11月30日、観光庁から、宿泊旅行統計調査の速報値が出ました。

対前年対比でみて、8月以降の回復は顕著であり、GoTo効果が出ていることは、ほぼほぼ確実でしょう。

ただ、そのGoToの実績はザクッとした形でしか発表されておらず、また、月別ではなく、15日締めであるため、なんだかよくわからないというのも実態としてあります。

特に、宿泊需要のどの程度がGoToによるものなのか、GoTo以外のものはどの程度のボリュームがあるのかについては、判然としません。GoToは「いつかは終わる」ものであり、このテコ入れが、どの程度のインパクトであるかを把握しておかないと、ポスト・GoToの対策を考えることもできません。

そこで、以下の設定で、推計をしてみました。
手法自体は、私がよくやるフェルミ推定となります。

  1. GoToの利用実績、9月15日まで1689万人泊、10月15日まで3138万人泊を、それぞれ9月末、10月末実績相当と読み替える。かわりに、7月の効果は無かったとする。
  2. 2019年各月の実績に対する2020年8−10月の日本人人泊数対前年比を算出する(48%,64%,83%)。
  3. この数値はGoTo効果を含むものであるため、基礎需要X、GoTo効果Ymとして(mは月)、GoToの利用実績に相当するXを算出した。
    • X+Ym=各月の対前年比。
    • Σ(各月の人泊数*Ym)=GoTo利用実績
    • 基礎需要Xは、各月とも変動なしとした

その結果、Xを38%とすると、9月末までのGoTo効果が1595万人泊、10月末までのGoTo効果が3379万人泊となりました。これは、観光庁発表の15日締めの数値に近いものとなります。このことから、対前年40%弱程度が、コロナ禍やGoToに左右されない基礎需要と推計できます。GoTo前の6月の対前年比は39%ですから、そう外していない数値のように見えます。

そこで、対前年38%分をGoToによらない基礎需要、残りをGoTo喚起需要として、人泊数の構成をグラフ化すると以下のようになります。

もともと、宿泊需要は8月をピークに、9月、10月と低下する傾向にありましたから、通常年なら低下する時期に、GoToによる需要喚起が入り、踏ん張りが効いたということになります。特に10月は、9月よりも人泊数が多く、かつ、その需要の過半がGoTo効果であることになります。8月は「お先真っ暗」状態だったものが、例年、低下する9月は8月並み、さらに、10月には、8,9月よりも多い宿泊需要となったわけですから、宿泊業界にとって、とても大きなインパクトとなります。

一方で、GoTo効果が大きいほど、それが無くなったり、停止された時の影響は甚大だということもわかります。

また、基礎需要は40%弱ですから、GoTo効果による需要を取り込めない施設・地域は厳しい状況となります。現時点の実績で言えば、概ね宿泊費は1.2万円くらいが平均となりますから、これまで「安さ」で勝負していたところは厳しくなるでしょう。

さらに、おそらく、GoToは一部の人が集中的に使っている構造になっていると考えられます。
私は、世の中の事象はパレート分布すると考えているからです。

そこで、仮に3:7の分布(利用者の3割で、7割の需要を創出している)とした場合、実人数がどれくらい居るのかということを試算してみたところ、1200万人ほどと推計されました。

パレート分布しているとしても、1200万人が利用しているとなれば、かなりのインパクトとなります。第2波の時と異なり、第3波がきても、GoToトラベルについて世論が反対一色にならないのは、利用者を着実に増やしてきたこともあると考えることもできます。

一方で、所詮、1200万人と見ることもできます。観光領域の就労者(直接で240万人、間接入れて440万人)や、その家族を入れても2000万人行くかいかないか。これは人口の15%程度でしかありません。残る8割強の人からすれば「自分には関係ない」話と捉えて不思議ではないです。

GoToの今後ですが。前述のように、「秋の行楽シーズン」といっても、絶対的な宿泊需要は夏から秋冬に向けて下がっていきます。これを支えていたのがGoToですが、その運用が厳しくなり、さらに、観光需要そのものが低下していくシーズンとなっていくことを考えれば、仮にGWまで延長されたとしても、春までは、この9−11月ほどのインパクトは得られないかもしれません。

ただ、この推計のように、既に過半の需要をGoToに依存しているとすれば、GoToは継続的に実施しつつ、出口論についての議論を進めていくことが必要でしょう。

巷では、補助率をもう少し下げることなどの案がでていますが、私は、あまり意味のある対策とは思いません。

インバウンドが戻ってくるには年単位の時間軸が必要であることを考えれば、GoToをどう終えるのかという議論ではなく、これから中長期的に、持続的に国内観光需要をどのように創造していくのかという議論を行っていくことが必要と考えるからです。

恒久的な旅行減税+旅行クーポンの導入が、ポスト・コロナの観光政策として重要となるのではないでしょうか?

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