<キッズウイーク>「どこの国の話?」政府構想にブーイング

基本的に、このところ、政府からの提言は、ネガティブにとりあげられがちですが、これについては、もう少し、ポジティブに捉えて欲しいなぁと思います。

  • まず、夏休みなどを移動させる事が前提のため、子どもの「休日」が増えるわけではありません。必然的に、学童保育などの保育日数がトータルで増えるわけではありませんし、親が「子どもの面倒を見るために休まなければいけない」日数が増えるわけでもありません。
  • 当然、「塾や部活が設定されるだけ」というのも、仮にそうなったとしても、塾や部活のトータル日数が増えるわけではありません。
  • 一方で、現状、平日で30日程度ある「夏休み」を、25+5日に分割することになるため、サービス業にありがちな「忙しいときに休むことの問題」が軽減されます。
  • なぜなら、仮に、この制度が導入され、ある市の小中学校の夏休みが7月末スタートとなり、その分が、9月末に移動したとします。この学校に子どもを通わせている親は、夏休みの年休を9月末に設定した上で「一般的な夏休み期間」は、通常業務とすれば、忙しいときは出社でき、繁忙期を過ぎたタイミングで休むことが出来るからです。むしろ、子持ち職員が、「一般的な夏休み期間」に休みをとることの緩和になるし、そこで生まれた余裕は「これまで、子持ち職員に遠慮して、夏休みをずらしていた一般職員」が休みを取れることにも繋がる可能性も高いでしょう。
  • 「子持ち職員だけ9連休なんて」という批判も、あたりません。
    前述のように、子どもの夏休みを分割しているだけであり、分割後の25日の中から休みをとるか、5日のほうで休みをとるかは、各家庭の選択となります。これに伴い、子持ち職員に特別年休を付与しているわけではなく、有給休暇を利用となります。
    一般職員は、そもそも30日縛りが無く(弱い)のですから、子持ち職員優遇にはあたらないでしょう。むしろ、現状の「一般的な夏休み期間」に固定する方が、一般職員へのしわ寄せは大きいのではないでしょうか。
  • 「親はそう簡単に休めない」というのは、その通りと思いますが、これは、現状の「一般的な夏休み期間」であっても同様です。前述の例で言えば、7月末の5日間(土日を入れて9日間)は、子どもが休みでも、親は仕事という人は多かったでしょうから。
    つまり、今でも「休めていない」のですが、子どもの休みが分割されることで、それにあわせて、新たな「年休取得」を促せないかという事が狙いとなります。
  • 例えば、製造業などでは、お盆時期に固定で夏休み設定されている場合も多く、それを超えた日数や、隣接する他の時期に取得することは難しい部分があります。しかしながら、5日間が「一般的な夏休み期間」から離れて設定されれば、5日間連続は難しいとしても、夏休みとは違う形で、1日や2日、年休を入れ込める可能性は高まるのではないでしょうか。
  • また、サービス業は、「一般的な夏休み期間」は、かき入れ時ですが、前述のように、これが分割されれば、繁忙期では無いときに休みを取り、子どもと過ごすことの可能性が高まるでしょう。
  • 「休みが増えれば非正規は収入減に直結する」というのも、非正規を出勤日に収入比例するパート、アルバイトとすれば、その通りですが、そもそも夏休みの分割であり、子どもの休日数増加ではなく、親が「子どものために休まなければいけない」日数をふやすものでもありません。つまり、非正規雇用の親が休みを増やすかどうかと、本制度とは関係がありません。

本政策は、「働き方改革」という視点でみると、「子どもの休み」という制限をうけていない一般職員を含め、年次有給休暇の取得日数が低い(概ね半分)という実状を、一発で解決するような施策ではありません。
直接的な対象は、小中学校に通う子どもを持つ親に限定されますし、仮に夏休みが分割されたからといって、親が休まなければいけない訳ではない(現状の学校夏休みと同じ)ので、30日でも、25+5日でも、年休の取得日数は増えないかもしれないからです。

※現状、夏休みの平均日数は4.4日(参考)

ただ、「全ての人に有効な施策」は、事実上存在しないことを考えれば、有効そうな施策を、有効そうなセグメントに向けて展開していくことが求められます。その意味で、今回の施策は、一定の意義があると思っています。

しかしながら、強く留意すべき事は、夏休みをどう分割し、どう分散させるのかということです。

仮に、一都三県がまとまり、同じように分割・分散させてしまったら、それは単なる夏休みの移動となり、ほとんど意味がありません。

出来るだけ小さい地域単位として、夏休みの分割方法、分割した夏休みの移動先(分散先)も出来るだけ多様性を持たせることが重要となります。
これは、相当、各担当者が頭を悩まし、胃を痛くする取り組みとなりますが、この多様性確保が出来るか否かが、本政策の政策に直結するでしょう。

今後の議論に期待したいところです。

 

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