Discussion of Destination Branding.

DMOとDMC

先日、私がコーディネーターとなって「観光文化234号」を発刊した。

デスティネーション・マネジメントとはなんぞやというテーマで構成した特集だったが、知人から一つ質問を受けた。それは「小さい地域だったら、DMOがDMCの機能を内包しちゃって良いのでは?」というもの。

DMCは、DMO同様に海外と日本では使われている意味合いが異なるし、DMOのMもダブルミーニングなので定義は一定では無いが、DMOとDMCという関係で見れば、両者の違いはOrganizationかCompanyということである。
どちらも「民間組織」ではあるが、DMOは非営利型の組織であり、DMCは営利型の組織であるということになる。

非営利型組織でも、営利事業を行うことは可能であるため、DMOの中にDMC機能を内包することは法人として問題はない。実際、着地型の旅行商品や物産品などの提供販売を行い、それを収益としている(日本版)DMOは多い。

ただ、個人的には、両者は明確に分離した方が良いと思っている。

1.民の起業機会を奪う恐れ
観光文化234号」でも示したように、90年代後半から、観光市場は大きく変化している。こういう「変化」は、従来から事業を行っている事業者にとっては脅威となりやすいが、新しいビジネスチャンスでもある。そのチャンスをモノにした事業者は、先行者として新しい市場環境において競争力を持った展開が期待できる。仮にそうした事業者が地域内で展開できれば、地域の持続的な振興にも繋がりうるが、DMOがCの業務を内包してしまうと、そういう民の起業機会を奪うことになる。

2.全体最適と個別最適
DMOは、地域の観光振興を目的とする。観光収入か人数か、または、CSか。その具体的な目標設定は地域それぞれであろうが、その目標達成のため、資金や人材を傾斜配分していくことがDMOの最大のミッションである。ただし、ここで行うマーケティングやマネジメントは、直接的なリターンは無く、その恩恵は薄く広く多くの関係者にもたらされる。そのため、DMOは補助金や会費といった形で事業費をえる。つまり、事業と収益の関係は間接的であり、だからこそ、DMOは俯瞰的な立場から全体最適を目指すことが出来る。
これに対し、DMCは、実施事業から直接的な収益を得ようとする。しかしながら、今の時代、競争は苛烈で、持てるリソースの多くの集中的に投下しなければ黒字化は望めない。
DMOが、その経営リソースをC事業に振り分ければ、それだけ、個別最適志向が高まり、本来のDMOミッションの遂行は厳しくなるだろう。

3.利益相反の危険性
仮に、なんらかの特殊事情によって少ない経営リソースで収益が上げられるような状況だった場合はどうか。そういう状況であれば、当然、民もその事業に参入したいと考えるだろう。その際、DMOがその事業への参入を許さない、または阻害する場合、「1」であげた状況と同じとなり本来趣旨にそぐわない。かといって、民へ開放してしまっては、せっかくの収益源をDMOは失うことになる。
また、競合となる事業者が現れた場合、DMOは自身の収益を確保するためには、地域内外の事業者と「競争」しなければならない。それらの事業者も地域の観光振興に貢献しうるにもかかわらずだ。これは、DMOの位置づけとして適切とはいえないだろう。


では、どうすればよいのか。
地域にDMC的な取り組みが必要な場合、DMOの中に持つのではなく、そういう志、事業展望を持っている個人や事業者に対する支援をDMOが行うようにしていくことが有効だろう。

これは言ってみれば、普通の産業振興策であるわけだが、行政が行うそれと異なるのは、単純に補助金などを出すのではなく、DMOが間に入り、観光事業の特性や、観光面から見た地域の特徴などについて情報提供する事にある。これによって、より効果的にDMC事業のスタートアップや経営強化を支援することが可能となることが期待できる。

こうした取り組みを行っている事例としてハワイのHTAがあげられる。HTAでは、地域のコミュニティ組織に対して、観光動向の情報提供とセットで補助金を支給している。これによって、地域でコミュニティを活かした観光魅力と、受け入れ体制の充実をはかっている。
HTA自身が行うのではなく、各地で意欲を持っている人達を支援し、組織化し、事業化させていくことで、観光振興に対する厚みをつくり出している。

なお、行政やDMOが来訪目的になるような施設を建設し、その運営を行うということは否定しない。例えば、会議場施設は、オフシーズン対策として有効な施設であるが、それ単体で採算を取ることは非常に困難である。会議場があることで来訪する人々の消費活動の総和をもって、採算は考えるべきであり、この構造は、前述したマーケティングやマネジメント活動と同様である。加えて言えば、単体では赤字のため、参入しようという民も居ないし、将来的に黒字事業となる見込みも無いのでスタートアップ機会を奪うことにもならない。
ただ、会議に来訪する人達のロジ支援は、十分に採算に乗る事業であるため、これはDMOが抱え込むのではなく民に開放すべきだ(米国のDMCは、そのための会社である)。

DMO議論とあわせて、改めて、観光振興の戦略と実現手法について検討していくべきではないだろうか。

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One thought on “DMOとDMC

  1. 土井 照夫

    DMO とDMC の定義に同感です。もともとDMO は行政や観光協会が担うべきものだしDMCは全くの民間か組合のような共同体の任務ではないかと考えています。行政はDMC などからの提案に対し予算を付与するか否か判断すれば良いのです。短期間で担当が代わる今の行政では継続的な観光推進の遂行は難しいのが現状です。民間に託すべきものは民間に任せた方が良いと思う。