ホテルブランドの不動産への展開

投資サイドからのホテルオペレーターへの注目が高まる中で、ホテルオペレーターも、また、自身の収益力を高めるていく取り組みを本格化させていきます。

この結果、国際的なホテルチェーンは、ブランディング活動を活発化させていくことになります。これによって、これまで個と個の繋がり(個人的な繋がり)が強かった宿泊者と宿泊事業者の関係性が、消費者と企業という関係性に変わっていきました。

つまり、「○○旅館の女将さんの○○さんによるおもてなし」や「名物支配人の○○さん」ではなく、「○○ホテル」というだけで、一定の期待値が醸成されるようになりました。

こうしてホテルのブランドが消費者の中で確立されていく中で生じたのが、不動産事業へのホテルブランドの移入です。

これまでも別荘やリゾートマンションのように、観光リゾート地での居住物件としての不動産事業は広く行われてきました。ただし、一部、東急ハーベストのように、グループとして不動産ーホテル事業を持つ事業者の取り組みを除けば、ノーブランドでの展開が主体で、その立地と建物のデザイン性のみでの勝負でした。当然、分譲/販売後のオペレーションについても、明示された物ではありませんでした。

しかしながら、ホテルのブランド力が高まり、一般消費者に対しても、また、不動産事業社を含む投資家との関係性が強まることで、このブランド力をより直接的に不動産事業に活用しようという動きが出てきます。

これが、ホテルブランドを冠したコンドミニアム系統の事業(コンドミニアム、レジデンス、タイムシェア、サービス・アパートメントなどなど)です。

これによって、利用者側から見ると、ホテルよりも面積が広く、キッチンや洗濯機などの居住性設備も充実している物件を、ホテルブランドの安心感を持って利用出来ることになります。

また、コンドミニアム系統事業の多くは、分譲や会員権販売という形で「固定資産」部分の所有権を消費者(利用者)に移管します。消費者は、投資目的の人も居ますが、自己利用も含めてとなるため、一般的に投資ファンドほどの高利回りは求めません。これは、販売価格を「高め」に設定できるということになります。

先の例でいえば、年間の収益が1,000万円が見込まれる物件の場合、5%の利回りを求めるなら物件価格は2億円ですが、2%でよければ物件価格は5億円となります。つまり、買い手を「投資家」ではなく「利用者」に拡げることで、不動産価格を高める事ができるわけです。これは、販売する側からすれば、美味しい仕組みです。

ネット経済の台頭

住居系不動産をホテル的に活用するという動きは、ホテル・オペレーターの進出によって急激に拡大しましたが、ネットサービスの普及に伴い、新しい波がやってきます。

これが「Airbnb」を鍵とした民泊の動きです。

宿泊にあたってホテル・サービスを求めず「泊まれれば良い」という需要は常にありました。しかしながら、「宿泊」というのは、利用者にとって無防備な状態をさらす事にもなるので、どこでもOKという訳にはいかず、宿泊施設として公的に登録されている、管理されているというのは重要な要件でした。

しかしながら、Airbnbのようなプラットフォームが出てくると、ネットを利用した新しい管理が出来るようになり、これまで宿泊施設として需要を貼り付けることが出来なかったような施設まで、宿泊サービスを提供出来るようになりました。

もともと、住居用施設として整備されたものであるため、ホテルなどに比べて面積も広くても建設費は安価。さらに、所有者の期待する利回りも低いため、販売価格も安価に設定可能…となれば、価格競争力は圧倒的。構造的に流行らないはずがありません。

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「宿泊事業との付き合い方」に1件のコメントがあります

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