日本のポテンシャル

では、日本のスキー場には、それだけのポテンシャルがあるのでしょうか。

日本のニセコ、白馬に対する検索ボリュームと、オーストリアの代表的なスキー場であるイシュグル(ISCHGL)、サン・アントン(St.Anton)に対する検索ボリュームを比較したものが以下になります。

かつては大きな差がありましたが、ニセコ、白馬は年々、検索ボリュームを増大させ、ニセコはサンアントンの半分、イシュグルの8割弱にまで差が縮まり、白馬も後をおっています。

それだけ国際的な注目が高まってきているといえます。
この国際化は、3段ロケットで整理が出来ます。

まず、第1段ロケットは、アメリカの同時多発テロにおいて、オーストラリアのスキーヤーが北米を避け、日本のニセコに「たまたま」訪問したため…とされます。先に挙げた資料でも同様の事を指摘しているので、その通りと考えて良いでしょうが、それ以前から、ニセコに居住していたオーストラリア人は少なくなく、下地は出来ていました。つまり、発射準備が出来ているところに、9・11に伴う環境変化が着火剤となったと考える方が自然です。

ここで来訪した人々が驚いたのは、毎日のような降雪と、それに伴うパウダーだったとされます。実際、初期にニセコに移ってきたオーストラリア人の方々は、口を揃えて、パウダーの楽しさ、魅力を話します。

当たり前の事ですが、パウダー自体は、以前からニセコにはあった訳ですが、パウダーで滑るという文化・風習は、さほど普及していませんでした。それが、オーストラリア人によって「発見」されることで、一気に、メイン・コンテンツになっていったという経緯は、なかなか日本的です。

第2段ロケットは、温暖化です。先に示した、スキーの国際マーケットの推移で、2006/07シーズンは大きく減少していますが、この背景には記録的な暖冬があります。この時、市場の43%を占めるアルプスは大きな打撃を受けました。その後も、程度の差はあれど、暖冬の影響は各所でおきており、人工降雪に切り替えないと影響が継続出来ないスキー場や、営業日数が大幅に少なくなるスキー場が増大していくと予想されています。

欧米のスキー場は、積雪量はさほどでもないが「寒い」ことによって、その積雪を維持するのに対し、日本のスキー場は、さほど寒くならない代わりに、降雪機会が多いという差があります。雪が雨に変わるようなレベルにまで気温が上がってしまえば、どうしようもありませんが、降雪機会が多いということは、リカバリー機会も多いと言えます。

特に、初期に開発されたスキー場は豪雪地帯に立地している事が多く、暖冬に対する耐性が海外よりは高い傾向にあります。「自然雪で楽しめる」という、今となっては贅沢な環境が日本にはあるわけです。

パウダースキーやエキストリームスキーに対する関心は、以前より低下していることを考えれば、単純にパウダーやBCなどが人々を惹き付けているのではなく、日本のスキー場の絶対的な降雪量が大きな資産となっていると言えるでしょう。

また、これに関連して、低い標高のスキー場が多いというのも特徴です。欧米では、2000mを超えるようなスキー場が少なくありませんが、日本では数百mレベルのスキー場がゴロゴロあります。低標高であれば、高山病のリスクも低くなり、寒過ぎもしないため、より間口が広くなります。

これらは、気象条件のなせる技であり、日本のスキー場だけが、世界で唯一そなえている資質となっています。

第3段ロケットは、アジア市場の勃興です。
現在、東アジアの経済発展に伴い、東アジアでの需要が拡大しています。
前述したように欧米のスキー需要はどちらかと言えば減少傾向にある中、需要拡大が期待される唯一の地域と言って良い東アジアに日本は位置しているというのは、非常に恵まれていると言えるでしょう。

特に、中国は4年後の冬季五輪(北京)に向け、猛烈な勢いでスキー人口が拡大しています。

もちろん、需要増大に対応する為、中国国内でも多量のスキー場が整備されてきていますが、中国の気候は大陸型で、気温は下がるが天然降雪は限定的です。つまり、日本の第1弾、第2弾ロケットが無く、増大する資本量と技術力での対応となっています。そのため、日本への需要流入は十分に期待されます。

中国を、ヨーロッパにおけるイギリスやドイツに置き換えると、アルプスの立場になり得るのが日本です。一定の国内市場を持ちながら、インバウンド市場も取り込んでいる点で、フランスが目指すべき一つの姿となるかもしれません。

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「国内スキーリゾートの展望」に1件のコメントがあります

  1. 野球が目的では訪日外国人は伸ばすことはできないが、スキーではまだまだ伸ばせることが出来ると思います。パウダースノーは日本の宝であります。世界的な夏のリゾートはハワイワイキキですが冬はニセコと言っても過言ではなくなりました。やはり一般スキーヤーは氷河で滑るよりパウダーで滑ったほうが絶対おもしろい!なので世界のスキーヤーの目は極東に向いています。ヨーロッパのスキー場は外国人が多い、当たり前です。陸で繋がっているから皆んな隣国から来るわけで、日本も隣国から呼んで来るようにすれば、さらに伸ばせる。スキー場も淘汰されるかもしれませんがスキー産業捨てたもんじゃないはずです。日本のスキー界のリーディングカンパニーとして頑張ってください。

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