Discussion of Destination Branding.

DMOとDMC その2

前回、DMOとDMCについて取り上げたところ、いろいろ反応をいただいた。
ので、もう少し、本テーマについて掘っておくこととする。

そもそもDMCとは何なのか。

DMCは、例えば、英国にあるDMC団体「UNLIMITED」では、以下のように定義している。

A DMC provides local destination knowledge and they act as a extension of your company.
A DMC (Destination Management Company) offer the following logistic services in their destination; Meet and Greet, Transfers / Transportation, Hotel Accommodation, Restaurants, Activities, Excursions, Conference Venues, Themed Events and Gala Dinners. Naturally, DMCs assist with overcoming any language barriers.

また、米国のDMC団体「ADME」では、以下のように定義している。

A Destination Management Company is a professional services company located in their destination which specializes in local expertise and resources. The DMC is your strategic partner to provide creative local experiences in event management, tours/activities, transportation, entertainment and program logistics.

いずれの定義も共通しているのは、その地域(デスティネーション)に対する高い知見を元に、顧客にあわせて多様なサービスをアレンジする(ロジスティックスを担う)ということだ。

では、ここで言う「顧客」とは何か。

それは、会議やコンベンションの主催者というのが、暗黙の了解である(付随するイベントを含む)。

例えば、ADMEでは「Why Use a DMC」において、DMCの利用価値を示しているが、この「読み手」、すなわち顧客は、会議やコンベンションの主催者から委託され調整する「ミーティング・プランナー」としている。
また、DMCのチェックリストとしてまとめている「DMC Competencies」も、会議やコンベンション需要への対応を想定したものとなっている。

そのミーティング・プランナーの団体「ISMP」のDMC説明資料では、冒頭において”A Destination Management Company (DMC) is a locally based, for-profit tourism business whose
function is to provide groups – and individuals – with services to meet their travel, meeting, and
entertainment interests and needs at a specific time and place. ”としており、DMCが必ずしもグループ客(=会議、コンベンション、イベント)だけを対象としたものとしてはいないが、資料全体としては、ミーティング・プランナーとDMCとの関わりを主体としており、DMCが会議やコンベンションなどと密接な関係があることを示している。

つまり、DMCを広義で捉えれば、個人需要向けも含まれる場合もあるが、敢えてDMCと特出しする場合、それは会議やコンベンションなどのグループ需要を対象としたものだということだ。

では、DMOとDMCはどういう関係性なのか。

それについては、米国のDMO団体「DMAI(現:Destination International)」の人が、そのものズバリのコラム(CVB, DMO, DMC: What’s the Difference?)を出している。
やや長文ではあるが、端的に言えば、CVBやDMOはデスティネーションに需要を呼び込む業務を行い、DMCはその需要を実際に受け止め動かすという関係性にあり、相互の連携が重要としている。

また、先に挙げたADMEの加入要件の一つには「Membership in either CVB/DMO, Tourism Office or Chamber of Commerce」とあり、DMCはDMOなどの会員であることが示されている。

この他、ミーティング・プランナー向けの資料では、会議開催場所を検討する場合、まずは、地域のDMOなどにあたり、そこからDMCを紹介してもらいましょうといった指摘も散見される。

すなわち、DMOはマーケティング、DMCは実際の受け入れという構造にある。

DMCは、実際の受け入れ業務を担うため、クライアントである会議・コンベンション主催者などから直接的な収益が得られる。言い換えれば、DMC事業は、クライアントからの発注額に応じて各種業務を行うフィービジネスである。だからDM「C」となる。
これに対し、DMOは、集客のためのマーケティングは行うが、これ自体は収益を生まない。そのため、その活動資金は集客の成果として収益を得る事業者(DMCもその一つ)から提供いただく事になる。だからDM「O」となる。

観光による地域振興では、集客だけでなく、それが収益に変わるようなビジネスが地域に必要となる。DMCは、クライアントの要望にあわせて、有形・無形、営利・非営利を問わず、地域のリソースを組み合わせ、提供する事でフィーを得る事業者であり、地域リソースのポテンシャルを引き出す存在でもある。

DMOは、基本的に、一つのデスティネーションに一つだが、DMCは複数あっても構わない。特定の会議に特化して棲み分けるところもあれば、地域内の同業者をライバルとして競い合う関係もあるだろう。これは、民間事業者として、自由である。

ただ、基本的な立ち位置として、クライアント側に立つということは意識しておきたい。
冒頭でしめした「定義」のように、DMCの本質的な価値は、クライアントが持ち得ない「地域に対する深い知見」である。その「深い知見」をクライアントのニーズにあわせて活用することが重要であり、地域側、または、DMCが売りたいモノを恣意的に押しつけるセールス活動とは根本的に異なる。

その意味で、特定の交通事業者や宿泊事業者が、自身の施設利用を前提にDMC事業を展開するというのは、ちょっと異なる。

また、DMCがその収益力を持って、Oの活動を展開するというのも、難しい。
前述したように、DMCは純民間の営利事業者だから、Oの活動が出来るくらい収益性が高い事業であれば、事業者が新規参入し、競争が生じる事になるからだ。
さらに、海外のDMCが会議やコンベンションなどに対応しているのは、経済効率的に、グループ需要でなければ一定の収益を得がたいからだ。つまり、DMCの事業上のフォーカスはグループ需要、ビジネス需要となるが、Oとしては、FIT化の進む個人需要、プレジャートラベル需要への対応も進めなければならない。これは営利法人としての大きな矛盾を抱えることになる。

なお、当然ながらDMOやDMCは、海外の概念である。そして、観光は絶対的なものではなく「どういった需要が対象となるか」ということで、大きく内容が変化することになる。
すなわち、対象需要が異なれば、自ずとDMOやDMCの位置づけも変化する訳で、海外の定義をそのまま日本に当てはめなければいけないわけではない。

ただ、DMCについては、海外の人達は「会議やコンベンション、イベントの対応を、地域に精通したプロが対応してくれるところ」と捉えているので、これとは異なる活動をしている事業者がDMCを名乗ることは避けた方が良いだろう。特に、国際会議誘致を考えているような地域においては、国際的に通用するDMCの概念で対応するようにしないと、混乱、不信を招くことになる。

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