWi-Fiの必要性が下がっている中、Wi-Fiの狭いサービス範囲に、一定量の訪日客が集まるような場所でないと、整備によるリターンは得られません。
パケット不足に悩む中高生にサービス提供したいというなら話は別ですが。

「将来に向けての投資」という話をされる方もいますが、それも難しい。なぜなら、Wi-Fiサービスは、純粋にハードウェアであり、ルーターは数年でおしゃかになります。つまり、導入してすぐに「フル稼働」という状況でなければ、意味を持ちません。さらに、4Gが本格稼働してくると、ちょっと古いWi-Fiの速度より早くなってきます。パケット節約という意味はあっても、わざわざ遅い回線に接続しようという人は少ないでしょう。

さらに、「プリペイドSIM」が拡がりを見せています。これは、iPhone6世代から「全世界で使える」スマホが一般化してきたことと関係しています。従来は、同じiPhoneでもいろいろなタイプがあり、海外に持ち込んでも現地で使えないということがあったのですが、現在では、そういうこともありません。これにあわせ、2週間とか1月とか有期限でつかえるプリペイドSIMが普及するようになっています。

当然、有料となりますが、Wi-Fi接続のようにバッテリーへ負荷がかからず、かつ、どこでも使えるという利便性は、多くの人に支持されるでしょう。特に、孫社長が指摘するように、日本は、どこにいっても4Gが使えるようになっており、その利便性はとても高い。

プリペイドSIMの対応は、国によって大きく異なりますが、先日、訪れたNZは、非常に進んでいました。なにしろ、到着時のDuty-freeコーナーでプリペイドSIMが購入でき、かつ、その場で、セットアップまでしてくれるのです。観光客としては、SIMフリーのスマホを持っていくだけで、ものの数分で、NZ仕様のスマホになります。
※日本のSIMは紛失しないように、厚紙のカードにセロハンテープでつけてくれます。

私が契約したのは、有効期限が一ヶ月で、1Gのパケット、200分の通話、200通のSMSがついているというものでNZ$25(約2,300円)。日本から、Wi-Fiルーターを持ち出す(レンタルする)場合の1日分くらいです。

しかも、このサービスは、MVNOではなく、ボーダフォンが自ら行っているため、回線も良質で、パケットの使用量なども簡単に確認出来るアプリも利用出来る。必要であれば、このアプリからリチャージも可能です。

日本で事前購入する必要すらなく、手軽にNZの人々と同様の通信環境が得られるというのは、凄いサービスだと思いました。

日本でも、ドコモなど一部キャリアで、実験的なサービスが展開されてきていますが、4Gの整備状況を考えれば、Wi-FIより、こちらを優先すべきでしょう。実際、NZでは、ちょっと街中から離れると3Gとなり、一気にパフォーマンスが低下しますので。

なお、日本は「電話」だと身分確認が必要になりますが、データ通信のみなら、身分確認無しでプリペイドSIMを販売できます。通話は、FBのメッセンジャーなどでも可能ですから、データ通信のみでも大きな問題とはならないでしょう。
※外国人へ、その理由を合理的に説明するのは難しいと思いますが。これも形骸化した規制の一つ。

ということで、Wi-Fiより4Gと私は考えているわけですが、他方、Wi-Fiの意味も「ピンポイント」で使えばとても有効だと思います。

私は大抵、1週間の海外出張だと2Gくらいのパケット契約をつけていきます。パケット残量を気にせず使っていくのには、それくらいあると安心だからです。

ただ、NZのプリペイドSIMもそうですが、プリペイドSIMは500Mとか1Gというあたりが主流で、それを超えると割高になっていきます。まぁ、どのキャリアもパケット負荷に悩んでいるということなのでしょうね。

今回は、1G契約だったわけですが、この容量だと、動画のアップロードとかアプリ更新などは、かなり気を遣う感じ。

こういう状況を逆手にとっていたのが、NZのアクティビティ事業者です。

この場所、クイーンズタウンから少し離れた郊外で、4G接続が微妙な状況。看板をよく見てもらうと解りますが、「水かかるかもしれないから危ないよ」と言いつつ、その下にFree Wi-Fiの文字が。実際、この周辺だけ、Wi-Fiが使えるようになっています。

で、こういうサービスがあると「おぉ、それならSNSへ」という動きが出てくるわけです。

こういう風に「SNSへのアップロードを期待して」Wi-Fiサービスを整備する例は、スイスでもありました。
※MTBコースで、ジャンプ台などを設置しているところだけWi-Fiを整備している。

日本でもプリペイドSIMの動きが顕在化してきている現在、なんでもかんでもWi-Fiを整備しようと考えるのではなく、「ここに太いWi-Fiがあれば、多分、SNS拡散に繋がる」といったスポットを選定の上、重点的に整備をしていった方が効果的でしょう。

なお、ホテルとか駅とか、訪日客が滞留するような場所では、Wi-Fiは必須だと思います。有事の際の緊急連絡手段ともなりますから。

Share