Discussion of Destination Branding.

ライフサイクルとパレート分布

「世の中の事象はパレート分布する」というのは、私の持論であり、本ブログでも何度か言及しています。

仕事柄、いろいろな「分析」を行う機会がありますが、面白いくらい「全体の2割で8割のシェアを占める」というように事象は分布しています。
※2:8だったり、3:7だったりはします。

例えば、以下はあるスキー場の売上を多い順にソートし、累積の売上シェアを算出したものですが、上位3割の営業日で、7割の売上を確保しています。

観光予報プラットフォームなどを使うと1日単位での宿泊客数を取得できますが、これを使って観光地を分析を分子手も同じような結果になります。

また、2000年代、宿泊観光旅行市場は縮小傾向にありましたが、個々の観光地を市町村別に、観光客数が「増えている」「横這い」「減少している」で区分してみると、その比率は概ね2:6:2でした。「減少している」地域は、いわゆる大規模観光地であり、この地域が大きく観光客数を減少させていることが市場縮小と連動する形でした。

さらに、同期間、宿泊需要に対する市町村別のシェアを見てみると全体の上位1割相当の市町村でシェアは7割、全体の上位3割相当で実に9割のシェアを持っています。

このように、パレート分布は強固です。

なぜ、パレート分布、つまりは大きく偏在することが一般的なのでしょうか。

それは、物事は連続的かつ指数的な変化をしていくからだと考えれば良いでしょう。

例えば、工業社会は、家内制手工業から始まりました。この段階では、各事業者に大きな違いは無かったでしょうが、ちょっと人手が多かったり、作業スペースが大きかったりした事業者は、他社より僅かながら生産効率が高まります(規模の効果)。さらに、同じ事業を繰り返すことで、無駄が減り更に生産効率が高まっていくことになります(経験効果)。これらは複利のように効果が拡がっていきますから、時間が経つにつれて大きな差となっていきます。

サービス経済においては、規模は必ずしも効率に影響しませんが、経験効果は同様にあります。さらに、地域という単位で考えれば、多様な業種が集積していると効率的な分業が可能となり、さらに、集積そのものが需要を生み出す(例:オフィスビルが多ければ飲食需要も増大する)事になります(集積の効果)。集積もいきなり起こるわけではなく、積み重ねとなることを考えれば、時間経過によって差は大きくなります。

需要面についても同じです。需要を左右するのは、所得と時間、ライフステージ、価値観ですが、これも時間経過の蓄積が大きく効いてくるからです。

つまり、変化に対するスタートのタイミングの違いが、時間経過と共に大きな違いになっていくわけです。

で、この変化に対してスタートを切るタイミングは、人によって異なります。
この辺を概念化したのが、イノベーター理論です。

これは変化への対応(新商品サービスへの対応)をイノベーター(2.5%)、アーリーアダプター(13.5%)、アーリーマジョリティ(34%)、レイトマジョリティ(34%)、ラガート(16%)に区分するものです。

この比率自体は、マジョリティを中心に正規分布に近い分布ですが、これに先ほどの時間軸による「福利」効果を加えると、パレート分布していく事になります。
それを示したのがプロダクトライフサイクル(観光地の場合、ツーリズム・エリア・ライフ・サイクル)となるわけです。

つまり、基本的に物事は偏る(パレート分布)するものであり、その偏りは時間的な蓄積によって生じているということです。
そう考えれば、その偏りを短期的に是正するというのは、非常に困難であるという事が解ります。特に、同じ方面で先行している人や地域を「後から追いかけ、並ぶようにする」というのは、難しい。なぜなら、相手は「複利」で指数的な発展をしていくからです。
※ここにも「相対性」が出てきます。

そう考えれば、パレート分布において「ロングテール」になった地域は、頭となる地域をおいかけるのではなく、頭とは異なる方向性を持ち、その中で「頭」をとっていくということが有効になります。
これがニッチャー戦略とかブルーオーシャン戦略といったものに繋がっていきます。

ただ、一方で、サービスにおける「新しい市場」というのは、概念的なものであり、それが市場に認知される(顕在化される)には、大きな壁があります。21世紀に入り増大した「形容詞観光」は、そうした概念にラベルをつけ認知しやすいようにしたものですが、その多くは供給者側の都合でのラベル付け、定義づけとなっており、需要側の認知は拡がっていません。

その意味では、効率性を考えれば、自身で新規市場を作る、獲得するのではなく、フォロワー戦略を徹底し2番煎じ、3番煎じで行くというのも選択肢の一つとなります。

この辺は、それこそ「リスク」をふまえてもイノベーター、アーリーアダプターになるのか、レイトマジョリティ、ラガートでローリスク・ローリターンを狙うのかという話になります。

いずれにしても、今、我々がみているものには時間的な蓄積という背景があり、それによって、物事はパレート分布しているのだということを意識しておくことが重要でしょう。

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