インバウンドの早期回復を狙っている地域(行政、DMO)は、把握しておいた方が良い情報。
デジタル版「健康パスポート」は海外旅行再開の切り札になるか? 5つのQ&Aで使い方やリスクをまとめた【外電】
ワクチンやPCR検査の増大によって「リスクが低い人」を選別することは可能になってきている。国際旅行に携わる主体は、この「リスクが低い人」を再起動時の重要ターゲットとしたく、現時点では航空会社が、その対応に乗り出している。
が、この記事にあるように、現時点では、それらは航空会社の対策であって、国などが認めたプロトコルに従ったものではない。それを各国が入国(帰国を含む)の際の重要な情報とするのか否かは、まだ、未知数。
また、そもそも、そういう「民間」ベースのオンラインデータが、どこまで信用できるのかという問題もある。
例えば、日本でもワクチン接種が始まったが、ワクチン接種しましたという情報が、なんらかの形でパスポートなり、航空会社アプリなりに転送される(連動できる)という話は出ていない。
裏側では個人番号で管理されているとのことだから、そこから引っ張ればできそうだけど、多分、そういう仕様にも発想にもなっていないだろう。
となると旅行者自らが、なんらかの方法で、登録することになるが、そういう情報を「信用」できるのだろうか。
さらに、PCR検査も、ワクチンも複数種類が存在している。特にPCR検査は、多種多様(なよう)で、基準は曖昧。日本でも広がりだしている「自分で唾液を取って」方式だったら、意図的に陽性を出さないことも可能。
一ヶ月前の検査結果を、シレッと入れ込む人もいるだろうし、悪意がなくても、うっかりミスのポイントはたくさんある。
こういうことを考えれば、これらの取り組みは、航空会社が「リスクの低い人」を特定する(フィルタリングする)ことにはつながっても、これに対応した旅行者が、かつてのように自由に世界を飛び回れる…という話にはならない。
観光領域の議論で生じがちなのは「これだけ予約が入っている」から「国際旅行は復活する」というロジック。確かに需要がなければ、復活も出来ないのだけど、観光旅行に対する需要は、そもそも、ずっと高位にある。国内での調査でも「やってみたいこと」の上位は、コロナ禍以前から、ずっと観光だ。
が、実際には、宿泊観光旅行にでかけているのは国民の半分しか居ない。旅行には行きたい!けど、行けないというのが市場の構造であり「行きたい」という部分だけを取り上げても、あまり、意味が無い。
特に、国際旅行の場合は、需要よりも、各国の規制のほうが大きな課題。レジデンス・トラックやビジネス・トラックなどの取り組みも遮断されてしまったことは、記憶に新しい。
相対的にみて、日本は欧米より感染は抑えられている一方で、東アジアの中では高め。東アジアの中でみれば、むしろ「危険」と思われているのは、日本の方。
さらに、日本よりも感染拡大が進んでいるEUが、防疫を理由に、日本からの入国制限をかけるということも生じるなんてことも起こる。
国と国の関係は、科学で動くのではなく、慣行や相対的な力関係、面子が複雑に絡み合うことになる。場合によっては、「観光需要」をちらつかせて、他の外交問題へ切り込んでくる国も出てくるだろう(それが外交というもの)。
コロナ禍は、既に全世界の問題なのだから、本来であれば、WHOとUNWTOあたりで、検疫に関わる国際基準をつくり、それに準拠…みたいなのが理想だが、非現実的だろう。
そういったことを考えると、FTAではないが、2国間で丁々発止の交渉(国内対策含む)をしながら、じわじわと開けていく…ということが現実的な解決策となろう。
これには、まだまだ、時間がかかる…と思っていたほうが良いと思う。
が、北海道や沖縄県は、だからこそ、実は「やれること」があるのではないかとも思っている。
それには、地域内での観光と医療の連携体制、そして、住民の理解が不可欠だが、取り組む価値はあるだろう。