デルタ株(インド株)が世界的に猛威を奮っています。

CDCは、このデルタ株が、従来株に比して約4倍(従来株は1人から2人が感染ー>8−9人が感染)の感染力を持つとレポートしています。

私は、2020年9月から2021年5月末までの人手量(グーグルの商業施設)と、平均水蒸気圧(気象庁)と、新規陽性者数(2Wでの感染拡大率/2W前比)の関係について分析を行っています。その結果、以下のように、相当量、有意な推計モデルを得ました。

このモデルによる推計値と、実績値については、次図のようになり、高い連動性が確認できます。

この結果から、COVID-19の感染は、人出と気象条件(平均水蒸気圧)が大きく影響することが確認できていました。そして、夏に向けて、湿度は上がっていくため、ワクチン接種無かったとしても、6月以降は感染は抑制されていく…と考えていました。

しかしながら、その推測は大きく崩されることになります。

6月上旬は乖離率は100%前後、すなわち、推計モデルV2に沿って動いていましたが、下旬になると乖離率は徐々に上がっていきます。単回帰分析をしてみると、1日あたり4%ほど乖離幅は拡がっていきました。

この理由については判然としなかったのですが、先のCDCのレポートによって「デルタ株」に置き換わっていったことで、2021年5月までの推計モデルでは対応できなくなったと考えることができるようになりました。

仮に、その仮定が正しいのであれば、かなり厳しい状況になります。乖離が今後300%まで拡大するとすれば、8月中旬には10,000人を超え、8月下旬には40,000人を超えると推計されるからです。

ワクチン接種者は重症化率が大きく下がるため、陽性者数ー>感染者数ー>重症者数ー>死亡者数のリンクは鈍くなっているとは言え、陽性者数が膨大に膨れ上がれば、いずれ、重症者数や死亡者数にアタリが出てくるのは避けられません。

仮に、ワクチン接種者の重症化率が1/10になるとしても、感染者が10倍になれば、実数では並ぶことになってしまうからです。

しかも、現在は、平均水蒸気圧が最も高い時期であり、晩秋ともなれば、さらに感染拡大することになります。

かといって、デルタ株の吹き上がりを人流だけで抑え込もうとすると、私の推計モデルで考えると2020年4−5月の第1回緊急事態宣言並みの人流抑制を、2ヶ月程度、行う必要があります。率直なところ、それを行ってしまったら、感染は抑制できても、日本経済が持たないでしょう。

これが、現時点で得られる外形的なデータから推測できる未来です。

新しい構図

私は、ワクチン接種の拡がりによって、この秋にはコロナ禍から離脱し「元」の世界に戻っていくと見ていました。

が、デルタ株の拡がりによって、先行きが見えなくなってきました。

この状況に、新しい変数となるのが「ワクチン接種の有無」となります。

高齢者および基礎疾患者から一般接種が進み、7月末には、希望する高齢者の接種は終了。並行して、職域接種も進んでおり8月末までには国民の40%ほどは2回接種が終了となる見込み。

他国の例をみても、50%を超えると、接種率が伸びなくなることを考えれば、9月中旬くらいには、その水準に達し、一種の小康状態となるでしょう。社会的には、もっと接種率を高めたいが、被接種者にその意欲は無い、または、低いという状態です。

一方で、感染状況で見れば、新規陽性者数は増大しているが、死亡者数は一定の水準以下にあるという状態。

この状態となったら、ワクチン接種者から「いつまで、社会に行動抑制を促すのか」という意見がでてくるでしょう。もっと言えば「なぜ、ワクチンを拒否する人につきあわされるのか」という意見です。

ワクチン接種者が50%を超える、つまりは過半数となれば、マジョリティは接種者です。マイノリティとなる非接種者の中には「そもそも、コロナなんてなんの問題もない」という人が一定程度いることを考えれば、政府が緊急事態宣言やマンボウを展開しても、支持を得られなくなっていくと考えるのが自然です。

実際、7月の緊急事態宣言発出では、内閣の支持率は上がりませんでした。また、酒類の販売に関する脱法的な措置も全く受け入れられませんでした。オリパラなど、他の要素が絡んだ結果であることは否めませんが、感染拡大に対する強行的&社会的な取り組みが指示されなくなってきていることの現れかもしれません。

デルタ株の出現によって、新規陽性者数を抑え込むことが現実的に難しくなりました。ただ、デルタ株は(おそらく)毒性が弱まっており、かつ、ワクチン接種者がマジョリティという状況に我々は置かれつつあります。

社会として「新規陽性者数」をどのように捉えるのか。立場によって異なる意識を、どのように扱っていくのかが大きな課題となっています。

今後の観光

ワクチン接種率が相対的に高い欧米では、バケーション・シーズンに向け観光を再起動させてきています。これは、リスクとリターンとを天秤にかけた際に、バケーションを止めるよりも、対策をした上で動かした方が社会として得るものが大きいという判断です。

対して、日本の観光は、極めて曖昧な状況に置かれています。

緊急事態宣言が出される中、リスクとリターンを示した上で、正面から観光を再起動させている地域は乏しく、域内(県内)での観光需要の継続的な掘り起こしを行ったり、個別施設の取り組みを黙認しているという状況にあります。

沖縄県では、健康パスポート的に、事前PCR検査実施者に対するインセンティブを展開する「オキナワ・ブルー・パワー・プロジェクト」を動かしています。が、後援に行政が入っているものの、あくまでも民間事業者の自主的な取り組みという位置づけの十分条件であって、必要条件となる海外のソレとは似て異なるものです。

1年以上かかっても、旅行や移動のリスクを左右するのは何か。どうすればリスクを下げることが出来るのか、それによって社会は何が得られるのかといった事を明示し、社会として、それに向けた行動を促進したり規制したりすることができない状態にあるわけです。

これは、日本において、コロナ禍に対する検疫体制と、観光振興(または抑制)とのリンクが施策レベルで議論され確立されていない(一体化されていない)ことが理由でしょう。観光が産業として、または、文化として地位を確立できていないことの証左かもしれません。

よく「県をまたいだ人の移動は自粛」という話が出ますが、通勤通学、帰省、出張、観光旅行、それぞれでリスクは違いますし、それを止めた時の社会的な損害も違います。観光旅行にしても、マイカーで家族で訪れ、感染症対策が徹底されたホテルで過ごすのと、グループで宴会目的で観光地に繰り出すのでは、全く異なります。

そうしたものが区分されず、1年以上にわたり「県内ならOK」という議論に留まっているのは残念なことです。

ただ、これを嘆いていても仕方ありません。

幸いなことに、観光に対する「需要」は根強くあります。この「需要」を、コロナ禍が残る中で、社会的にも、地域的にも、そして、事業者的にも「安心」出来る形で「再起動」させていくことが、観光に関わる主体に課せられた責務であると私は考えています。

レスポンシブルやサスティナブルは、その有力なキーワードとなりますが、残念ながら、こうした「対象となる顧客を限定する」ことに、日本の制度や姿勢は追いつけていません。我が国において、観光においてもマーケティングが重要だと叫ばれて10年余り経ちますが、「来てくれるなら誰でも良い」というのが本音の地域や施設は多く、ダイナミックプライシングのある種、悪用によって、価格競争が激化してきているのが実情です。また、地域に、そうした「安売り」事業者が参入することを防ぐ手段や、供給過剰を抑える手段も「真っ当な」法的制度に乏しく、思いがあっても実行できないという問題も抱えています。

が、前述してきたように、この夏以降、おそらくは、来春まで、ワクチン非接種者を主体とした感染爆発は避けられず、また、ワクチン接種者であっても自制的な行動が引き続き求められていくことになります。

そのため、このままいけば「県内ならOK」のまま、来春を迎えることになります。

それを避けるには、ワクチン接種者 and/or PCR検査陰性者に顧客セグメントを実効的に限定し、その上で、顧客と一緒に(辛くない)感染症対策を展開していくことが最低限必要です。これは、顧客にも負担を覚悟を持ってもらうことになります。

既に、一部の地域、施設では、そうした混沌の時代に向けた対応を始めています。

この1年余りのコロナ禍の中で、我々は多くのことを学んだはずです。ゲームチェンジャーである「ワクチン」を脅かすデルタ株が出てきた以上、「嵐の過ぎ去るのを待つ」のではなく、レスポンシブル/サスティナブル・ツーリズムの実現に向けて、官民パートナーシップを展開していくことが期待されます。

自分たちで動いていくことが重要と思います。

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