所用があり、スペインのバルセロナに立ち寄りました。

スペインは、観光地ブランドの成功事例としてニュージーランドと共に取り上げられることの多い地域。特に、バルセロナは、その鍵となる地域であったため、一度、訪れてみたいと思っていました。

ただ、今回、バルセロナ自体は業務上の目的地ではなく、経由地です。
そのため、データ類や、地域での政策、取り組みについて把握したわけではないですが、一般の観光客と同様の立場で、現地で感じたことを備忘録として。

街自体は、欧州の多くの街(大都市)同様で、ガッツリとした都市計画に基づいて整備された町並み。都市計画をかじった身としては、それだけでもワクワクするところは多いですが、「どこにでもある」と言えば「どこにでもある」。

この街を他と大きく差別化しているのは、ガウディ建築のアレコレ。
誰でも、一度は目にしたことがあるだろう建築群が点在しており、ガウディ特有の不思議な世界が、現出されています。

また、食事は大変、美味しく、物価も(欧州内の比較で)安い。

クリーン&セーフティについても、スリなどは多いとは聞いていますが、裏路地とかでもゴミや維持管理されていない設備などはなく、一定水準。
ただ、いわゆるホームレスや物乞いは散見されるし、夜になるにつれ、ガラの悪い人々は増えていく。また、ほとんどのシャッターは落書きがデフォルト(それも、あまりセンスを感じない)であることは事実。
なので、それなりの緊張感は必要。ですが、まぁ、これはどの都市でも同じでしょう。

近年、オーバーツーリズムにさらされている地域としても有名なバルセロナですが、量的には、さほど「ひどいな」とは感じませんでした。確かにガウディ・スポットには多くの人が集まっているし、遊歩道には人が溢れていますが、身動きが取れなくなるほどではないし、道路計画も歩車分離が進んでいて、スポットに応じて自動車に対する規制もしっかりしている印象でした。
これは、京都の東山とかとは違う。

もともとの都市計画容量の問題や、デザインセンスの違いといってしまえばそれまでですが、インフラをうまく活かしながら対応しているように感じました。

一方で、いわゆる「観光地化」については、残念な気分に。

アイキャッチ画像でも示していますが、土産屋の多さには興ざめしました。別に、土産屋があっても良いのですが、売っているものは「The観光土産」という感じで、日本で言えば昭和の香り。浅草寺の仲見世みたいといえば感じは伝わりますかね。

地域で人気とされる市場(マーケット)にも行ってみましたが、ここも既に観光客向けにカスタマイズされている状態で、観光客としては楽しい空間ですが、地元の人々が日常的に使う市場としての機能は、かなり減退している印象でした。

また、基本的に物価は安いですが、それでもメインストリートにある飲食店は、裏路地のそれに対して倍くらい高い。一等地にある店舗が、その雰囲気も使ってしっかり「儲ける」ことは、ホスピタリティ産業として当然のことではありますが、地元の人からすれば、観光客にくつろぎの空間を奪われたように感じるところはあるでしょう。

さらに言えば、観光客対応している市場も、メインストリートにあるカフェも、バルセロナらしさを感じるのか、ここでの経験は、差別化されたものになるのかと言えば微妙。前述のように、快適ではあるけど、このレベル、感覚なら、他都市でも普通にあるなと感じてしまう。

ガウディという唯一無二の存在が残したストックをテコに、競争力を持ったデスティネーションとなったわけですが、そういう「深さ」や「広がり」が、街中からは感じられない。端的に言えば、100年前のガウディのストックに乗っているだけで、「今」のバルセロナの脈動感が希薄。

そのため、観光客としても街との関わり方が表層的なものになってしまう。

そうなると、観光客との「交流」が、経済面のみに偏ってしまい、地域の文化やライフスタイルのアップデートには繋がりにくい。

実際、個人的には、同じく歴史文化を核に活性化を図っているマルセイユに感じた新しいダイナミズムは、バルセロナでは、感じられませんでした。

こうしたフラストレーション、ジレンマが、バルセロナの人たちに焦燥感を感じさせているのではないか…などと感じました。

Share