Discussion of Destination Branding.

国内スキーリゾートの展望

知っている人は知っていますが(<−当たり前)、私は長らくスキー市場の調査を行っています。

もともと、私の卒業論文(1990年度)は、スキー場の需要予測で、修士論文(1992年度)は、北海道の冬期観光がテーマでしたので、そこから数えれば30年近くになります。ある意味、観光を研究対象としたきっかけが「スキー」であったわけです。

そのスキー市場ですが、大きなパラダイム変化が起きてきていると感じたので、今回は、その辺を。

国内マーケットの動向

スキー市場を考える際、もっとも重要になるのはマーケット(市場)の動向です。国内マーケットについては、「スキー人口推移」で示したように、半端無く減少しています。

実は、この減少は、宿泊観光旅行市場の推移と似た動きとなっています。

つまり、この減少傾向の背景には「経済要因」があります。
旅行実施者の実像」で示したように、一般的な宿泊観光旅行市場には、世帯年収600万円の壁がありますが、スキーは、これに100万円程度プラス、つまり700万円オーバー、出来れば800万円となります。つまり、より強く経済要因が効くことになるわけです。

もちろん、より収入の低い人達で、スキーを楽しんでいる人達は沢山居られますが、統計的にみれば、宿泊観光旅行もして、さらに、スキーもする…という人達が圧倒的であり、双方の余暇支出を支えるには、一定の年収が背景にあることが前提となります。

リーマンショック以降、横這い傾向となり底打ち感のあった国内市場が、2016年度に底抜けしてしまったのは、2014年の消費税増税と、それによって引き起こされた実質賃金の低下によるものと考えればすっきりします。

国内経済が一時期の勢いを失い、かつ、国際的にも社会経済環境に多くのリスクが発生し、かつ、政治も不安定な状況に陥りつつある現在、国内市場の隆盛は残念ながら望めません。

国際マーケットの動向

そうした状況の中で、注目されているのがインバウンドです。

ただ、インバウンドといえども、無限に需要が生まれるはずもなく。まずは、その動向をちゃんと捉える事が必要です。

国際的なマーケットについての情報は、ある調査会社がまとめていますが、メチャクチャ高額なため、私は参照できていません。ただ、便利な世の中になったもので、スキーの国際マーケットについて、整理した資料はオンライン上に散発的に存在しています。
ここでは、以下の資料より概略を見てみましょう。

まず、世界的なマーケット規模の推移をデスティネーション(着地)ベースで見てみます(P15)。
これを見ると、概ね3億人回〜3.5億人回の規模で推移していますが、過去10年でみるとジリジリと減少傾向にあることが解ります。

最大のデスティネーションはアルプスでシェアは43%。次が北米で21%。アジア太平洋は15%と、北米に次ぐ規模です。

ただ、発地ベースでみると、アルプスは15%に過ぎず、西ヨーロッパが25%、北米が24%、アジア太平洋が21%となります。北米は着地と発地のシェアがほぼ同様ですが、アルプスは着地シェアが高く、西ヨーロッパと東ヨーロッパ、アジア太平洋は発地シェアの方が高くなっています。

このことは、ヨーロッパやアジア太平洋地域に居住するスキーヤーは、他の地域に「流出」していることを示しています。

これは、各地域の需要(スキーヤー数)と、供給(スキー場)との関係性が原因です。

国別のスキーヤー数は、アメリカが圧倒的に多く、以下、ドイツ、日本(!)、中国、フランス、イギリスと続きます。

他方、各国のリフト数では、フランス、オーストリア、アメリカが並び、以下、日本、イタリアとなります。

仮にアメリカの需給バランスが取れているとすれば、概ねスキーヤー800人に付き1基のリフトが必要となります。これに対し中国は1800、イギリスに至っては、リフト自体がほぼゼロという状態です(いずれもグラフからの読み取りによる概算)。

他方、日本は、450。明らかに供給過剰状態にあります。

また、ドイツは、リフト基数は多いものの、4基以下のスキー場がほとんどで、需要に対応出来ていないとされます。

なお、4基以上のスキー場数と、スキーヤー数との関係を見ると、アメリカは7,100人あたり1つのスキー場。ドイツは15,000人で1つ、中国は12,000人で1つ。日本は、3,800人で1つとなります。

イギリス、ドイツ、そして中国といった国に、スキーを楽しむ文化がありながら、自地域内にスキー場が無いため、海外に需要が流出していることが解ります。

他方、日本は、長期的な需要の減少に伴って供給過剰状態に陥っているのが実状です。であれば、インバウンドを獲得すれば、供給過剰状態を緩和できると思われますが、ニセコや白馬の例はあるものの、全体としてみれば、他国に比べても、インバウンド比率は非常に低い状態にあります。

仮に、現在の国内市場規模を維持しながら、イタリアやフランスレベルまで、インバウンド比率を高めることが出来たら、国内スキー場の市場規模は1.4〜1.5倍に拡大する事になります。

国内市場の劇的な回復は望めない状況において、この比率、すなわち、インバウンド客をどこまで増やしていけるのかということが、日本のスキー場にとって必要不可欠な経営課題でしょう。

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One thought on “国内スキーリゾートの展望

  1. 岩代雅樹

    野球が目的では訪日外国人は伸ばすことはできないが、スキーではまだまだ伸ばせることが出来ると思います。パウダースノーは日本の宝であります。世界的な夏のリゾートはハワイワイキキですが冬はニセコと言っても過言ではなくなりました。やはり一般スキーヤーは氷河で滑るよりパウダーで滑ったほうが絶対おもしろい!なので世界のスキーヤーの目は極東に向いています。ヨーロッパのスキー場は外国人が多い、当たり前です。陸で繋がっているから皆んな隣国から来るわけで、日本も隣国から呼んで来るようにすれば、さらに伸ばせる。スキー場も淘汰されるかもしれませんがスキー産業捨てたもんじゃないはずです。日本のスキー界のリーディングカンパニーとして頑張ってください。