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宿泊事業との付き合い方

変わる地域と宿泊事業の関係

2018年6月、いわゆる民泊新法が施行されます。

これによって、地域の宿泊施設事情は大きく変化するとも言われていますが、民泊事業に限らず、宿泊事業は、非常に多様化しています。

これまで、宿泊客の呼び込みが、地域の観光振興に有効とされてきました。その理由は、観光消費の内、最も消費額の高い分野であり、また、宿泊事業は雇用や仕入れにおいて、地域経済との繋がり(波及効果)が大きく、税収にも繋がっていくことにあります。

しかしながら、宿泊事業が多様化してくると、宿泊客が地域を訪れ、宿泊費を支出したとしても、必ずしも、それが地域の雇用や仕入れに繋がらなくなっていきます。

つまり、宿泊事業のタイプによって、地域との関わり方は大きく変化する訳です。

一方で、地域の集客において、宿泊施設は依然として重要な位置づけにあります。宿泊客は、宿泊消費のみではなく、飲食や物販にもプラスの影響を及ぼしますし、旅行先を宿泊施設で選ぶ事は少なくありません。なにより、宿泊施設という「ストック」が無ければ、地域で宿泊客を受け入れられる事は出来ません。

つまり、これからの観光地振興においては、単に宿泊客を呼び込むというマーケティングに留まらず、宿泊事業の特性をふまえ、地域の宿泊施設の集積や構成の誘導についても気を配る必要があります。

多様化する宿泊事業

事業の基本形とバランスシート

宿泊事業の多様化は多岐に渡ります。それを理解するには、まず、基本的な財務、特にバランスシートの概念を理解することが必要です。

バランスシートとは、事業体のある時点の「資産」を左側、「負債・純資産」を右側に置き両者を対比させることで、財政状況を明らかにするものです。

資産は、大きく流動資産、固定資産に別れます。流動資産は、現金や日々の事業活動の中で使っていく資産であり、固定資産は事業を実施するために長期にわたって事業体が所有する資産となります。

この資産(流動資産+固定資産)が、その事業体の金銭的価値の総量を示す訳ですが、それが、どういった資金で構成されているのかというのが右側で、外部から調達していて返済の必要がある負債と、自身が株式発行などを通じて調達した純資産となります。

なお、よく話題となる「内部留保」は、この純資産の中で計上される物であり、流動資産の現金とは別物です。

宿泊事業は、どんな事業形態であれ、宿泊するための施設・設備、不動産が必要となります。これは、「固定資産」となります。不動産の価格は、一般に高額ですから、固定資産が流動資産を大きく上回るというのが基本形となります。

例えば、プリンスホテルグループの2017年3月末の決算では、流動資産は235億円なのに対し、固定資産は6,066億円と26倍近い差があります。

固定資産は、事業実施には必要な資産ですが、それ自体が直接的に利益を生み出す訳ではありません。その固定資産を毎年の営業戦略の中で利用/稼働させながら、少しずつ利益をあげていくということになります。

多額の固定資産に対する初期投資を、自己資金だけで行うのは困難ですから、右側の「負債・資本」において、負債(固定負債)が大きくなりやすい。負債が大きくなれば、低金利時代とはいえ、負債の返済が経営を圧迫しますし、何より、財政的な自由度が狭まることになります。

例えば、前述のプリンスホテルグループの決算の場合、総資産(=負債と純資産の合計)が6,300億円なのに対し、負債となる短期借入金だけで2,800億円と半分近くを占めます。

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One thought on “宿泊事業との付き合い方

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