ローカルにグローバルがやってくるホスピタリティ産業

地域住民の立場(視座)から就業先が、ローカルからグローバルに拡がるということを、地域の立場(視座)から見ると、地域にグローバルな人材とビジネスモデルがやってくるということになります。

これは「地方創生」の観点からも、大きな意義を持った展開です。

これまでも産業誘致による地域振興は志向されてきましたが、3つの大きな問題がありました。

1点目は、進出する企業側にとって、進出先の地域は「どこでもよい」ということです。一時、シャープが「亀山モデル」を展開しましたが、通常、どこの工場で作られているかということは、製品ブランドに関係ありません。そのため、地域に要求されるのは安価な労働力や土地、インフラです。極論を言えば、進出企業にとっての地域の魅力は、どれだけ自分たちに地域は奉仕してくれるのかという話になります。

2点目は、仮に誘致に成功しても、その企業の国際的な競争力が低下すると、その企業は撤退してしまうということです。例えば、亀山工場を持っていたシャープは身売りしていますし、大分県杵築市ではキヤノン工場の撤退に伴い大量のアパートが空き室になっています。これも地域の事情は関係ありません。海外で言えば、デトロイトはGMの没落によって、ゴーストタウンのような様相になっています。

3点目は、それでも企業が持続的に立地した場合、地域にはローカルな雇用と税収がもたらされます。それが振興効果ということになる訳ですが、企業の活動が地域コミュニティに与える影響は限定的です。例えば、亀山工場があるからと言って、住民の技術系スキルが上がる訳ではないし、国際的なコミュニティになる訳でもありません。

これに対し、ホスピタリティ産業の場合は、まず、そこが魅力的な観光リゾート地であるかどうかということが重要であり「地域ありき」です。集客力の見込める地域では、むしろ、進出を抑制する方策を考える必要があるくらいです。

次に、「集客力のある地域」であれば、仮にAというホテル・チェーンの経営が行き詰まったとしても、その穴はAを衰退させたBホテル・チェーンによって穴埋めされます。つまり、地域にとって独立変数である企業の競争力に左右されません。重要な事は、地域の魅力、集客力という地域の従属変数です。

最後に、ホスピタリティ産業は、その地域を資源に企業活動を行うため、良くも悪くも地域コミュニティとの関係性が密接になります。そのため、グローバルな人材とビジネスモデルが地域に入ってくることで、地域の既存事業もグローバル化、新モデルへの転化が促されます。

例えば、ニセコ・エリアで考えて見ましょう。
公示地価の上昇率が示すように、この15年余りで、同地域には多くの建設投資、事業進出が進んでいます。スキー場は、国内各所にあるにも関わらず、投資がニセコに集中するのは、ニセコが地域として圧倒的な知名度、ブランド力を有しているためです。

ニセコにおいても、企業の撤退はありました。東山エリアは、もともと西部グループの物でしたし、アンヌプリにはJALが入っていました。東急は今でも残っていますが、彼らが開発しようとしていた花園エリアは、香港資本の所有です。国内有数の企業が撤退、または、規模縮小したにも関わらず、同地域が盛り上がっているのは、ニセコが地域として集客力を持った地域であると多くの事業者に認識されているためです。

さらに、中小を含めコンドミニアムやホテル、飲食などのホスピタリティ産業が海外から入ってくることで、国内資本の東急なども、そのビジネスモデルを変えてきていますし、これをビジネスチャンスとして、国内の中小資本も従来日本には無かったようなビジネスモデルでの事業展開をしてきています。これが更なるホスピタリティ産業の厚みとなっています。

こうした変化は、地元の人から見れば、自分たちを中心に「世界」が集まってきているという感覚になります。

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